45 / 79
45
しおりを挟む
「あ、お姉さん」
「シ、シエルちゃん。これはどういう・・・」
「んー・・・、なんでもないよ! 」
そういえば、今日はケンカしに来たんじゃなかったんだった。お姉さんの登場で少し気持ちも収まった。今日はこれ以上手を出さないでおくか。
「ねえ、あなたたち。最近よく荒らしに来てたわよね? まさか、シエルちゃんを襲ったの? 」
信じられないといった風に口元を押さえるお姉さん。
明らかにボコボコにされて床に倒れているのは向こうなのに、なんという贔屓発言・・・。こんなにも強烈な視覚情報があるというのに、それすらもねじ曲げてしまうとは。第一印象大事。
「は、何言って・・・」
向こうも「この状況見てその発言か!? 」とでも言いたげな顔をしているが、ここは丸く収めるためにも、これ幸いとお姉さんの言葉に乗っからせてもらう。
「あの人たちが急にそこを退けと怒鳴ってきて・・・」
「それで? なにかされたの? 」
相変わらず、はるかに重症のあっちよりも、傷ひとつないこっちばかりを心配してくれる。
「黙ってたら突然黎月を掴もうとしてきたんです。それを止めたら殴られそうになって思わず・・・」
本当は黎月を掴もうとした段階でブチ切れてたんだけどね。殴られそうになったのはそのついで。
「そうだったの。従魔を守ろうとしたのね、偉いわ。もう大丈夫よ」
そう言って、お姉さんは頭を撫でてくれた。後ろでハクハクと何か言いたそうにこっちを指差している人がいるが、気にしない。
別に嘘は言ってないよ?
「お、おまえ、なに言ってんだ! そっちが襲ってきたんだろうが! 」
「そうだ、貴様のせいで俺たちはこんな姿になったんだぞ! 嘘つくな! 」
「嘘ついてません! 」
男たちの言葉に被せるようにそう言うと、
「おい! お前らが先に怒鳴りつけたのを俺は見たからな!? 」
「まさか子供相手にまで殴りかかるとは思わなかったわ! うちのメンバーに突っかかった時もそうだったけど、躊躇いもなく手を出すなんて! 」
「往生際が悪すぎるんじゃないか? 散々バカにして脅し文句をかけたのはどっちだよ!? しかもその子がずっと黙ってるのをいいことに、好き放題だったよな? 先週俺がそこで解体を頼んだ時も・・・」
「ひどい暴言を吐いているのを私たちも聞いてましたよ」
周りで見ていた人たち、そしていつの間にか再びカウンターに戻ってきていた受付の人たちも加勢してくれた。よほど胸糞悪い思いをしていたのか、他の件まで引っ張り出されている。
「あの人たちはお姉さんたちがなんとかしておくから、上に行きましょう。サブマス、ここのギルドで二番目に偉い人がシエルちゃんを呼んでいるの」
「わかりました」
またお偉いさん案件かよ・・・。内心少しテンションが下がっていても、顔には出さないのがプロである。
「ねえ誰か! この人たちをロープで巻いてくれない? 」
お姉さんもまあまあな立場にいる人みたいで、テキパキと声を飛ばしている。お姉さんが反対側を向いて指示を出している隙に男たちを振り向く。
びくっとした四人に、できるだけ小さな声で四人にだけよく聞こえるように話した。
「その腕はあと三時間もあれば十分溶けると思うよ。その後のことは知らない」
わざと嘲笑うかのような言い方を使い、屈辱心と恐怖を煽る。
「今はこれ以上はしない。けど、喧嘩を売る相手はよく考えろ。もしお前らの指が一本でも黎月に触れていたら、これでは済まないからな? 」
声を低くして言うと、まだ気絶している一人を除く三人は、脳震盪を起こしそうなほどコクコクと大きく運づいていた。
「じゃあサブマスを待たせちゃってるし、早く行こうか。私に着いてきてね、こっちよ」
「あ、はい! 」
「シ、シエルちゃん。これはどういう・・・」
「んー・・・、なんでもないよ! 」
そういえば、今日はケンカしに来たんじゃなかったんだった。お姉さんの登場で少し気持ちも収まった。今日はこれ以上手を出さないでおくか。
「ねえ、あなたたち。最近よく荒らしに来てたわよね? まさか、シエルちゃんを襲ったの? 」
信じられないといった風に口元を押さえるお姉さん。
明らかにボコボコにされて床に倒れているのは向こうなのに、なんという贔屓発言・・・。こんなにも強烈な視覚情報があるというのに、それすらもねじ曲げてしまうとは。第一印象大事。
「は、何言って・・・」
向こうも「この状況見てその発言か!? 」とでも言いたげな顔をしているが、ここは丸く収めるためにも、これ幸いとお姉さんの言葉に乗っからせてもらう。
「あの人たちが急にそこを退けと怒鳴ってきて・・・」
「それで? なにかされたの? 」
相変わらず、はるかに重症のあっちよりも、傷ひとつないこっちばかりを心配してくれる。
「黙ってたら突然黎月を掴もうとしてきたんです。それを止めたら殴られそうになって思わず・・・」
本当は黎月を掴もうとした段階でブチ切れてたんだけどね。殴られそうになったのはそのついで。
「そうだったの。従魔を守ろうとしたのね、偉いわ。もう大丈夫よ」
そう言って、お姉さんは頭を撫でてくれた。後ろでハクハクと何か言いたそうにこっちを指差している人がいるが、気にしない。
別に嘘は言ってないよ?
「お、おまえ、なに言ってんだ! そっちが襲ってきたんだろうが! 」
「そうだ、貴様のせいで俺たちはこんな姿になったんだぞ! 嘘つくな! 」
「嘘ついてません! 」
男たちの言葉に被せるようにそう言うと、
「おい! お前らが先に怒鳴りつけたのを俺は見たからな!? 」
「まさか子供相手にまで殴りかかるとは思わなかったわ! うちのメンバーに突っかかった時もそうだったけど、躊躇いもなく手を出すなんて! 」
「往生際が悪すぎるんじゃないか? 散々バカにして脅し文句をかけたのはどっちだよ!? しかもその子がずっと黙ってるのをいいことに、好き放題だったよな? 先週俺がそこで解体を頼んだ時も・・・」
「ひどい暴言を吐いているのを私たちも聞いてましたよ」
周りで見ていた人たち、そしていつの間にか再びカウンターに戻ってきていた受付の人たちも加勢してくれた。よほど胸糞悪い思いをしていたのか、他の件まで引っ張り出されている。
「あの人たちはお姉さんたちがなんとかしておくから、上に行きましょう。サブマス、ここのギルドで二番目に偉い人がシエルちゃんを呼んでいるの」
「わかりました」
またお偉いさん案件かよ・・・。内心少しテンションが下がっていても、顔には出さないのがプロである。
「ねえ誰か! この人たちをロープで巻いてくれない? 」
お姉さんもまあまあな立場にいる人みたいで、テキパキと声を飛ばしている。お姉さんが反対側を向いて指示を出している隙に男たちを振り向く。
びくっとした四人に、できるだけ小さな声で四人にだけよく聞こえるように話した。
「その腕はあと三時間もあれば十分溶けると思うよ。その後のことは知らない」
わざと嘲笑うかのような言い方を使い、屈辱心と恐怖を煽る。
「今はこれ以上はしない。けど、喧嘩を売る相手はよく考えろ。もしお前らの指が一本でも黎月に触れていたら、これでは済まないからな? 」
声を低くして言うと、まだ気絶している一人を除く三人は、脳震盪を起こしそうなほどコクコクと大きく運づいていた。
「じゃあサブマスを待たせちゃってるし、早く行こうか。私に着いてきてね、こっちよ」
「あ、はい! 」
304
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる