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第2章 社燕秋鴻

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掴まれた腕をぐいっと引っ張られて正門とは逆方向、大学構内にあるカフェで待ち合わせているからと連れていかれる。
もちろん道すがらすれ違った人たちの中に、どんなに僕が嫌がってても助けてくれるような人なんていなかった。

「放してくださいっ!! 僕はもう関わっちゃダメなんです・・・・・・」
「はいはい、わかったから。どっちにしろ一回静とちゃんと話した方がいいよ。離れるにしても勝手にいなくなるのは、助けてくれて面倒まで見てくれたかっこいい静先輩に失礼じゃない?」
「ゔ・・・・・・」
図星をつかれて抵抗する力が緩む。
確かにそれは僕が一番気にしていたことだ。
だから早く離れなきゃいけないのにいつまでもうだうだとしていたんだから。

でもどうしていいかわからなくて聞いてみれば一緒にいてくれの一点張りで、それは出来ないといくら訴えても聞き入れてもらうことは無理だなとわかったから、静先輩には申し訳ないけど勝手に離れようとした。
それに静先輩も僕がそうするであろうことがわかっていたから朝夜先輩を迎えに来させたわけだし。

それに今静先輩に会って名前なんか呼ばれてしまったら・・・・・・。

「それでも、どうしても静先輩と一緒にいられない理由があるんです。ありがとうございましたって、お礼も出来ずに勝手なことしてすみませんって、朝夜先輩から伝えて下さいっ」
「・・・・・・何、一緒にいられない理由って。伝えるのはいいけど、離れるかどうかは理由によるでしょ」
「っ!!!」

ここまで食い下がられるともう意地でも離れてやるって気持ちになってくる。
絶対に戻ってなんかやるもんか、と意地になって押し問答していると、だんだん冷静になってきてこんなとこで自分は一体何をしているんだって悔しくなってくる。

静先輩が嫌いだから離れるんじゃない、むしろ初恋の相手で好きで、だからこそ離れなきゃいけないって考え方しか出来ない自分がすごく悔しくて悲しい。

どんどんど壺にはまってきて、朝夜先輩を睨んでいた視界が滲んでくる。
なにがなんだかわかんなくなってきて、抵抗する力ももうほとんどなくなっていた。
「放してよ・・・・・・」

そうやっていつまでもぐだぐだとしていたから。
だから間に合わなかった。

絶対に今聞いたらいけなかったのに。

自分がどうなるかわかってたから、早く逃げ出したかったのに。
もうダメだ、とこの一瞬で悟ってしまった。

「弥桜」

その声を聞いた瞬間、心臓がドクンと大きな音を立てて凍りついた。
声も出ないし手も足も動かない。

声のする方にゆっくり視線を向けてその先に静先輩を見つけた時、瞳に溢れていた涙が零れた。

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