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カラカラと馬車に揺られながら、景色が流れていくのを眺める。スピードで言ったら安全運転のバイクくらいの速さだ。
「う・・・」
「大丈夫ですか? 」
向かいに座るアルシュさんとクラックさんが、心配そうな顔をしてこっちを見ている。
「だ、大丈夫です・・・うぅ・・・」
お世辞にも良いとは言えない乗り心地に、絶賛馬車酔い中の私ことシエルです。
いつか絶対酔わない馬車を開発してやる・・・!
ああ、風に吹かれながら涼しい顔をしている御者の人が羨ましい・・・。なんでこれだけチートじゃないんだ!
「まさかティリアネ様の加護にこんな落とし穴があるとは・・・」
「大丈夫? 顔色が悪いわよ」
「もういっそ馬に乗りたい・・・」
「我に乗るか? 」
大っぴらに見られるのはまずいからと、渋々ミニミニサイズになってくれた白氷が隣に座っている。
「それすると、小さくなってもらった意味がなくなっちゃうよ」
「それはそうだが・・・」
そういえば、馬が座るときは死ぬとき、みたいな話聞いたことあるけど、白氷なら大丈夫か。
「大丈夫だよ、もう着くみたいだし」
窓から顔を出したアルシュさんとクラックさんが門番の人と喋ったり書類見せたりしている。私も呼ばれて顔を出した。
そうして王宮の門を通過し、いよいよ中へ。
「では私はここまでで」
入ってすぐの庭園のような所で降ろされた。庭園とはいっても、たぶんサッカーコートと同じくらいの広さがある。さすが王様の住む場所。
ここからどうするんだろうと思って辺りを見回すと、建物の中から一人のメイドさんが歩いてくるのが見えた。
クラシカルな感じの、裾が長い白と黒のメイドドレスを着ていて、髪がきっちりとした高いお団子でまとめられている。ピクリとも動かない表情はプロだ。
「ここからは私めがご案内させていただきます」
きれいな所作で一礼をし、先頭を歩き出すメイドさん。私たちはその後ろを着いていく。神獣組も気を遣ってか、静かだ。
これでもかという広い庭園を抜け、ようやく建物内に入った。
廊下の床には赤いカーペットが敷かれていて、一定間隔で置かれている花瓶には色とりどりの花が飾ってある。
何人か他のメイドさんもいて、よく見たら肩紐にフリルが付いているメイドさんと付いていないメイドさんがいる。胸にあるブローチの色もちょっとずつ違うようだ。
「ねえ、アルシュさん。あのメイド服の違いって・・・」
「肩紐にフリルが付いている方たちはメイドではなく、女官なのです」
「女官? 」
「はい。メイドたちが掃除や雑用をする係だとすると、女官は主の仕事の補佐をする立場にあたります。ちなみにブローチはその人の階級と所属を表しています」
「女官の方たちは女官であることを誇りに思っているので、間違ってもメイドなどと呼ばないように気をつけてください。・・・めちゃくちゃ怒りますので」
最後の一言はクラックさんがこそっと追加してきた。なんだかえらい実感がこもっているけど、奥さん女官だったりする?
「団長夫妻は今はおしどり夫婦ですが、かつては団長がメイドと呼び間違えたことで振られたこともあったんですよ」
しかもしっかりミスってたようだ。二の舞いにならないようにしないと。
そうこう話しながら歩いているうちに、一際豪華な扉の前についた。わざわざ門番さんが二人がかりで警備している。
「こちらが謁見の間になります」
メイドさ、・・・じゃなくて女官さんがこっちに一礼してから、その重そうな扉を引き開けた。
「う・・・」
「大丈夫ですか? 」
向かいに座るアルシュさんとクラックさんが、心配そうな顔をしてこっちを見ている。
「だ、大丈夫です・・・うぅ・・・」
お世辞にも良いとは言えない乗り心地に、絶賛馬車酔い中の私ことシエルです。
いつか絶対酔わない馬車を開発してやる・・・!
ああ、風に吹かれながら涼しい顔をしている御者の人が羨ましい・・・。なんでこれだけチートじゃないんだ!
「まさかティリアネ様の加護にこんな落とし穴があるとは・・・」
「大丈夫? 顔色が悪いわよ」
「もういっそ馬に乗りたい・・・」
「我に乗るか? 」
大っぴらに見られるのはまずいからと、渋々ミニミニサイズになってくれた白氷が隣に座っている。
「それすると、小さくなってもらった意味がなくなっちゃうよ」
「それはそうだが・・・」
そういえば、馬が座るときは死ぬとき、みたいな話聞いたことあるけど、白氷なら大丈夫か。
「大丈夫だよ、もう着くみたいだし」
窓から顔を出したアルシュさんとクラックさんが門番の人と喋ったり書類見せたりしている。私も呼ばれて顔を出した。
そうして王宮の門を通過し、いよいよ中へ。
「では私はここまでで」
入ってすぐの庭園のような所で降ろされた。庭園とはいっても、たぶんサッカーコートと同じくらいの広さがある。さすが王様の住む場所。
ここからどうするんだろうと思って辺りを見回すと、建物の中から一人のメイドさんが歩いてくるのが見えた。
クラシカルな感じの、裾が長い白と黒のメイドドレスを着ていて、髪がきっちりとした高いお団子でまとめられている。ピクリとも動かない表情はプロだ。
「ここからは私めがご案内させていただきます」
きれいな所作で一礼をし、先頭を歩き出すメイドさん。私たちはその後ろを着いていく。神獣組も気を遣ってか、静かだ。
これでもかという広い庭園を抜け、ようやく建物内に入った。
廊下の床には赤いカーペットが敷かれていて、一定間隔で置かれている花瓶には色とりどりの花が飾ってある。
何人か他のメイドさんもいて、よく見たら肩紐にフリルが付いているメイドさんと付いていないメイドさんがいる。胸にあるブローチの色もちょっとずつ違うようだ。
「ねえ、アルシュさん。あのメイド服の違いって・・・」
「肩紐にフリルが付いている方たちはメイドではなく、女官なのです」
「女官? 」
「はい。メイドたちが掃除や雑用をする係だとすると、女官は主の仕事の補佐をする立場にあたります。ちなみにブローチはその人の階級と所属を表しています」
「女官の方たちは女官であることを誇りに思っているので、間違ってもメイドなどと呼ばないように気をつけてください。・・・めちゃくちゃ怒りますので」
最後の一言はクラックさんがこそっと追加してきた。なんだかえらい実感がこもっているけど、奥さん女官だったりする?
「団長夫妻は今はおしどり夫婦ですが、かつては団長がメイドと呼び間違えたことで振られたこともあったんですよ」
しかもしっかりミスってたようだ。二の舞いにならないようにしないと。
そうこう話しながら歩いているうちに、一際豪華な扉の前についた。わざわざ門番さんが二人がかりで警備している。
「こちらが謁見の間になります」
メイドさ、・・・じゃなくて女官さんがこっちに一礼してから、その重そうな扉を引き開けた。
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