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第2章 社燕秋鴻
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しおりを挟む怖くないわけがない。
ただでさえ僕にとって存在否定のような言葉だ。
自業自得が故だとしても、他の誰に言われるより彼から言われることが比じゃないぐらい怖くて仕方ない。
それなのにさっきから静先輩の口からは僕の体調を気にする言葉しか出てこない。
気にしてくれることが嬉しいと思う反面、そんなことより早く突き放して欲しくてその恐怖に震える。
そうやって僕が静先輩の顔色ばかり気にして真っ青になってると、何を勘違いしたのか僕の顔と周りの人たちを見比べた静先輩は、僕の腕を掴んでグイッと半ば無理矢理立たせると、そのまま教室の外へ強引に引っ張りながら歩き出した。
「見世物じゃねぇぞ」
外へ向かいながら通り抜ける道すがら放たれた一言は、大きな声ではなかったが周りにいた人たちには重く響いたようでみんなびくりと震えてあからさまだった視線を逸らした。
立たされて歩かされて、その時ようやくこの教室の空気が変わっていたことに気がついた。
さっきまで僕を見ては、Ωだったんだ、Ωだということを隠していた卑怯なやつだ、と罵っていた人たちが、今はどこか怯えた視線を向けて、早速あんなやつに目を付けられていたのか、Ωなんだからこれからはあいつもこの世界を味わうことになるんだ、とΩだからという声に変わっていた。
あんなやつというのが静先輩だということは何となく状況から分かるけど、どうしてそんな言い方されているのかという違和感を抱きつつも、そんなことよりΩなのにと言われていた時より随分気持ちが落ち着いたことにほっとする。
Ωである僕にはあって当たり前の状況なんだ、と。
ちゃんと僕はΩなんだ、と。
認められているような気がする。
だからいいんだ。
この人たちの言葉は視線は、間違っていない。
「や、やめてっ。そんなこと言わないで」
どうして彼を怖がっているのか、どうして彼と一緒にいるとΩだからと言われるのかは分からないけれど、Ωなのにと言われるよりよっぽどよかった。
静先輩に庇ってもらってまたΩなのにと言われるのは嫌だ。
どんな理由だっていい。
Ωなのにと言われなければ、どう思われたって大丈夫。
だから庇わないで。
「・・・・・・これでいいんです」
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