僕とあなたの地獄-しあわせ-

薔 薇埜(みずたで らの)

文字の大きさ
上 下
71 / 152
第4章 同甘共苦

67

しおりを挟む

明日はいよいよ春休み明け初の登校である。
「大学・・・・・・」

春休み前最後の登校があんなことになって次の日も結局行けなくて、そのままずるずる休みに入っちゃって早1ヶ月。
休み中、頑張って静先輩と出かけたり(静先輩ん家に泊まった日)出かけたり(それ以外は完全に商店街だけ)もしたけど、僕の中で大学という場所はどこよりも恐ろしく足を踏み入れるのに勇気のいる所なのだ。

「・・・・・・こわい」

1ヶ月も休みがあってまだ僕のことなんかをみんなが覚えてるなんて、自意識過剰にもほどがあるかもしれない。
でも覚えてるかもしれないって思わずにはいられない。
また「なのに」って言われたらどうしよう。

布団に潜って今日も静先輩に撫でてもらいながら寝ようとしていた時のことだった。
春休みが始まってから大学のことは出来るだけ気にしないようにしていたから、今ふと明日のことを考えた時一気に現実に引き戻されて完全に怖気付いてしまった。

「弥桜、大丈夫だよ。俺がいるし、もう1ヶ月も経ったんだ。みんな忘れてる」
「そう、だけど・・・・・・」
静先輩と僕だけの世界にしてから、商店街に行く時以外本当に二人きりの生活を送っていたから自分の中で結局のところその世界に出来ているのか全く自信がない。

商店街のみんなが好意的なのは最初の一回でなんとなくわかったし、そこでだけなら静先輩の声だけを聴いていれば普通に行くことが出来るようになった。
みんなともそこそこ会話が出来るようになったし。
結永先輩は静先輩と同じで元々大丈夫な人で、休み中もたまーにうちに寄った時は静先輩と一緒にちょっとだけ構ってくれた(静があんまり弥桜を離さなかった)。

だから、自分の中のこの小さな世界から出た時に果たして静先輩の言葉だけを聴いていられるのかどうか。
僕のことを少なからず認識しているだろう人たちの中に入っていって大丈夫なのか。
不安ばかりが押し寄せてくるから、自然と手が静先輩に伸びてしまう。

「ほら、余計なことは考えずにもう寝な。明日のことも全部俺に任せておけば大丈夫だから」
そうやって頭を撫でながら笑顔で言ってくれる。
それでもやっぱり怖いものは怖いけど、それをどうにか出来るわけでもないから今は静先輩の笑顔だけを拠り所に頑張って寝ることにした。

翌日、朝起きた瞬間からすごく気が重かったけど、それでも結永先輩の車に乗せられて静先輩に連れて来られた大学はびっくりするぐらい何もなかった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

処理中です...