26 / 79
26
しおりを挟む市役所で戸籍登録してからはいつも通りの日々を暮らし週末になった。
この一週間、茶羽と黒羽は毎日お手伝いをしてくれる、一昨日は庭の片づけをして草むしりをして、ネットで購入した滑り台などの遊具を設置した、本来は室内で遊ぶものみたいだったが、そこそこ大きい物だったため庭に置いて固定した。
二人は外で遊べるのが楽しいのか昨日はお手伝いと勉強をした後、暗くなるまで遊んでいた。
勉強もひらがなのあ行からさ行迄書けるようになった、読むだけならほぼすべてのひらがなを読めるようになっていた。
「覚えるの早いな、これも猫人犬人特有なのかな?、そろそろ簡単な計算とかも教えても良いかな。」
などと感心しながらも、内心では『うちの子は天才かも』と考えていた。
達也本人は気づいていなかったが傍から見たらただの親バカまっしぐらである。
今日も朝食が終わると洗濯と風呂掃除をするため洗面所や風呂場でワイワイと楽しそうにお手伝いをしている、毎日隠れて見ていたのだが、日替わりで洗濯と掃除を交代にやっているようだった。
今日は洗濯が茶羽、風呂掃除が黒羽の番みたいだ。
隠れて見ていて終わりそうなときに急いでリビングのパソコンの前に座り二人が戻ってくるのを待つ。
二人がリビングに来ると黒羽は濡れてびっしょりになっている、タオルと着替えを持ってくると、ドライヤーで黒羽の髪を乾かす、終わると茶羽が前に座る、茶羽は特に濡れていないのだが乾かすふりをしてドライヤーの風を当ててあげる、これが毎朝お手伝い後のいつもの行動になりつつある。
それが終わると洗濯が終わるまでひらがなドリルで勉強をする、茶羽と黒羽は新しい文字を覚えてそれが書けるようになるのが楽しいみたいで、お互い今日は私が早く覚えると張り切っている。
俺は二人の前に座って一文字づつ教えていく、なんか先生になった気になって楽しい。
洗濯の終わりを告げる音が聞こえると二人は洗面所に行き洗濯物を抱えて帰ってくるので各自の服をより分ける。
多少いびつだが自分の服は畳めるようになっていた。
洗濯物を片付けていると玄関でチャイムが鳴った、多分健治と香織だなと思って玄関を開ける。
「こんちわ、茶羽ちゃん黒羽ちゃん元気だったか?」
「こんにちわ、おじゃましますね。」
「さうはげんき」
「くうもげんき」
健治と香織が挨拶しながら茶羽と黒羽をなでていた、二人も尻尾をゆらゆらさせて喜んでいた。
「タイミングいいな、そろそろ昼にしようと思ってたんだ、二人ともまだだろ?」
「そうだな、ごちそうになるわ、というかそのつもりでこの時間についたんだがな。」
俺の言葉に健治はそう言うと茶羽世黒羽を抱き上げリビングに入っていく。
香織がキッチンに行こうとしてたので止めて「二人と遊んでていいですよ」とリビングに戻した。
健治の性格上一緒に昼を食べるだろうと思っていたので、下ごしらえしてあった、今日の昼はチキンステーキとサラダ、茶羽と黒羽は軽く塩を振っただけ、俺たちは塩コショウにすり下ろしたにんにくを揉み込んでいる。
茶羽と黒羽のお肉を焼いてから俺らのお肉も焼く、するとキッチンの入り口で茶羽と黒羽が覗いているのに気づいて、手招きして茶羽と黒羽のチキンステーキが乗ったお皿を渡すと、笑顔で運んでいった。
俺は残った皿とサラダの入ったボウルをリビングに持って行く。
昼飯が終わると茶羽と黒羽は絵本をもって香織に読んでとせがんでいた。
二人を香織に任せて健治とパソコンで各サイトを確認する。
「まだ人化が起こって一週間だけど色んな情報出てるんだな。」
健治は掲示板や情報サイトを見ながら情報の量に驚いていた。
毎日確認している俺からしたら特に目新しい情報はなかったが、健治には初めて知る情報などもあって、モニターに齧りついていた。
しばらくパソコンやスマホを見ていると、香織が眠ってしまった茶羽と黒羽を抱えてきた。
二階のベットに寝かせると、リビングで健治と香織に戸籍謄本と二人の住民票を見せる。
「本当に登録で来たんだな、おめでとう。」
「茶羽ちゃんと黒羽ちゃん養子になってるわね、おめでとうございます。」
「二人ともありがとう、なんか面と向かって言われると照れるな。」
そんな会話をしながらも三人は笑顔になっていた。
そして健治が真顔になってスマホの画面を見せてきた。
「実はなSNSでこんな投稿を見つけたんだ、茶羽ちゃんと黒羽ちゃんに何かあってからじゃ遅いからな、気を付けた方がいいぞ。」
見せられた画面には、
『前垢は凍結されるし、ショッピングモールではスマホで動画撮っただけで警備員に怒られるし、ちょっと抵抗したら事務所連れていきやがって、まじで許さねえ。でも俺のエンジェルはマジ天使。』
と書いてあり一緒に表示されていた画像には加工されて顔は分からなくされていたがどう見ても茶羽と黒羽が写っていた。
「なんだこれ?どうみても逆恨みじゃないか。」
「だが気を付けておいたほうがいいかもな、こういう奴はいざとなると何しでかすか分からないからな。」
「ああ、気を付けるよ。」
お互いそこまで気にしていなかった、が注意はしようと思った。
その後、庭の様子に気づいた健治が、
「ちょっとした公園みたいになってるな。」
と庭に降りて遊具などを確認していた。
「買ったはいいけど思ったより大きくてな、庭片付けて設置したんだ。」
俺の言葉に健治は呆れた顔をしていた。
しばらく庭を確認していると家の中でドタバタと音がすると縁側に茶羽と黒羽が座って靴を履こうとしていた。
香織が靴を履かせてあげると、我先にと庭に降りて二人は遊具で遊び始めた、それを見ていた健治は一緒に走り回っていた。
「二人のあの笑顔絶やさないようにしないとな。」
そうつぶやくと俺も茶羽と黒羽と健治に混ざって庭全体を使い追いかけっこを始めた。
晩飯は香織が作ってくれた焼き魚を食べてお風呂は香織が二人を入れてくれた。
俺たちも風呂に入り、二人は泊まる予定だったので、俺と健治と香織はビール片手に茶羽と黒羽はリンゴジュースを飲みながら俺たちの大学時代の事など懐かしい話で盛り上がった。
そんな中水族館の話が出て、茶羽と黒羽が興味を示し翌日みんなで行くかという事になった。
二人は水族館に行けると分かるとリビングで跳ねまわって喜んでいた。
その後も話を続けて茶羽と黒羽がウトウトしだしたころお開きにした、健治と香織を客間に案内して、俺は茶羽と黒羽が寝ているベットに潜り込んだ。
翌日目が覚めると、いつもは二人が俺の上で寝ているはずが今日は居なかった、時計を見ると7時前だった。
洗面所に行き顔を洗って一階に行くと、茶羽と黒羽は朝ご飯を作っている香織の横でお手伝いをしていた。
「おはよう、ご飯作らせて悪いな、ゆっくりしてくれてよかったのに。」
「達也さんおはようございます、せっかくだしお弁当も作ろうかと思って、そしたら茶羽ちゃんと黒羽ちゃんが起きてきて手伝ってくれてるんですよ。」
「さうはおてつだいしてるの」
「くうもおてつだい」
「そっかお手伝いしてるのか、えらいな」
二人をほめながらなでて香織にお礼を言ってリビングに戻ると、目をこすりながら健治が降りてきた。
「おはようさん、いい匂いだな。」
「おはよう、香織と茶羽と黒羽が朝ごはんと弁当作ってるぞ。」
「おっ、まじかそれは昼が楽しみだな。」
そんな会話しながら朝飯をテーブルに並べていた二人を健治がなでていた。
食事が終わると茶羽と黒羽はいつも通り朝のお手伝いを終わらせ、余所行きの服に着替えてポシェットを持ってリビングでそわそわしていた。
それを見て俺らも準備するため二階に上がっていく。
着替えて戻ってくると二人は靴を履いて玄関で待っていた、今日は健治がミニバンを持って来てくれたので、ジュニアシートを乗せ換えて茶羽と黒羽を座らせると、行きは健治が運転すると言うので俺は助手席に座る。
振り返って茶羽と黒羽と香織が乗ってるのを確認すると声をかける。
「さあいこうか。」
「はい」
「いくぞ」
「「しゅっぱーつ」」
茶羽と黒羽の掛け声に合わせて健治は車を出す。
いざ目指すは水族館。
337
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる