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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「そんなことっ、思うわけない‼︎ あんたみたいな人に静先輩の何がわかるっていうんだっ」
目の前の男、帝がわけわかんないこと言ってるのを聞いて頭にキた僕は、自分の今の状況がどうだったかなんてすっかり飛んでいってた。
僕のせいで静先輩に迷惑かけるのは、すごく申し訳なくて何にも言えなくなるけど。
単純に静先輩が悪く言われるのは、理由がわかっててもムカつく。
あの人を貶すことは絶対に許さない。
「2度と口にするなっつただろ‼︎」
「ぅぐぁ・・・っ」
僕が言い返したのがよっぽどムカついたのか、怒鳴りながら顔面を殴ってきた。
思いっきり後ろの壁に頭をぶつけて脳がぐらぐら揺れている。
「ほんとてめぇ、自分の立場分かってんのかよ。マジでアッタマキタ。お前ら容赦する必要ねぇからな」
一発殴った帝の気配が離れていく代わりに、わらわらと複数の気配が近づいてきて、その中の一人が僕に触れた途端身体が一気に恐怖を思い出して固まった。
静先輩じゃない感覚に嫌悪感が溢れ出してくる。
静先輩に敵意のある奴ら。
静先輩を悪く言う奴ら。
こんな奴らなんかに好きにさせてたまるか、と必死に気を張っても体の震えは抑えられなかった。
「やだっ、触らないで・・・っ」
なんで今までこんなこと耐えられていたんだろう。
それこそΩの扱いとしては正しいじゃないか。
何も初めてじゃないし、状況としては僕の理想じゃないか。
相手がこんな奴らだって言うのもあるけど、今じゃ少しでも触れられることが気持ち悪くて仕方ないのに、これ以上のことだってしてきたんだと思うと、自分がいかに汚いかを強く感じさせられた。
「てめぇが呑気に寝てる間にてめぇの携帯でかけてやったらよ、あいつものすごい勢いで出やがって、焦ってやんの。あの反応は滑稽だったなぁ。・・・・・・犯してやる前に、最後にあいつに声聞かせてやるよ。さあ、人質の役目を果たせ」
男たちの手によってシャツを捲り上げられズボンを下ろされたところで、帝が近寄ってきて僕の目線と同じ高さにしゃがんで目の前にコール音を鳴らす携帯を突き出してきたのがわかった。
『帝っ、弥桜はっ。手ぇ出してないだろうな』
ワンコールで出た静先輩の声に、帝の言った通り切羽詰まった音が滲み出ていた。
気をつけろって言われてたのに、脅迫状の件があったりしてすっかり忘れてしまっていた。
僕が捕まったばかりに静先輩に迷惑かけてる。
だからこれ以上余計な心配かけたくなくて、声を出さずに顔を背けた。
「ちっ」
また抵抗したから帝が舌打ちをすると、手を止めていた男たちが一斉に身体中ベタベタ触り出した。
「んぁっ、やっ、やめて・・・っ」
反射的に口から出た声に急いで黙ろうとするが、出てしまった時にはもう遅かった。
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