チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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「ただいまー」

 この世界には特にそんな言葉はないけど、癖で言ってしまう。

「あ、シエルさん。帰ってきたんですね」
「クレーリーさん! 何か作ってるの? 」

 団舎を入ってすぐのところに食堂があり、そこから一人ひょっこりと顔を覗かせた。

「バタークッキーですよ」
「本当!? やったー! 」

 腰にエプロンを巻いたこの人は第二騎士団きってのお菓子男子クレーリーさん。普段からよく厨房で色々いじっていて、趣味がお菓子作りだというクレーリーさんのデザートは特別絶品なのだ。他のみんな曰く、クッキーといった焼き菓子から難しいケーキまで難なくこなすらしい。

「一緒に作りますか? 」
「いいの? やりたい! 」
「では我はしばらく休んでこよう」
「了解」

 たったったっとかけていく黎月を見送って、

「では、手を洗って来たらまずは生地作りを手伝ってくれますか? 」
「はーい」

 厨房で生地を捏ねながら今日聞いたことを尋ねてみる。

「ねえクレーリーさん」
「どうしましたか? 」
「クルク商会って知ってる? 」
「クルク商会ですか? 知ってますよ。主に菓子などを販売しているところですね」
「今日商業ギルドで会ったんだけどね、最近貴族商会との取引がなくなって大変なんだって」
「そうなんですか? クルク商会の取引先は主に中小貴族のはずでが、一斉に取りやめとなると偶然とは考えにくいですね」

 やっぱりこれ、その貴族商たちの上に何かいるよね。調べてみたいけど、騎士団の人たちは巻き込めないしなあ。


「生地ってこんな感じでいい? 」
「あ、はい」

 捏ね上げた黄色い生地を軽く指で押して確認してもらい、次は薄く広げて型抜きだ。

「型は・・・」
「かた・・・ですか? 」
「え、うん。型。あのくり抜くための」
「かたがなにかはわかりませんが、くり抜きに使うのはこれですよ」

 そう言って渡されたのはアイスピックのようなのもの。

「これをこうやって一周回してから剥がすんですよ」

 クレーリーさんが実際にピックの先を生地に刺して、円を描くようにクルッと回すときれいな円の形ができた。

 なるほど、そうやるのか!

「そう回して・・・、そうです。ほら、できました」
「う、う~ん・・・」

 なんだかなあ。

 クレーリーさんの作ったのと自分が作ったものを比べてみるが・・・、


 不格好なんだよな~。


 まあるい形をしたクレーリーさんのものに対して、あちらこちらが凹んでたり飛び出てたりする私の。

 難しいな~、これ。

 私が悪戦苦闘している間にもクレーリーさんはどんどん量産していて、気づけば生地の端っこの方しか残っていなかった。

 そこもくり抜いたら、天板に並べてオーブンへレッツゴー

「このまましばらく待ちましょうか」

 クレーリーさんがオーブンの側にある赤い石の上に手を置くと、だんだんオーブンが熱気が感じれるようになってきた。

「これどういう仕組みなの? 」
「魔結石ですよ。この赤い魔結石に魔力を流すと中にある導管に熱が伝わるようになってるんです」

 へえー、これが魔結石の使い方なんだ。魔法を使える石ってやつだね。あのヒュドラの魔結石もこんな風に使われるのか。

 あ、じゃあ・・・、

「ねえそれって売ったら高かったりする? 」
「そうですね・・・。大ければ大きいほど高くなりますが、0.3ロージほどでだいたい七千から八千ベルです。状態の良いものだったら一万ベルするときもあります。」
「そんな高いの? 」
「もちろん。魔獣を倒すことでしか採取できないですし、なにより生活が一気に便利になりますからね。特定の魔獣からしか採取できないものとかはさらに希少価値が上がりますよ」
「まじか・・・」

 あの石ころどもにそこまで価値があったとは・・・。これはいい話を聞いたな。

 森暮らしの間に採取した大量魔結石が今手元にあるのだ。今度街に出た時にでも換金に行こう。ふっふっふ、これで私金持ちだぞ・・・!
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