チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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「申し訳ありません! 」

 そうやって必死に謝ってきた相手だが、私が次の言葉を繋げるのを待つだけの余裕はあるようだ。

「こちらこそすみません。ええと・・・」
「ラズフェル東方辺境伯爵家次女、リリアナ・イオ・ラズフェルと申しますわ」
「はじめまして、シエルといいます」

 そう言うと、彼女はニコッと笑い、


「あちらで少しお話しませんか? 」


 と言って、端のほうにある空きテーブルを指差した。

「いいですね」


 そんなことをしていたものだから、反対側で何が起きていたか、私には知る由もなかった。


*****


「ねえねえ、このケーキすごく美味しいわよ! 」
「我にも食べさせろ」
「あれ、シエルは? 」
「なんだか真剣な話をしに行ったぞ」
「じゃあ邪魔しないほうがいいかしらね」

 シエルが大事なお話をしに場を離れ、暇になった鳥、馬、狼、龍の四匹は、一つのテーブルを陣取っていた。周りから見ればはた奇妙な光景である。

 テーブルの中央には事前にシエルが取っていたありとあらゆるスイーツ。ご丁寧にお茶も四匹分用意されている。

 四匹はさも当たり前のようにしているが、この状況に当然周りは困惑しており、それが神獣であると知っている人たちは、どうやって話しかけるか、知らない人たちは、なぜこんな光景が演出されているのか、ヒソヒソと話し合っていた。

 明らかに聞こえているその小声を、四匹とも揃って無視するため、余計周りに難題を出していた。


 とうとう、勇気のある一人の少年が歩み出た。

「失礼します、僭越ながら神獣様たちでお間違いないでしょうか? 」
「ええ、そうよ」

 紅羽が認めたことで、ザワッとした空気が周りに広がり、波のように伝わっていった。

「クルク商会次期商会長のベリル・クルクと申します。お見知りいただければ幸いです」

 その子、ベリルがそう名乗ると、なぜか狼にじっと見つめられていた。

「・・・おまえ、クルクっていうのか? 」
「はい。ベリル・クルクです」
「クルク商会の? 」
「あ、はい。代々我が家が営んできた商会でして、主に茶菓子などを中心に販売させていただいております」
「ほう、菓子か」
「はい。ただいまそちらにあるクッキーも、我が店の季節限定のものとなっています」

 すかさず四人のテーブを指さして商品を紹介するところは、さすが商人の息子。常に耳をそばだてているご令嬢たちにアピールするなら、この方法が一番手っ取り早い。


「ふーん。・・・後でシエルのところに行ってみろ、面白い話が聞けるかもしれないぞ」
「え、あ、はい! 」

 突然の神獣からの指名に本人にも周囲にも驚きが広がるが、なぜと聞ける強者はいない。そしてベリルが一歩後ろに下がったことを皮切りに、他の人達が続々と挨拶に行き始めた。

「ティルマ伯爵家が娘、アミア・イオ・ティルマと・・・」
「グラオディエ公爵家が三男、ラドル・イオ・グラオディエと・・・」
「シオンヌ子爵家が長男・・・」
「ルフルス伯爵家が次女・・・」

 彼らが聞いているかなんて気にせず、次々と人が殺到する。

 当然だ。今のうちに少しでも覚えてもらえれば、あとの夜会で声をかけられるかもしれない。もし本当に声をかけてもらえれば、注目の的確定である。神獣という存在はそれほどまでに大きく、彼らにとってはなんてことないただの気まぐれでしたことも、貴族たちにとってはそれこそ歴史書に語り継ぐべきレベルのことになるのだ。


「ちょっとあなたたち退きなさい! 私は神獣様に挨拶したいのよ! 」


 まるでデパートの年末セールとかした空間に、一人の厄介者が現れた。

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