強面男子だって恋をする。

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第6話

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真央「クラリネット志望。1-A、猫宮 真央ネコミヤ マオ。」

陸「ぁ…えっと…吹奏楽は、み、未経験、です。1-Aの兎月 陸ウヅキ リク…です。」

大樹(……コイツらのことか、姉さん。)

俺の目の前には入部届けを持った二人の新入生。

ツンデレの猫系男子、BoRの受けキャラ2人のうち1人。
おどおどしている兎系男子、でも仲良くなると…!?

姉さんのメモに書かれていた言葉だ。…受け、ってなんだ?

大樹「……自由に見学していい。」

俺は二人の目を見て言ったつもりが、どうやらそれが目付きが悪く睨んでるように見えたらしい。

真央「…何。どうせ大したことないとか思ってんの?」

大樹「あ?」

陸「ひぃっ…!」

猫宮には明らかな嫌悪感を向けられ、兎月からは怯えられている。

大樹「……っ、う…」

兼頼や絵式。そして狼谷に愛垣…俺を怖がらない人が出来たことに安堵していた。

そりゃそうだ、俺みたいな強面に睨まれたと感じたら怖がるに決まってる。

大樹「……すまねえ…その、あっちの…金髪のやつに聞いてくれ。」

俺は片手で目元を覆った。

真央「…?なんで目、隠すの。」

大樹「だって、怖ぇだろ。怖くなくても…嫌な気分になるだろ、俺の目。」

陸「えっ…!?ち、ちがいますっ!その…たしかに、びっくりしたけど…!」

真央「…僕はちょっと、馬鹿にされたのかって…ムカついただけだし。」

大樹「…そう、か?」

真央「アンタはなんて名前なの?」

大樹「あ…俺は、宮脇大樹。…その、こんな面だし、こんな目付きだけど…不良とかじゃねぇから。」

真央「不良ではないって思ってたけど…さっきは、睨んだとか勘違いしてごめん。」

陸「ぼくは、元々ちょっと、人見知りだから…すみません、過剰に反応しちゃって。」

大樹「いや、いい。俺こそ悪かった。…ほら、吹部についてはアイツが__」

真央「宮脇サンが案内しないの?」

大樹「え?」

陸「さっきのこと、本当に気にしないでください…!ぼくは宮脇さんに案内して貰えるなら嬉しいです。」

大樹「…!…わかった、案内する。つっても…猫宮はクラがいいんだよな。」

真央「うん。中学もクラだし。…自分のクラ、買ったし。」

大樹「へぇ、楽器買うって結構ガチだな。」

陸「真央くんのソロ、かっこよかったんですよ…!」

大樹「あ?同中?」

真央「中学どころか、幼稚園から一緒。幼なじみ。」

大樹「へぇ…」

陸「真央くんのソロに憧れて、ぼくも吹奏楽に入ろうかなって思ったんです…!」

真央「陸は大袈裟すぎ。」

と、いいつつも猫宮の耳は赤く染っている。

大樹「…素直じゃねぇな。」

真央「はぁ!?」

大樹「あ。」

真央「っちょっと、どういう意味?」

大樹「そのままの意味だ。」

真央「~~っ…」

大樹「じゃあ兎月もクラか?」

陸「…あ、ぼくは…」

真央「…陸はトランペットじゃないの?」

陸「ま、真央くん…!」

大樹「いいじゃねぇか。」

陸「たしかに、かっこいいし、やってみたいですけど…ぼくには、合わないよ…」

大樹「そうか?楽器に合う合わねぇとかないだろ。」

陸「宮脇さんは…」

大樹「俺はパーカス。」

陸「うわ、イメージ通り。」

大樹「たしかにドラムとかのが多いけど、たまにグロッケンとかそういう鍵盤楽器もやる。ちょっとかわいくて俺のイメージには合わねぇけど楽しいもんだぜ。」

陸「あ…」

大樹「体験だけでもしてみたらどうだ。」

陸「…はい!」

真央「…宮脇サンって意外とかっこいいね。」

陸「あ?」

真央「なんでもない。」

依織「大樹、もしかして体験に来た子?」

大樹「依織…いや、もう入部決めてくれた。」

依織「ほんとに!やった、2人は確定です、先生!」

裕二「上主…毎年人数が少ないからって、2人で喜ぶのはまだ早いんじゃねぇか?」

真央「…ここ、やっぱ少ないんだ。」

大樹「そうだな、コンクールとかは出ない。」

陸「え、そうなんですか?」

依織「その代わりもっと少人数で出られるコンテストがあってね。それで金賞を取るのが目標。」

真央「へぇ、なるほど。」

裕二「文化祭とか、学校行事で演奏することは割と多いな。」

大樹「あ、んで依織。コイツ…猫宮って言うんだが、コッチはクラ志望。」

真央「コッチってなに!」

大樹「そんでコッチは未経験で、楽器はこれから決めてく。」

陸「兎月陸です…!」

依織「よろしくね、2年の上主依織だよ。」

裕二「顧問の遊来裕二だ、まぁ表立つことはほとんどねぇけど。なんかあれば言えよ。」

大樹「…折角だ、兎月。猫宮と一緒にクラ吹いてみるか?」

陸「…!は、はい!」


~~♪~♪

…………

大樹「…気にすんな。」

陸「うぅ…真央くんは音が出るのに…」

裕二「そりゃ経験年数が違うからなぁ。気にすんなよ。」

依織「…初めてなのに綺麗な音出されたら、俺たち2年生の顔がないよ…」

大樹「でも、猫宮の音すげぇ綺麗だな。」

真央「え……ほんと?」

大樹「あぁ。俺は高校からだし、パーカスだし管のことよくわかんねぇからあれだけど…」

真央「あ、ありがと…」

大樹「兎月、次何やる?」

陸「あ、え、えと…じ、じゃあ、ぱーかす…?」

大樹「パーカッションだ。…着いてこい。」

真央「…なんか、宮脇サン凄い乗り気?」

依織「大樹、人見知りなのに加えてちょっと顔が怖いから…あんまり人と関わることがなくてね。多分初めて後輩が自分のこと頼ってくれて嬉しいんだよ。」

真央「子供みたい。」

裕二「はっ、言えてるな。」


大樹『猫宮の音すげぇ綺麗だな。』


真央「…」

猫宮はぎゅ、と自分のクラリネットを握った。


陸「う、うぅっ、い、いたい…」

大樹「どうしたもんか…」

俺は兎月にバチを握らせ、ぐるぐると手首を解すためのストレッチをさせていた。

陸「や、やっぱりそもそもぼくに吹奏楽なんて向いてなかったのかも…」

大樹「いや、誰でも最初はそんなもんだ。」

陸「…宮脇、さんも?」

大樹「ああ。俺なんてもう何十年も生きてんのに人と喋んの苦手だからな。」

そこではっとする。

大樹(やべ、何十年とか言っちまった。)

けど兎月は特に気にとめなかったようで

陸「ぼ、ぼくもです!…いまだに、人見知りが治らなくて…」

大樹「無理に治すもんじゃねぇだろ。」

陸「それは、その…でもつい焦っちゃって。」

大樹「わかるぜ。…ま、でも一つ一つやってけば…」

俺はその場にあったスネアでロールしてみせる。

大樹「これくらいできるようになる。俺でもできるんだ、お前もできる。」

陸「…!か、かっこいいです、宮脇さん…」

大樹「じゃ、本命のトランペットやるか。」

陸「は、はい!」


陸「……っ、ならない…」

大樹「んー…マウスピースが鳴らねぇ、か…」

陸「うぅ…!」

大樹「たしか、口を閉じて…あ、突き出しちゃダメだ。えっと__」

陸「……ぷすーー」

大樹「!ちょっと音鳴ったぞ!」

陸「これ、鳴ったに当てはまるのかな…」

俺から見る兎月は少しがっかりしている。

大樹「が、楽器!やるぞ!」

陸「え、でも…」

大樹「まだ体験だからな、じっくり時間かけて色んな楽器楽しもうぜ。」

陸「…はい。」

カチャ、と音を立ててマウスピースをトランペットにはめる。

大樹「ん。」

陸「ありがとうございます。」

大樹「口は突き出さずに…閉じて…」


ぱ~~


陸「…!!な、鳴った!鳴りました!」

大樹「なんか聞いたことある、マッピでは鳴らなくても楽器吹いたら鳴るとか!」

真央「随分へにょへにょだったけどね。」

大樹「!猫宮。」

真央「よかったね、陸。」

陸「へ…」

真央「やってみたいって言ってたじゃん。」

陸「で、でも、ぼく音がまだ全然…」

大樹「言っただろ、時間かけていいって。」

陸「宮脇さん…」

大樹「お前らまだ一年なんだからよ。」

陸「っ、はい!ぼ、ぼく、トランペットやりたいです!」

大樹「よし、よく言った。」

裕二「…ふ、宮脇しっかり先輩してんじゃねぇか。」

依織「じゃあ、下校時間まで練習しようか。」

大樹「そうだな。じゃ__」

練習場所に戻ろうとしたところ、両袖を引っ張られた。

陸「あ、あの!もっと…ぼくの練習、見て欲しいです。」

大樹「え、でも俺ペットは全然詳しくな__」

真央「じゃあボクの演奏聴いててよ。それくらいできるでしょ。」

大樹「だ、だから__」

陸「ま、真央くん…!」

真央「明日でいいでしょ、陸は!」

陸「やだ、ぼくも今日がいい…!」

大樹「俺を挟んで喧嘩すんな…」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ俺たちを他所に

裕二「…はっ、またライバル登場じゃねぇか。」

依織「勘弁して…大樹……」

裕二「上主もっと押せばいけんじゃねぇか?」

依織「…大樹、自分を誰かが好きになることなんてないって思い込んでるみたいで。多分俺が告白しても冗談だって流されます。」

裕二「アイツのその思考はどっからやってきたんだ…」

依織「でも、俺知ってますよ。先生も大樹が卒業したら…」

裕二「ふ、まぁ今手ぇ出したら俺のクビが飛ぶからな。」

依織「油断も隙もない…」


真央「明日はボクの演奏聴いてもらうから!」

陸「結局、今日は宮脇さん自分のパートの方に戻っちゃったから…明日は教えてほしい、です。」

大樹「猫宮には依織っていう完璧な先輩がいるだろーが(依織と男子の絡みを姉さんに伝えなきゃならないし)。兎月は頼ってくれんのは嬉しいが、何回も言ってる通り俺は管についてはてんでダメだ。」

練習終わり、廊下を歩いていると

大樹「うわっ」

?「っ!」

角からでてきた人とぶつかってしまった。

大樹「…悪い。」

?「こっちこそ、ぶつかってすんません」

それだけ言葉を交わして去っていった。

真央「…あ。アイツ…」

大樹「あ?知ってんのか。」

真央「うん、今日体育一緒だったんだけど、見学してた。体操服は持ってきてたから体調不良なんだと思うけど。」

依織「ああ、さっき来た方向も保健室からみたい。大丈夫かな…」

依織が心配そうに男子生徒が去った方向を見つめる。

陸「多分、隣のクラスの…高梨くんだと思います。」

大樹「!高梨?」

陸「は、はい。高梨、俊くん。」

やっぱり…保健委員として入るはずの…病弱キャラ。

大樹(これで1年生全員の顔と名前を把握出来た。)

まだ会えていないのは…

大樹「2、3年か…」

依織「なにが?」

大樹「っ、あ、あぁいや…」

依織「そういえば、俺、明日のお昼クラスメイトの子に一緒に食べないか誘われたんだよね。」

大樹「え。」

依織「もしよかったら大樹も来ない?」

大樹「…いいのか?」

依織「勿論、誘ってくれた子も優しかったから、快くOKしてくれるはずだよ。」

大樹「…わかった、じゃあ、いく。」

俺はこの時の選択を後悔することになるとは知らず、首を縦に振るのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
名前紹介

・猫宮 真央 ネコミヤ マオ(1-A)
BoRの原作では受けキャラ、というだけで宮脇くんが転生したこの世界では違います(主人公総受けです)

・兎月 陸 うづき りく(1-A)

です!6話にしてやっと1年生全員登場

次からはもうちょっと文章量増やして10話までには全キャラ登場させたいです!

9人もの方がお気に入り登録してくださって嬉しいです、自分得の作品ですがこれからもよろしくお願いします!
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