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第4章 同甘共苦
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しおりを挟むもうすぐ着くと言っていた結永先輩は、本当にすぐに着いた。
そして部屋に漂う重い空気に、だから言ったほうがいいって言ったのに、と言うような顔をこちらに向けてきた。
それにうっ、と怯みながらも、同時に結永先輩ならなんとかしてくれるという安心感もあった。
「あー、一応確認するけど。発情期中に静がここにいるってことはヤっちゃったんでしょ? でも番避け付けてるってことは、そこは大丈夫だったんだ」
結永先輩の言葉に、静かに頷く。
「弥桜くんのことだから、こんなことしたらダメだとかなんとか、また静から逃げ出そうとしたんじゃない?」
・・・・・・。
今はやっぱりダメだと思っても、罪悪感はあるから居た堪れなくて視線を背けて、それでも結永先輩の言ってることはあってるから肯定する。
「それで、興奮して思ってもないことから、あれこれ勢いで口走っちゃった?」
なんでそんなにわかるんだろうというぐらい、まるで見ていたかのように言い当てる結永先輩に、場違いな関心をしつつも、これにも頷く。
それからたっぷり一呼吸置いてから、あの手紙を出すように言われた。
出来れば見せたくはないけれど、知られてしまった以上もう言い逃れは出来そうもない。
「そういえば、結永。弥桜が発情期だって知ってて来たのか」
あの電話の後から結永先輩が着いた後も今まで一度も口を開かなかった静先輩が、ようやく声を出したかと思えば随分今更なことを言い出した。
「だいぶ落ち着いたって聞いてたし、部屋も換気してもらってる。それにちゃんと俺もα用の抑制剤飲んできたから」
あの後電話で部屋の窓を開けて結永先輩が来るまで換気しておくように言われて、ちゃんと空気を入れ替えておいた。
それにα用の抑制剤。
Ω用のものより更に需要が少なくあまり出回っていないものだが、Ωだけでなくα自身もΩの発情に引きずられることがないようにするものだ。
実家が病院である結永先輩なら持っていてもおかしくはない。
「絶対とは言えないけど、ほとんど問題はないと思うよ。それでも気になるなら静がちゃんと守りな。・・・・・・それに君達二人じゃまともに話なんて出来ないでしょ」
「弥桜、こっちおいで」
結永先輩の言うことは確かで、今またここで二人きりにされてもまともな話し合いなんて出来るとは思えない。
静先輩もそれがわかっているから結永先輩を帰すことも出来なくて、渋々僕を引き寄せて抱き締めることで落ち着こうとしているのだろう。
それがわかるからピリピリしていても大人しく静先輩の元へ手紙を持ったまま行く。
「それじゃ本題だけど。そもそも静が俺に弥桜くんのこと任せたんだから、俺が知っててもおかしくはないでしょ」
結永先輩の言葉にやっぱり僕の行動は全部お見通しで、その上で静先輩が合わないでいてくれたのかと知る。
それに結永先輩も僕との約束を律儀に守って言わないでいてくれたことにも驚く。
疑っていたわけじゃないけれど、結永先輩のことだから僕のことは静先輩に筒抜けなのかと思っていた。
「・・・・・・じゃあその手紙って言うのはなんだ」
結永先輩の言葉に反論の余地もなくて、話を進めることにしたようだ。
「3日前大学から帰ってきた時にポストに入ってたものだ。手紙というより、いわゆる脅迫状ってやつだな」
結永先輩の言葉に、静先輩は僕が持っていた封筒を受け取ると中身を確認した。
静先輩は少し眉を顰めただけで、そこまで大袈裟な反応はなく何も口にしなかった。
それを見た結永先輩も気づいているだろうが、僕が出してきたのは脅迫状だけだった。
手紙ですら見せるのは嫌なのに、あの写真を見せることなど到底出来なかった。
あれだけは何があっても見せることは出来ない。
墓場まで持っていくと決めている。
「送り主の名前はないけど、読めば誰が送ってきたかは一目瞭然だよね」
「なんで俺に言わなかった」
「心配かけたくなくて。それにこんなものまで送り付けられるようなやつなんだよ。迷惑かけたくなかったし、知られたくなかった」
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