チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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「私は中立を保つことにします」


 すっと、空気の揺れが止まったような静けさに包まれる宰相室で、私は語り続ける。

「ここに来たとき、『私は全員と直接会って一人決めたい』と言うつもりでした。ですが今、考えが変わりました」

「考えが変わった? 」


「はい。第一王子殿下、あなたには王になる器があります」


 ストラーノさんが選んだということは、この国に必要な人材であるということだろう。

 カチャッと小さく音を立ててカップが置かれる。

「それは嬉しいね。・・・それはセシオンたちにも? 」
「他の人がどうかはわかりませんが、少なくとも私はあの二人に可能性を見出しました」
「そうか。成長したんだな、二人とも」

 ふと緩んだ目元からは兄の顔が見える。


「ですが」

 そう続けると、またピンッと空気が張り詰めた。


「双方足りないものがあります。あなたには国王として民を惹きつけ続けられるだけの魅力が。反対に二人は、貴族からの支持と権力争いに参戦するための土台が十分にできていません」


 王になるだけなら、王冠さえ被れば誰でもできる。だが期待して貰うのに必要な条件を全て身につけるというのは、本当に難しいのだ。

「確かに君の言う通りだね。もし僕の利用価値がなくなれば、今こちら側についている大半の貴族は去っていくと思うよ」

 だからこそ私は中立を選んだのだ。


「私を使って、それを補ってください」


「どういう・・・」
「民を惹きつける材料が必要なら私を利用してください」

 つまり、どっちも拒否して静観するタイプの中立ではなく、どっちの頼み事も引き受けるといったタイプの中立を取るのだ。

「いいのか? 」
「第二、第三王子殿下にも同じように言うつもりです」
「それではシエルさんにメリットがないじゃないですか」

 ストラーノさんがそう言っているが、よくよく考えてみてくれ。

 将来どちらかが国王になったとき、叛逆でも起こしていなければ、選ばれた一人以外は必然的に王弟などとして補佐する立場につくことになる。まだ会っていないが、メティーナ殿下の場合は高位貴族や他国に嫁ぐという選択肢も出てくるだろう。ならば、一人だけに傾くより全員と関わっておくことで、将来この人たちが散らばったときにいろんなところに触手を伸ばせるようにしておきたい。人脈というのは広いに越したことはないのだ。

「それに、これは自分のためでもありますし」

 私は今決してこの王子様たちのために動いているわけじゃないのだ。自分がこの世界で生き抜くための布石を打っているのだ。

 もし将来、仮に反逆が起きたりして芋づる式で掘り出されても、様々な方面に繋がりを持っておけば、逃げ道を作っておける。


「使える手札は多ければ多いほどいい。もちろん、その手札を使うようなことが起こらないのが一番ですが、将来は誰にも読めません。万が一何かあったときの逃げ道を多く用意しておきたいのです」

 むしろ、同時に王子三人、うまく行けば王女一人にも同時に恩を売れるのだから、こっちからしたら一石二鳥どころか、一石で三鳥も四鳥も手に入るのだ。

「もちろん、全てが全てを引き受けるわけではありません。それに、基本的に引き受けるかどうかの判断は完全に自分の偏見で決めることになります」

「それは全然構わないよ。今この国で実質トップにいるのは君なんだから」

 やはり神獣という要素はデカいんだね。

 まあでも、

「どうにせよ、お二人ご自身に頑張ってもらう部分のほうが多いと思いますよ」
「そうだな。あまり人の威光を借りすぎると、逆に小物だと見下されかねない」
「あー、それもあるんですけど・・・」

 
 そこも注意点ではあるんだけど・・・。


「私、旅に出るので」
「えっ」


 それがラックさんの声なのかストラーノさんの声なのかはわからなかった。

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