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序章 初会
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しおりを挟む僕はΩとして生まれた。
ただ普通なら自分がΩだと知れば絶望すらするところなのに、僕にはそれがなかった。
これからはΩとして生きていくんだ。
僕には普通の生活は望めない。
そう不思議と納得できたのだ。
それを今まで一度も嫌だとか怖いだとか思ったことはなかった。
そういう仕様なのだから仕方ないと思えた。
Ωは社会に受け入れられず、種の繁栄のために一生を費やすものだと思っているし、発情期にはそれしか出来なくなって周りに迷惑をかけるだけの出来損ないになることも納得している。
親に蔑まれ友達に虐められ、いろんな人に犯されるものだというのが一般常識だし、僕もそれを理解していた。
僕に待っているのはそんな生活だと。
しかしそれから待っていたのは周りと変わらないばかりか、親の愛情が増す一方の生活。
憐れんだのか本当に愛情なのかわからなかったが、僕の扱いはどんどん過保護になっていった。
うちは親が二人ともαで、兄はβ。
その中で僕だけがΩとして生まれた。
そんな環境だったからかもしれない。
余計に蔑まれると思ったのに。
実際に兄や親に蔑まれたことなど一度もなかった。
それに親が言わなければ誰も僕がΩだとは分からない。
僕が言ってしまえばそれまでなのだが、大事にしてくれた兄や親を前になんとなく言えなかった。
それでも何かのきっかけで知られてしまったらそれまでだし、それ自体は嫌だとも怖いとも思ったことは無かった。
だから友達にだって虐められたこともないし、普通の子と同じように優しくしてくれる人も沢山いた。
そんな中で僕には疑問があった。
こんなにいい思いをしていいのだろうか。
Ωとして生まれたのにこんな生活おかしいのではないのか。
そういう思いが僕の中に静かに根付いていった。
僕はきっと怖かったんだ。
ΩとしてΩだということを蔑まれるのは、仕方ないと納得している。
でも僕がΩだとバレて罵倒も虐めもない生活をしているとバレたら。
こいつ、Ωなの隠して悠々自適に過ごしてやがった。
なんでΩなのに周りからこんなに優しくしてもらってんの?
俺はこんなに辛い思いしてんのに。
お前はΩなのに・・・・・・。
Ωなのに・・・・・・。
いつからだろう。
そう言われるのが恐ろしくなった。
Ωとしてではなく、Ωらしくないと言われることが怖かった。
Ωとして生まれてきた自分が全否定されるようで。
こんな僕が先輩たちに裕福だということを隠すには十分すぎる理由だった。
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