47 / 152
第3章 火宅之境
43
しおりを挟む「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
出てきたものはしっかり完食し満足したあと、片付けは僕がすることになった。
食材の準備から料理までしてもらったのに、片付けまでしてもらうわけにはいかない。
せっせこお皿を下げて流し台の前でスポンジを構える。
結局あの後静先輩の言葉に何も言えなくて、そこでこの話はお終いとなった。
僕と家族。
今まで僕の中にはこの二つしかなかった。
自分の在り方と家族との関係。
いくら自分の抱えているものと相反しても、どんなに納得できなくても。
全部家族だから。
家族は大事だから。
あの人たちが本当に大切だから。
それだけで成り立たせてきたのだ。
そこにいきなり静先輩が入ってきた。
そのせいで一気にバランスが崩れた。
『家族』は僕の中で唯一無二の特別で、家族とそれ以外は扱いが全く違う。
家族には許せることでも、他人には許されないこと。
僕をΩだと知ってもなお変わらずに、それどころか一層過保護に大事にされるなんて。
そんなこと絶対にあってはいけないことなのに、静先輩はそれをさも当たり前のようにしてくる。
それどころか大事だとか好きだとか平気で言ってくるし。
でも。
それでも。
何よりも一番わけが分からないのは。
それを受け入れたいと、一緒にいられるようになりたいと、思っている自分がいることだった。
散々静先輩とは一緒にいられないとか、静先輩が勝手にくっついてきてるだけだとか、言い訳をしてきた。
早く離れなきゃと、結永先輩と言い争いまでした。
たった一日かそこらで、と思う。
Ωだとわかってからもう何年も抱えてきたことで、こんな簡単に変えられる程度のものじゃないはずなんだ。
洗い終わった食器を片付けながら、ちらりと静先輩の方へ視線を向ける。
ベッドに腰掛けて大学の課題だろうか、レポートに目を通している静先輩は、この狭い家でさえかっこよく見える。
どんな場所でもどんな時でも、かっこいい静先輩。
「・・・・・・ん、どうした?」
「っ、いや、何でもない」
こっそり見ていたところを見つかって、咄嗟に視線を逸らしてしまう。
「弥桜、片付け終わったか?」
「ん、うん」
「じゃあちょっとこっちおいで」
なんだろう、と言われた通り静先輩の前に行くと、いきなりむにっとほっぺを摘ままれてむにむにと弄られる。
「ふぇ・・・はにふるんへすは」
「お前、なんか無駄に深刻な顔して考え込んでるだろ。変に考え込まなくても大丈夫だからな。ほら、全部俺が勝手にやりたくてやってることだから」
そうやってすぐ気にしてることに気づいてくれて、僕のことなんか全部お見通しだというように声を掛けてくれる。
そんな静先輩の隣になら、一緒にいたいなって思うんだ。
「ご馳走様でした」
出てきたものはしっかり完食し満足したあと、片付けは僕がすることになった。
食材の準備から料理までしてもらったのに、片付けまでしてもらうわけにはいかない。
せっせこお皿を下げて流し台の前でスポンジを構える。
結局あの後静先輩の言葉に何も言えなくて、そこでこの話はお終いとなった。
僕と家族。
今まで僕の中にはこの二つしかなかった。
自分の在り方と家族との関係。
いくら自分の抱えているものと相反しても、どんなに納得できなくても。
全部家族だから。
家族は大事だから。
あの人たちが本当に大切だから。
それだけで成り立たせてきたのだ。
そこにいきなり静先輩が入ってきた。
そのせいで一気にバランスが崩れた。
『家族』は僕の中で唯一無二の特別で、家族とそれ以外は扱いが全く違う。
家族には許せることでも、他人には許されないこと。
僕をΩだと知ってもなお変わらずに、それどころか一層過保護に大事にされるなんて。
そんなこと絶対にあってはいけないことなのに、静先輩はそれをさも当たり前のようにしてくる。
それどころか大事だとか好きだとか平気で言ってくるし。
でも。
それでも。
何よりも一番わけが分からないのは。
それを受け入れたいと、一緒にいられるようになりたいと、思っている自分がいることだった。
散々静先輩とは一緒にいられないとか、静先輩が勝手にくっついてきてるだけだとか、言い訳をしてきた。
早く離れなきゃと、結永先輩と言い争いまでした。
たった一日かそこらで、と思う。
Ωだとわかってからもう何年も抱えてきたことで、こんな簡単に変えられる程度のものじゃないはずなんだ。
洗い終わった食器を片付けながら、ちらりと静先輩の方へ視線を向ける。
ベッドに腰掛けて大学の課題だろうか、レポートに目を通している静先輩は、この狭い家でさえかっこよく見える。
どんな場所でもどんな時でも、かっこいい静先輩。
「・・・・・・ん、どうした?」
「っ、いや、何でもない」
こっそり見ていたところを見つかって、咄嗟に視線を逸らしてしまう。
「弥桜、片付け終わったか?」
「ん、うん」
「じゃあちょっとこっちおいで」
なんだろう、と言われた通り静先輩の前に行くと、いきなりむにっとほっぺを摘ままれてむにむにと弄られる。
「ふぇ・・・はにふるんへすは」
「お前、なんか無駄に深刻な顔して考え込んでるだろ。変に考え込まなくても大丈夫だからな。ほら、全部俺が勝手にやりたくてやってることだから」
そうやってすぐ気にしてることに気づいてくれて、僕のことなんか全部お見通しだというように声を掛けてくれる。
そんな静先輩の隣になら、一緒にいたいなって思うんだ。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる