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第2章 社燕秋鴻
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しおりを挟む静先輩のこと、知らないことだらけだ。
彼が一体何者なのか、どうして静先輩の方が悪者扱いされているのか。
静先輩とは別れが近いから知らなくてもいいことかもしれないけれど、初めて好きになった人が悪者扱いされているのは誰だって気分が良くない。
その理由ぐらいは知りたいと思ってもバチは当たらないだろう。
「あ、あの・・・・・・」
講義室に入るときにすれ違った人に声を掛けてみようとしたけど、すごく迷惑そうな顔を向けられて通り過ぎられてしまった。
やっぱりかわいそうだと、Ωだからと言われるようになっても、最初の卑怯者のイメージがなくなったわけじゃない。
だからみんな、こんなやつとは話したくないのだろう。
でもだからと言って、静先輩に直接聞くわけにはいかないし。
もう少しだけでも他を当ってみようと、同じ列に座ったやつに声を掛けてみることにした。
「・・・すいません。き、聞きたいことがっ・・・・・・」
「っお願いだから巻き込まないでくれ。俺たちみんなあの人に目を付けられたくないんだよ」
その人は声を掛けた瞬間に真っ青になって捲し立てて足早に僕から離れた席へと行ってしまった。
本当に何なんだ!?
みんなして静先輩のこと腫物扱いして。
僕と話したくないだけなのかと思ったら、あの人に目を付けられたくないってことは静先輩と関わりたくないってことじゃないか。
なんでみんな静先輩のこと、そんなに避けるんだろう。
ここまであからさまな態度にされると、悲しみを通りこして逆になんだかイライラしてくる。
結局、もう誰かに聞く気にもなれないし半径三席以内に人なんて誰一人としていないから、その講義は一人席を使いたい放題にしてしっかり授業を受けてやった。
なんだかんだで次の講義室でも大体同じように避けられてぽっかり空いた席で受けることになると、もうそういうもんなんだと諦めもついてくる。
元々自分のことについては初めから特に何とも思っていなかった。
そういうものだと納得していたし、むしろこんなもんかと若干気が抜けた部分すらあったくらいだ。
一方で、その非難の声の中に静先輩を侮辱するものがあると、それにはイラつきを抑えられないでいた。
どうしてそんなことが言えるのだろう、とそろそろ爆発寸前になったところでその時間の講義が終わって講堂の入り口がざわざわしていることに気が付いた。
そこにはさっきまで一緒にお昼を食べてなんとか空気を明るくしようとしてくれていた朝夜先輩がいて、僕と視線が合うとにこりと微笑んで手を振ってきた。
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