チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

文字の大きさ
上 下
30 / 79

30

しおりを挟む
 カラカラと馬車に揺られながら、景色が流れていくのを眺める。スピードで言ったら安全運転のバイクくらいの速さだ。

「う・・・」
「大丈夫ですか? 」

 向かいに座るアルシュさんとクラックさんが、心配そうな顔をしてこっちを見ている。

「だ、大丈夫です・・・うぅ・・・」


 お世辞にも良いとは言えない乗り心地に、絶賛馬車酔い中の私ことシエルです。


 いつか絶対酔わない馬車を開発してやる・・・! 

 ああ、風に吹かれながら涼しい顔をしている御者の人が羨ましい・・・。なんでこれだけチートじゃないんだ!

「まさかティリアネ様の加護にこんな落とし穴があるとは・・・」
「大丈夫? 顔色が悪いわよ」
「もういっそ馬に乗りたい・・・」
「我に乗るか? 」

 大っぴらに見られるのはまずいからと、渋々ミニミニサイズになってくれた白氷が隣に座っている。

「それすると、小さくなってもらった意味がなくなっちゃうよ」
「それはそうだが・・・」

 そういえば、馬が座るときは死ぬとき、みたいな話聞いたことあるけど、白氷なら大丈夫か。


「大丈夫だよ、もう着くみたいだし」

 窓から顔を出したアルシュさんとクラックさんが門番の人と喋ったり書類見せたりしている。私も呼ばれて顔を出した。

 そうして王宮の門を通過し、いよいよ中へ。


「では私はここまでで」

 入ってすぐの庭園のような所で降ろされた。庭園とはいっても、たぶんサッカーコートと同じくらいの広さがある。さすが王様の住む場所。

 ここからどうするんだろうと思って辺りを見回すと、建物の中から一人のメイドさんが歩いてくるのが見えた。
 クラシカルな感じの、裾が長い白と黒のメイドドレスを着ていて、髪がきっちりとした高いお団子でまとめられている。ピクリとも動かない表情はプロだ。


「ここからは私めがご案内させていただきます」

 きれいな所作で一礼をし、先頭を歩き出すメイドさん。私たちはその後ろを着いていく。神獣組も気を遣ってか、静かだ。

 これでもかという広い庭園を抜け、ようやく建物内に入った。

 廊下の床には赤いカーペットが敷かれていて、一定間隔で置かれている花瓶には色とりどりの花が飾ってある。


 何人か他のメイドさんもいて、よく見たら肩紐にフリルが付いているメイドさんと付いていないメイドさんがいる。胸にあるブローチの色もちょっとずつ違うようだ。

「ねえ、アルシュさん。あのメイド服の違いって・・・」
「肩紐にフリルが付いている方たちはメイドではなく、女官なのです」
「女官? 」
「はい。メイドたちが掃除や雑用をする係だとすると、女官は主の仕事の補佐をする立場にあたります。ちなみにブローチはその人の階級と所属を表しています」
「女官の方たちは女官であることを誇りに思っているので、間違ってもメイドなどと呼ばないように気をつけてください。・・・めちゃくちゃ怒りますので」

 最後の一言はクラックさんがこそっと追加してきた。なんだかえらい実感がこもっているけど、奥さん女官だったりする?

「団長夫妻は今はおしどり夫婦ですが、かつては団長がメイドと呼び間違えたことで振られたこともあったんですよ」

 しかもしっかりミスってたようだ。二の舞いにならないようにしないと。


 そうこう話しながら歩いているうちに、一際豪華な扉の前についた。わざわざ門番さんが二人がかりで警備している。


「こちらが謁見の間になります」


 メイドさ、・・・じゃなくて女官さんがこっちに一礼してから、その重そうな扉を引き開けた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。 妹のマリアーヌは王太子の婚約者。 我が公爵家は妹を中心に回る。 何をするにも妹優先。 勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。 そして、面倒事は全て私に回ってくる。 勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。 両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。 気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。 そう勉強だけは…… 魔術の実技に関しては無能扱い。 この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。 だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。 さあ、どこに行こうか。 ※ゆるゆる設定です。 ※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

処理中です...