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第4章 同甘共苦

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「本当に静には何も話さないの?」
どうしても静先輩に知られることだけは嫌で必死に頷く。

「はぁ・・・・・・、わかった。じゃあ静には言わないでおくけど、その代わり絶対に一人でどうにかしようとか思っちゃダメだよ。何があるかわかんないから家から出るのもダメ。静には来ないように言っておくし、俺以外の人の時はドア開けちゃダメだからね」
「はい」
「じゃ俺帰るからね。明日も朝から大学あるでしょ、朝迎えに行くから」
「ありがとう、ございます」
なんと言われようとも譲る気のない僕に呆れたのか諦めたのか、なんとか静先輩には言わないでいてくれると言ってくれた。
その代わりにいろんなことをばーっと言うとその勢いのまま帰ってしまった。

あっという間に静かになった部屋で、チェストに置きっぱなしになっている封筒に手を伸ばす。
開けたくなんてないんだけど、もう一度しっかり見ておかなければいけないような気がしてじっとしていられなかった。

指先が震える。

今どきこんなテンプレートのような脅迫状を送る人がいるなんて、と他人事のような気分になってしまうくらいは動揺している。
送り主に見当がつくから、なんで僕なんかにこんなものが、とかは思ったりしないけど。

この写真・・・・・・。
撮る時に変なことには使わないって言ってたけど、特に誰にも渡さないとかそういう約束はしてないし僕にそんな権利はない。
でも今まで変な噂とかなかったから、本当に出回っているとかそんなことはなかったんだなと思う。
今回のことで悪戯に広めたりすることはないけど特に渡せない理由もないから、きっとこうやって頼まれれば誰にでも渡してしまうのだと言うことがわかった。
この件には全く関係ないあの人でさえこんな簡単に手に入るような写真、いつ静先輩の手に渡るかわからない。

『やっぱり所詮ΩはΩか。こんなのと一緒にはいられない。汚ねぇ』

怖い。
静先輩はこんなこと言わないって、思うけど・・・・・・。
今回こそ、本当に嫌われちゃうかもしれない。

あの時は正しい扱いだって信じてたのに。
今じゃこんなに汚いって、醜いって思ってる。
自分でこんな汚い身体にしてしまった。
言い訳も何も、ない。
どうしよう、もし静先輩が許してくれてもきっと自分が認められない。

この身体を静先輩の手になんか触れさせられない。

十分現実を理解したから、いつまでもこんな写真見ていられなくて封筒に戻す。
家のゴミ箱にも、ましてや外になんか捨てられなくて、どうすることも出来なくてチェストの一番下の鍵の掛かる引き出しに仕舞った。



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