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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「・・・・・・んふ」
体の不自由さと嗅ぎなれない埃っぽい臭いにゆっくり意識が浮上してくる。
目を開けても視界は真っ暗で何も見えない。
どうやら布で目隠しをされて両腕は後ろで縄か何かに拘束された上で、硬い板の上に転がされているっぽいことだけはわかった。
投げ飛ばされでもしたのか、動くと背中に鈍痛が走る。
何が何だか頭が追いつかない。
風邪も治って久しぶりに元気に大学行けて、いつも通り静先輩たちとお昼にしようって思って。
今日は三人とも2限に講義があるから、終わったらそのままカフェに集合するって一人で向かってたんだ。
でもなんか急に知らない人の手が、体に触れたような・・・・・・。
「ようやく目が覚めたか。ずいぶん薬の効きがいいみたいだな」
「ひぃっ、えっ、な、なに・・・静先輩、どこ・・・・・・っ」
わけのわからない中いきなり知らない人の声が聞こえて、びくりと過剰に体を強張らせる。
最近特に人の気配に敏感で、少し意識するとこの場にも少なくない人数がいることは見えなくてもわかった。
不特定多数の人の視線。
何も見えないからこそ、感じるそれが余計不気味に感じられる。
「ぃや・・・・・・、静先輩どこ・・・・・・」
身体の震えが止まらない。
日常生活でさえ一人で外出することに勇気がいる僕に、静先輩のいないこんな状況が耐えられるわけがなかった。
「しずかせんぱい・・・、しずかせんぱい・・・・・・」
「・・・静静って、うるせぇんだよっ‼︎」
「ひゃっ」
僕の態度にイラついたのか、目の前にいた人が怒鳴りながら何かを蹴飛ばして僕の真後ろの壁にぶつかった音がした。
「その名前聞くだけですげぇイライラすんだよ、2度と口にすんじゃねえ。てめぇは人質なんだから、大人しくそいつらのおもちゃにでもなっとけ」
「お前、Ωなんだろ。男のΩは噂だけはよく聞くからな、みんな期待してるぜ」
「俺たちも楽しめて、あいつの歪んだ顔も見れるなんて一石二鳥だな」
近づいてくる周りの人の気配から必死に逃げようと、なぜか拘束されていない足を目一杯バタつかせて後ずさるが、すぐに壁に行きあたって逃げ場がなくなった。
なんでこんなことに・・・・・・。
こいつら静先輩に恨みがあるっぽいことを言っていた。
確かに静先輩は恨みを買うようなことをしたことがあるって言ってたけど、みんな静先輩たちを避けてるからそうそう喧嘩を売ってくる奴らはいないって。
あ、でも、あいつには気をつけてって・・・・・・。
「みかど・・・・・・」
「・・・へぇ、俺のことあいつから聞いてんだ。じゃあてめぇがこんな目にあってるのも全部あいつのせいだってわかるだろ。恨むならあいつを恨めよ」
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