チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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「おまえの神獣を俺に渡せ! 」


 は?


 よし、わけがわからん。

 一回門扉を閉めて後ろを振り返って一息つき、もう一度前を向く。

「どうしたのだ? 」

 うん、まだいる。

「もう一度用件をおっしゃって頂けませんか? 」


「おまえの神獣を俺に渡せ! 四匹いるんだろう? どれか一匹ぐらいいいだろう」


 は? よくないだろ。

 あまりにもありえない話に、怒りで拳が震えているのが自分でもわかる。一応相手が貴族であることを考慮して、あからさまな暴言を吐いてしまわないように気付けているけど、ポーカーフェイスは今にも崩れそうだ。

「ちなみになぜ? 」


「父上がおまえと仲良く良くしろと言ったのでな! 俺とおまえの友好の証として神獣を一匹貰ってやる! 」


 友好の証? 本当になに言ってんの、この人。今この時点で、将来できる予定だったかもしれない私たちの友好は綺麗サッパリ無くなりましたけど。


「私たちの間に友好があったとは驚きですけど、あいにく今みんな不在なんです」

 訳、おまえなんかと友だちになった覚えはないんだけど? それにうちの子には会わせないからね。


「む、その後ろにいるのは違うのか? 謁見式で見たのと同じように見えるのだが・・・」

 ちぇ、なんでバカなくせにこういうとこだけは目敏いんだよ。もう相手するのが面倒になってきた。

「ですが今はこの子しかいなくて・・・」

「ではそれを私に譲ればいいではないか! 」

 ああ! なんで一日に二回もこんなやつらの相手をしなきゃいけないんだよ!?


 こいつは神獣をものだとしか見ていない。たとえ私が渡したって、こいつに従う子はいないだろう。
 従魔契約というのは、より力量のある方が優勢なのだ。存在自体がチートである神獣と貴族のお坊ちゃまの力量差なんて、言わずもがな。

 怒りでだんだん笑みが深くなっていく。


「身の安全のためにも早くお帰りになったらどうですか? 」

 訳、手が出ないうちのさっさと帰れ。


「なんだと? 私は神獣が欲しいのだ! 」


 とうとうこいつの本音が出てきた。実際のところ友好の証云々はどうでもいいのだ。ただ神獣を手にしたことを自慢して、自分が特別なのだという優越感に浸れるから欲しいだけ。そんな考えなのだろう。

「おまえら! あれを連れてこい! 」

 そいつがそういうと、後ろ二人のなんともまあ忠実なこと。スタスタと両側から近づいてくると、迷いなく私の後ろにいる黎月に手を伸ばした。

 もちろんそのまま捕まるなんてことを黎月がするわけがなく、四本の腕が次々に捕まえようとしているのを器用に避けている。

「何をしている!? 早くしろ! 」

 それを見る私の後ろで坊っちゃまが騒いでいるけど気にしない。

「おいおまえ! あの狼に私のところに来るよう言え! 」
「いやです。というかおまえというのは誰ですか? 私の名前はおまえではありません」
「ぐっ・・・」

 たかが小学生程度の煽りだが、こういう中身小学生のやつにはちゃんと効くのだ。


 ちょっとだけ畳み掛けてみようかなー。

「さっきあの人たちにもおまえと使っていましたが、まさか私を召使いと同一視しているわけではありませんよね? 」

 友好の証だとか言ってたんだから、その相手を召使いだと見てるとかあり得ないよね?


 満面の笑みで煽ると、とうとうこらえきれなくなったのか癇癪を起こして殴りかかってきた。

「おまえ! せっかく私が良くしてやってるというのに、なんだその態度は! 」

 激昂した拳が私に向かった瞬間、後ろでブワッと魔力が膨れ上がったのを感じた。


「あ、」

 黎月がキレた。


 様子をみようとふりむく間もなく、ドサドサと倒れる音が二つ分聞こえ、目の前を白いものが通り過ぎた。今回は私が直接出しする羽目にはならなさそうだね。

「なッ!? 」

 黎月が腕に噛みつき、そいつを引き倒したのだ。


「貴様、よくもシエルに手を出したな! 」


 ふと反対側を見ると、あの召使いは二人とも気絶して倒れていた。外傷がないところを見ると、さっき魔力が放出されたときに威圧で気絶しただけなのだろう。

 今一番酷いことになっているのはあのお坊っちゃまだ。

 黎月の牙は案外深く食い込んでいたようで、袖一面の大きな範囲に血が滲んでいる。側にいる黎月は、当然だといった目でそれを見ている。


 あーあ、やっちゃったね。エス・・・、エスなんだけ? エスキモー? 伯爵令息さん。

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