75 / 152
第4章 同甘共苦
71
しおりを挟む静先輩が理学部物理学科なのはこの前聞いた時に少し教えてくれた。
生まれも育ちもここからそう遠くないところだとか、誕生日が2月4日だとか、A型だとか、一人っ子だとか。
静先輩のことはなんでも嬉しいけど、あの時はそんな表面的なことぐらいしか聞けなかった。
大学はなんでこの学科に入ったのかとか少しでも突っ込んだ話はひとつも聞けなかった。
「うちの学科いくつか専攻が分かれてるんだけど、その中でも俺は第2性専攻なんだ」
特に深く考えずにこの話題を選んだけど、第2性と聞いてどきりとした。
僕が今まで対峙してきた一番大きな問題。
「つい最近まで基本的には俺もそこらの連中とそんなに考え方とか違うわけじゃなかったから、αとかΩとかそれなりの目で見てた。ただ他と違ったのは、それが当たり前だとは思ってなかったことだな。こいつと幼馴染だったのがでかいんだと思う。実家が病院だから普段から、βもΩも見る機会が多かった。あとはうちのお袋がαにしてはかなりゆるい性格だったてのもあるだろうけどな」
結永先輩の実家が病院っていうのも初めて聞いたけど、静先輩も第2性について少し違うことを感じていたのか。
僕に対してあれだけズレたことが言えるんだから、そりゃ少しは違う考え方をしていたって不思議じゃないけど。
「ただ俺の場合は純粋な興味だったな、最初は。弥桜みたいに強く何かを思ってたわけじゃない。単純に世間と病院との違いを見て第2性って何が違うんだって気になっただけだった」
気になっただけって静先輩は言うけど、むしろそこが気になる感性を持っていること自体が既に他の人とは違ったのだろうと思う。
そういう意味では元から静先輩も世間とはかなりズレていたのだろう。
でも、と静先輩は話を続ける。
「弥桜と出会ってからは考え方がかなり変わったからな。Ωの生態についてちゃんと知らなきゃいけないって思ったし、弥桜がかなりそこのところ気にしてるってのもあるから、確実に前よりよっぽど深く考えるようにはなったよな」
「僕のせい?」
「せいって言うのは違うと思うけど、まぁ弥桜と出会って変わったことは大きいよ」
「静はほんとに変わったよねぇ。俺なんかよりよっぽど医者の息子感あるし。最近は真面目に考えるようになって一層そんな雰囲気出てるよね、親父がたまに俺よりお前の方が息子に欲しかったとか言ってるし」
静先輩の話に結永先輩がそれなぁって頷いてるけど、俺なんかよりってことは結永先輩も何かあるのだろうか。
「結永先輩はお医者さんにならないんですか?」
「俺も最近事情が変わって実家のことちゃんとやろうかなって思い直したんだけど、それまでは家のことは兄貴に任せて全然違うことしようと思ってたんだよね。だから俺、経営学科入ったんだし。まぁみんな医者の知識しかないから結果無駄にはならないだろうけど。元々俺、性別とか興味なかったし男女でさえ見た目の違いくらいにしか思ってないからね。他のこともだけど医者に興味なかったから」
二人の話を聞いてると本当に静先輩の方がお医者さんっぽく聞こえてくる。
「俺たち生まれた場所も時間も育った環境も性別も全部同じなのにこうも違ってくるとはな。むしろここまで同じだからこそ余計静の方がうちの遺伝子持ってそう」
静先輩と結永先輩の以外なほどの共通点に、もしかしたら今日一番驚いたかもしれなかった。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる