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第2章 社燕秋鴻
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しおりを挟む「何々?」
織田が何やら察知してて、小声で聞いてくる。
「もしかして、約束があった?」
「……あー……ていうか、聞いてたけど、日時とか入れといてって言ったきり、忘れてたっていう話」
「そうなんだ。今日だったの?」
「ん」
「そっか……じゃあ高瀬、そっちに行っても、いいよ?」
「え?」
織田はクスッと笑って、電話には聞こえないように。
「オレは、明日ゆっくり高瀬と美味しいもの食べにいければ、全然。先に帰ってるよ?」
織田は、ほんとに良いよと思ってそうだが。
そんな訳にはいかない。
「いいよ、別にまたすぐ会うだろうし」
「いつぶりなの?」
「二、三か月位……?」
そう言うと、織田は、んーと考えた後。
「いいよ、ほんとに。家で待ってるから」
何だか本当に先に帰ってしまいそうな。
全然嫌そうでないのが織田のすごいとこだと思うんだけれど。
「織田、一緒に行く? 嫌じゃなければ」
「え?」
「一緒に来れば? って言ってるんだけど」
「ん? オレが一緒に行くの? 高瀬の友達のところに?」
「……ちょっと待って」
さすがに織田もちょっと不思議そうなので、オレは、もう一度スマホを耳に当てた。
「誠ー、ほんとに一緒で良い訳?」
『ん? ああ、良いって言ってんじゃん。前に佐藤の彼女とかもついてきたことあったろ』
「……ああ。そういや、そんなこともあったけど……」
ちら、と織田を見つめると。ん? にっこり笑う織田。
「……来て良いって言ってんだけど……どうする?」
「えーと……良いなら行くけど」
けろっとしてそう言って笑う織田に、ああ、そういうタイプだっけな、と苦笑い。
一瞬、大丈夫か聞こうと思ったけれど、これは大丈夫だなと、判断した。
「……じゃあ連れてく。店は?」
『地図とかも入れてある。待ってるからー』
「了解」
電話を切って、場所を確認する。
「近い?」
「ん、電車乗って十五分位」
「そっか。行こ行こ」
織田がオレを見上げてにっこり笑う。
「ほんとにいいのか?」
「え? いいよ。だって、オレも高瀬の学生時代のこと知りたいし」
「……いい話じゃないかもよ?」
「そう? でも別に。だって、なんとなく知ってるような気がするし」
歩き始めながら、そんな話をしていると、織田がそう言って笑った。
「クールな感じでモテモテだったんでしょ?」
「――――……」
「なんとなく分かるから、平気。どんだけカッコよかったか、聞きたいだけだから。聞けると思うし」
絶対本気なんだろうなと思う表情で、そんなことを言って笑うから。
オレまで、笑ってしまう。
「高瀬がモテるのなんか知ってるし、学生時代とかに、誰とどれだけ付き合ってたって平気。……ていうか、オレも結構モテたし」
悪戯っぽく笑う織田に、そうだろうな、と返すと。
「……そこ、つっこんでくれないと、恥ずかしい」
「え、何で? 織田は、モテたと思うけど?」
「オレより百倍モテてそうな高瀬に言われると、余計恥ずいです……」
困った顔をしているのが可笑しくて、くしゃ、と髪をなでると。
ますます照れてるし。
どうしてこんなに可愛く生きてこれるのか、謎。
なんて。また思ってしまった。
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