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第5章 落穽下石
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しおりを挟む風邪自体は絶対に良くなっていた。
でもその間静先輩から意識的に遠ざかろうとしていたし、でも早く治して触れたいという思いもあったから無意識にかなり気を張ってたんだと思う。
その日結局頭痛がぶり返してきて、夜中には38度まで熱を出してしまった。
まだ終電も残ってる時間だったけど、熱も高いし流石に動けそうにない僕を見て今日こそは泊まるからな、とさっきから静先輩は僕の看病をしてくれていた。
前回は半信半疑だったけど今回の熱はタイミングからしても、ウイルス性の風邪じゃないことはわかりきっていたから、うつることはあんまり心配しなくてよさそうだった。
2回も静先輩が来た日に限って熱を出していれば、安心や興奮のせいだということはわかるし、発情期の後から寒気みたいなだるさがあったり、この一週間ずっと頭痛とメンタルに襲われて戦っていたりしたから、体力がかなり落ちていたんだろう。
支えていた気力が静先輩と一緒にいることで緩んだんだ。
「少しは落ち着いたか?」
ぐわんぐわんする頭を抱えたまま夕飯を食べた後、結局発熱して倒れ込んだ僕に着替えやら熱さまシートやらを色々やってくれて、一息ついたところだった。
今日に関しては抵抗する気力もなくて、静先輩がうちにいることもそのままあれこれやっていることも、やだなと思いつつもそのままにしていた。
完全にメンタルがぐずぐずに弱っていて静先輩にはすぐにでも帰って欲しかったけど、そんなこと言える状態じゃなかった。
なんか無駄に涙まで出てきてせめてもの抵抗で、背中を向けて布団に包まることしか出来なかった。
「熱が出ると涙が出てくる人もいるみたいだけど、弥桜の場合はそれだけじゃないんだろうな」
静先輩が無理矢理ついてきていたり、他人が怖くて怖くてこの手が離せなかったり。
僕がぐずぐずな時に静先輩がうちにいることは今までにもあったけど、そのどれとも違う状況。
こんなめんどくさい自分嫌だな、とますます自己嫌悪に陥りながら、この日は僕の意識がなくなるまで撫でてくれていた静先輩の手を感じながら寝た。
2回目の発熱で38度も出たもんだから、夜も寝苦しくてまともに寝れなくて、朝になっても熱が下がることはなく次の日は大学を休んだ。
静先輩がうちにいるから会いに行くという名目もないし、そもそも朝動けるようにならないから静先輩も大学に行かずにずっとうちにいた。
一応静先輩は大学に行ってくれと言ったのだが、元々講義の入っていない曜日だと言われ、そういえば確かに静先輩には週何日か講義のない日があったなと、思い出したりもした。
まるまる2日寝込んで熱自体は下がったものの、相変わらず完治するには時間が掛かるようで、体のだるさだけはずっと引きずったまま翌週も半分が過ぎたところで、また夜微熱を出した。
流石に3回目ともなると37度程度で済んで、それから3日やっと完治した。
次の日がちょうど日曜日だったこともあり、しっかり休みを取れたのもよかった。
気づけばもう7月に突入していて梅雨も明けたことで、あの重だるかった頭痛も完全に治っていた。
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