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それからひたすら罵詈雑言を並べ立てている四人だけど、一番よく口が回るのはあのひょろがり。どうやったら人の神経を逆撫でできるかよくわかっている。
「にしても獣クセェなぁ? 」
「そいつのせいじゃねぇの? 懲らしめてやらねぇとなぁ!? 」
そう言って、中肉中背の二人のうち一人が、黎月を鷲掴みにしようと手を伸ばす。
ぶちっと頭の中で何かが切れた音がした。
「・・・っざけんなよ」
ボソッとした私の呟きを何人が聞き取っただろうか。
「このクソ、があ? 」
黎月の真上まで来た手が空中で止まり、異変に気づいたそいつは、自分の手を見た瞬間狂ったように叫びだした。
「う、うわああああああ! 手が! 手が! 俺の手が! 」
そいつの手は凍りついていて、傍から見てもはっきりとわかるほどの氷が皮膚を覆っている。すでに手首を通り越した氷はまるで生き物のようにゆっくりと肘に向かって登っていく。
当然私の仕業だよ? 空気中の湿気を少々利用させてもらってね。
「やめろ! なんだよこいつ! 」
必死に氷を剥がそうとするも、すでに皮膚とくっついて痛くなるだけだ。
「お、おい! 助けてくれ! おまえ魔法使えたよな!? 」
「もうやってるだろうが! 」
「もっと早くできねぇのかよ!? 」
「俺の技量ではこれが限界だ! これ以上強するってんなら直接焼くしかねぇんだよ! 氷どころか腕もなくなるからな!? 」
慌てて仲間の元に走って助けを求めるも、氷はなかなか溶けない。どうやらあのひょろがりは魔法使いだったらしい。
「あなた今黎月を掴もうとしたよね? 」
自分でも驚くほどの低い声が出た。向こうがぎゃあぎゃあと騒いでいるにも関わらず、私の声はよく通った。
「何様のつもり? ちょっと人のこと馬鹿にしすぎじゃない? 」
「貴様がやったのか! ただで済むと思うなよ! 兄貴! あいつを懲らしめてくだせぇ! 」
「任せろ。おいガキ、あんま調子に乗んじゃねぇぞ? 」
バキボキと見せつけるように拳を鳴らして立ちはだかる大男と私の距離は、たったの三歩分。
これぐらいの距離、私にとったらあってないようなものだ。
「オラァ! 」
男が拳振り翳した。
「きゃあ! 」
「やめろ! 」
周りを囲んでいる人たちの中から悲鳴と共にその腕が振り下ろされ、
「遅い」
「あ゙? 」
空を切った。
男が拳を振り下ろす間に床を蹴って懐に潜り込み、男の襟を掴んでいたのだ。
「!? なん・・・」
「もっと距離を取らないと。詰められるのは一瞬だよ」
襟を掴んでるとは言っても、体格差のせいで私の体は宙に浮いている。襟を掴むために蹴り上げたときの落下の勢いを利用して、男の鳩尾を狙って右足を繰り出した。
「ガハッ! 」
蹴ると同時に手を離すと、男は見事に後ろへ吹っ飛んでいっく。自分の体も反動で後ろに飛ぶが、開いていた左足で着地した。
「隙が多すぎるよ。こんなんでよく今まで生き残れたね」
暗に「お前らでも生き残れるような低ランクの仕事ばっか受けてきたんだな」と含めたことに何人が気づいただろうか。
人混みに混じっていた護衛の人たちの唖然とした顔が目に入る。この世界に来てから、ここまでブチギレたのって初めてじゃない?
「き、貴様あぁ! 」
「あ、兄貴! おまえ! 」
自分たちの兄貴がたかがこんなチビに負けたのが気に食わなかったのか、残ったひょろがり以外の二人が殴りかかってきた。
この人ら、本当に殴ることしかできないの? さっきからどいつもこいつも。
二つの拳を体を下げて躱し、一人には掌底を食らわして上に吹っ飛ばせる。
「ゴッ! 」
反対側から来たもう一人には、体を上げたタイミングで回し蹴りを食らわせ、その兄貴とやらの上に落ちるようようにしてやった。
「グハ! 」
ちなみに回し蹴りを食らったのが、さっき黎月を掴もうとしたほうだ。
まだ腕が凍ってるっていうのに、よくやるよ。
「一回見たじゃん、本当に学ばないんだね」
そういうと、まだ意識のあった兄貴の上に倒れている方が体を起こして兄貴の上から這って下り、慌てて腕を元通りにしてもらうように助けを求め始めた。
「た、助けてくれ! 俺の腕を元通りにしてくれ! もう馬鹿にはしないから! お願いだ! 俺はまだ腕を失いたくはない! 」
さっきまで温めてたひょろがりは、頭を抱えて震えながら蹲っている。こいつ、本当に小物だな。
「いやだね。別に解けないわけじゃないから、しばらく待って見たら? 何日かかかるかもしれないけど」
「た、助けてくれ! 頼む! 」
「黎月を掴もうとした分際で何いってんの? 」
さてどうしてやろうか。足も凍らせてやるか?
そう考えていたその時。
「今シエルちゃんのこと登録しに行ったんだけど、サブマスが・・・ってえ!? なにこれ? どういう状況? 」
書類を目を落としながら、ベレー帽のお姉さんが戻ってきた。
顔を上げた瞬間目の前に広がる異様な光景に、きれいな二度見をしていた。
「にしても獣クセェなぁ? 」
「そいつのせいじゃねぇの? 懲らしめてやらねぇとなぁ!? 」
そう言って、中肉中背の二人のうち一人が、黎月を鷲掴みにしようと手を伸ばす。
ぶちっと頭の中で何かが切れた音がした。
「・・・っざけんなよ」
ボソッとした私の呟きを何人が聞き取っただろうか。
「このクソ、があ? 」
黎月の真上まで来た手が空中で止まり、異変に気づいたそいつは、自分の手を見た瞬間狂ったように叫びだした。
「う、うわああああああ! 手が! 手が! 俺の手が! 」
そいつの手は凍りついていて、傍から見てもはっきりとわかるほどの氷が皮膚を覆っている。すでに手首を通り越した氷はまるで生き物のようにゆっくりと肘に向かって登っていく。
当然私の仕業だよ? 空気中の湿気を少々利用させてもらってね。
「やめろ! なんだよこいつ! 」
必死に氷を剥がそうとするも、すでに皮膚とくっついて痛くなるだけだ。
「お、おい! 助けてくれ! おまえ魔法使えたよな!? 」
「もうやってるだろうが! 」
「もっと早くできねぇのかよ!? 」
「俺の技量ではこれが限界だ! これ以上強するってんなら直接焼くしかねぇんだよ! 氷どころか腕もなくなるからな!? 」
慌てて仲間の元に走って助けを求めるも、氷はなかなか溶けない。どうやらあのひょろがりは魔法使いだったらしい。
「あなた今黎月を掴もうとしたよね? 」
自分でも驚くほどの低い声が出た。向こうがぎゃあぎゃあと騒いでいるにも関わらず、私の声はよく通った。
「何様のつもり? ちょっと人のこと馬鹿にしすぎじゃない? 」
「貴様がやったのか! ただで済むと思うなよ! 兄貴! あいつを懲らしめてくだせぇ! 」
「任せろ。おいガキ、あんま調子に乗んじゃねぇぞ? 」
バキボキと見せつけるように拳を鳴らして立ちはだかる大男と私の距離は、たったの三歩分。
これぐらいの距離、私にとったらあってないようなものだ。
「オラァ! 」
男が拳振り翳した。
「きゃあ! 」
「やめろ! 」
周りを囲んでいる人たちの中から悲鳴と共にその腕が振り下ろされ、
「遅い」
「あ゙? 」
空を切った。
男が拳を振り下ろす間に床を蹴って懐に潜り込み、男の襟を掴んでいたのだ。
「!? なん・・・」
「もっと距離を取らないと。詰められるのは一瞬だよ」
襟を掴んでるとは言っても、体格差のせいで私の体は宙に浮いている。襟を掴むために蹴り上げたときの落下の勢いを利用して、男の鳩尾を狙って右足を繰り出した。
「ガハッ! 」
蹴ると同時に手を離すと、男は見事に後ろへ吹っ飛んでいっく。自分の体も反動で後ろに飛ぶが、開いていた左足で着地した。
「隙が多すぎるよ。こんなんでよく今まで生き残れたね」
暗に「お前らでも生き残れるような低ランクの仕事ばっか受けてきたんだな」と含めたことに何人が気づいただろうか。
人混みに混じっていた護衛の人たちの唖然とした顔が目に入る。この世界に来てから、ここまでブチギレたのって初めてじゃない?
「き、貴様あぁ! 」
「あ、兄貴! おまえ! 」
自分たちの兄貴がたかがこんなチビに負けたのが気に食わなかったのか、残ったひょろがり以外の二人が殴りかかってきた。
この人ら、本当に殴ることしかできないの? さっきからどいつもこいつも。
二つの拳を体を下げて躱し、一人には掌底を食らわして上に吹っ飛ばせる。
「ゴッ! 」
反対側から来たもう一人には、体を上げたタイミングで回し蹴りを食らわせ、その兄貴とやらの上に落ちるようようにしてやった。
「グハ! 」
ちなみに回し蹴りを食らったのが、さっき黎月を掴もうとしたほうだ。
まだ腕が凍ってるっていうのに、よくやるよ。
「一回見たじゃん、本当に学ばないんだね」
そういうと、まだ意識のあった兄貴の上に倒れている方が体を起こして兄貴の上から這って下り、慌てて腕を元通りにしてもらうように助けを求め始めた。
「た、助けてくれ! 俺の腕を元通りにしてくれ! もう馬鹿にはしないから! お願いだ! 俺はまだ腕を失いたくはない! 」
さっきまで温めてたひょろがりは、頭を抱えて震えながら蹲っている。こいつ、本当に小物だな。
「いやだね。別に解けないわけじゃないから、しばらく待って見たら? 何日かかかるかもしれないけど」
「た、助けてくれ! 頼む! 」
「黎月を掴もうとした分際で何いってんの? 」
さてどうしてやろうか。足も凍らせてやるか?
そう考えていたその時。
「今シエルちゃんのこと登録しに行ったんだけど、サブマスが・・・ってえ!? なにこれ? どういう状況? 」
書類を目を落としながら、ベレー帽のお姉さんが戻ってきた。
顔を上げた瞬間目の前に広がる異様な光景に、きれいな二度見をしていた。
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