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第5章 落穽下石
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しおりを挟む翌日、熱自体はすっかり引いたから静先輩に連絡して大学に行くと伝えた。
静先輩はまだ休んだ方がいいと少し渋っていたけど、午前中と帰ってきてからはちゃんと家で休むことを約束して迎えにきてもらうことになった。
まあ僕が今一人で外に出たり家でも何か忙しくしたりすることはないから、その辺は全然疑われていないんだろうけど。
完全に良くなったわけじゃなくて多少だるさみたいなのは残ってるから、僕自身何かをする気にはなれないだろう。
それでも先週は大学に行ってたし、やっぱり静先輩には会いたかったから行くことにした。
案の定静先輩はいつも以上に過保護にあれこれ僕の世話を焼いてくれた。
脅迫状の件が解決したから今日からはまた元の生活に戻るのかなと思っていただけに、やっぱりかという気持ちが強かった。
先週は他人からの脅威があったから仕方ないにしても、出来れば外であれこれ僕の世話を焼くのはやめて欲しいというのが実のところだった。
元々静先輩たちも僕も周りからは避けられているけど、それと同時に他人より人の目を引く。
僕自身が一人でいられないから最低限どうしようもないところはあるけど、ただでさえ好奇の目で見られているのにさらに目立ちたくはなかった。
『他人の目』は怯えるほど気になることは無くなったけど、人の視線は気になる。
元来注目されるのは苦手なんだ。
僕が家には来ないでくれ、と言っているのも大学での過保護を助長させている原因の一つだろう。
初日はまだ完全に治ったわけじゃないし家でゆっくり休むから、と言って送ってもらうだけに留めてもらった。
だけど実際家に帰るとどっと疲れが押し寄せてきたのか、熱が出ることはなかったけど頭痛が悪化して半日うーうー唸ってた。
でも流石に明日は休もうかと思っていたら、翌朝目が覚めるとまた頭痛は引いてだるいだけになっていた。
帰ればひどい頭痛に悩まされるなら一度ちゃんと休んで治した方がいいんじゃないかと毎晩思うのだが、その度翌日動けるようになると静先輩に会いたくなる。
風邪をうつしたくないのはもちろんだが、家に帰って体調が悪くなると途端にメンタルもぐずぐずに揺れてくる。
そんな時に家に静先輩を呼ぶなんてことが出来るわけがなくて、結局大学に行くしかなくなるのだ。
幸い、徐々にではあるが良くなってきてるから、なんとかなるだろうという気持ちもあった。
ただやはりもう一週間近くこんなことを繰り返しているから、静先輩が痺れを切らしそうだった。
「なあ弥桜、明日一日ちゃんと休んで治した方がいい。弥桜には元気でいてほしい」
ここ最近毎日のように外なのに抱きしめようとしてくるから、風邪がうつると言ってその度に引き剥がしてたんだけど、今日は大人しくされるがままになる。
「・・・・・・弥桜?」
今日に限って抵抗されないことに違和感を感じた静先輩が顔を覗き込んでくる。
「もうほとんど良くなったんです。だから今日はうちに来てもいいです」
きっともう静先輩がうちにいても大丈夫なくらいメンタルも回復しただろう。
そんな僕の中身全部をわかっているかのように、よかった、と静先輩が笑顔を向けてくれた。
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