チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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 次の日。私は町に出ていた。せっかく王都に来たのに、難しい話ばかり聞かされて、まだ全然観光できてないのだ。

「すごい人! 」
「王都だからな、それなりには賑わうぞ」

 朝イチにレングさんと手合わせをしてきて、少しお腹が空いている。あの人、まだ目覚めきってない頭で食堂で朝ごはん食べてたら、すかさず隣に座って「昨日の約束、まだ覚えてますか? 」だよ。一瞬で目ぇ覚めたわ。

「む、ここは食べ物通りだな」
「ここを抜けた先にあるらしいよ」

 本日の付き添いは黎月。常夜は寝たいと言って朝ごはんだけ食べて部屋に戻っていき、最近物理的に思いっきり羽を伸ばせていない紅羽は、ストレス発散を兼ねた運動で狩りに行っている。白氷はいつの間にか団舎で飼われている馬たちと仲良くなっていて、たった三日の間に何があったのかは知らないが、兄貴ポジションに収まっている。今日はそっちに構いに行ってて不在なのだ。
 結果、特にやることもなく暇な黎月が着いてくることになった。

 そこら辺に神獣が歩いていたらダメなんじゃ・・・? とは思ったけど、貴族街でなければ直接黎月を見たことがある人もいないはずだから、大きくなりすぎなければ従魔という話で通せるとのこと。今は大きめの大型犬と同じくらいのサイズになってもらっている。


「あ、焼き鳥! 」
「あれはミルバーチだな。通称ミル串だ」

 ズラッと視界を侵食する食べ物屋台の中でも、特に目を引かれた一店。
 じゅーっと金網の上で焼ける串焼き。コンビニの二倍以上の長さで、お肉一つ一つが大きい。実質四倍以上のボリューム感だ。

「おっちゃん!ミル串二本! 」
「おうよ! お嬢ちゃん、うちのミル串を選ぶなんて目が高いな。一本五ベルで合計十ベルだ! どの味付けで? 」

 味付けは塩、レモン胡椒、ガーリック、ホットチリペッパーの四つ。どれも迷うラインナップだ。がっつり食べた気分になれるガーリックにするとしよう! 黎月はどうなんだろう。犬は辛いの食べちゃだめって言うしなあ。

「我はホットチリペッパーじゃなきゃなんでもいいぞ」
「やっぱり犬は辛いの苦手か~」
「む。おい、我は犬ではないぞ」
「はいはい。じゃあ塩とガーリックで! 」
「塩ひとつとガーリックひとつだな。お嬢ちゃん、そのオオカミ喋れるのか? 」

 店主は迷いのない手つきで肉を裏返して、パッパッパッと調味料をかけながらきいてきた。

「あ、うん。ちょっとだけ・・・」

 やばい、ボロが・・・。

「へえ、そりゃあ珍しいな! 最近従魔狩りが流行っているようだしな、気をつけるんだぞ」
「わかった、ありがとう」

 よかった、店主があまり詳しくない人で。

「ほれ、塩とガーリックだ! 」
「ありがとう! 」

 熱々の焼き立ては、見てるだけで涎が出てきて、漂ってくるこのガーリックの匂いがもうたまらない。一口齧ればジュワッと溢れる肉汁と共に広がるニンニクの香り。ガーリックと鶏肉というこの組み合わせがもう素晴らしい!

「やはり久々に食べると美味いな」

 黎月は自分で串を持てないため、私が片手に持っているのに齧り付いている。まあまあ量はあるはずなのに、どんどんいける。黎月は三、四口ぐらいでペロリと平らげてしまい、器用に足で口元の汚れを拭っている。

「なあ、もう一本ずつ買わないか? 」
「もう一本? ちょっと待ってね、お金は・・・全然足りるね、もう二本買うか! 」

 もらったお小遣いを確認してから、もう一度同じ店の前に行く。

「おっちゃん、もう二本もらっていい? 」
「お! まだ買うのか? 」
「うん、うちのオオカミが気に入ったみたい」
「そりゃあ嬉しいな! 今後もご贔屓に、なんちゃってな。味はどうするんだ? 」
「レモン胡椒とホットチリペッパーで! 」
「あい承知! 十ベルだ」
「はい」

 ちなみにこのお小遣いは、朝町に行くと聞きつけたクラックさんからもらったもの。てっきりアルシュさんやクラックさんのポケットマネーから出ているもんだと思って使うのに遠慮があったけど、今日聞いたら貴賓接待費っていう国の予算から出ていたらしい。エウロスで買った服や靴の分の値段も、アルシュさんがそこからしっかり引き落とさせたらしく、まだまだ有り余っているらしいから、これからはバンバン使っていくつもりです!

「オオカミに辛いのは大丈夫なのか? 犬に辛いものは与えちゃダメっていうだろ? 」

 さっき私が考えてたことそのままそっくりの発言に思わず笑ってしまった。

「ぷふっ。いや、やっぱりダメみたいだから、ホットチリは私の分だよ」
「へえ、お嬢ちゃん辛いもんもいけるのか。すごいな! 」

 ふろ背中に視線を感じた。

 誰か見てる? ・・・ああ。

 目を向けた先に、何人かの男がいた。決して不審者ではなくて、私の護衛だ。
 王宮から派遣されてきた人たちで、お願いして目立たないようにしてもらっている。私自身それなりに強いし、黎月もいるから大丈夫だとはいっても、王宮側にも何かあった時の責任というものがあるらしく、護衛なしはダメだと言われた。お互い渋りまくった挙句、分散して尾行するぐらいならと双方妥協したのだ。

 ぞろぞろ護衛を引き連れての町観光なんてたまったもんじゃない。

「ほら、レモン胡椒とホットチリペッパーだ! ありがとな! 」
「ありがとう! 」

 黎月はすでに鼻をクンクンさせながら、期待した目で待っていて、わかってるのわかってないのか尻尾がブンブン振られている。そんなんだから犬とか言われちゃうんだって・・・。


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