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小屋を離れてから三日が経った。あれから特に危険な魔獣と遭遇することもなく、今私たちは町にいる。この世界で始めて触れる人類文明だ。
衛星都市エウロス。
アルシュさん曰く、有事の時にプロム王国首都プルムーアを防衛するために、首都を囲んで東西南北に計四つ作られた都市の一つ。東の守りを担っているらしい。
「隊を整えたいので、二日ほどここに滞在するつもりです」
「じゃあ自由行動してもいいってこと? 」
「ええ、ある程度の範囲内でしたら構いません。それと、買い物に行きましょう」
「買い物? アルシュさんの? 」
「いえ、シエルさんのです。流石にそのままでは困ると思うので・・・」
「あー、まあ確かに」
改めて自分の格好を見て納得する。
「何店舗か見繕ってあるので、好きに選んでください」
「いいの? 」
「ええ、ヒュドラ討伐の報酬だと思ってください」
じゃあお言葉に甘えちゃえ! というわけで、本日の予定は私服のアルシュさんとのショッピングだ。
「いらっしゃいませ~」
店を入るとにっこにこな店員さんが迎えてくれる。おしゃれな店内だ。
「本日は何をお求めで? 」
「この子の普段着を数着」
まずは服。いつまでもローブを被っているわけにはいかない。
「まあなんて可愛らしいお嬢さん! そうですねぇ、これなんかどうです? これなんかも合いそうですね」
「この色もいいですね・・・」
「この服にはもっと合うのがあるはず! ちょっと待っててください! 」
テンションの高いお姉さんによって、瞬く間に着せ替え人形になってしまい、目が回りそうな速度で次々と着させられた。
「ではこちらで、合計1500ベルになります! 」
知らぬ間に会計が終わり、
「ありがとうございました~! 」
ホクホク顔の店員さんに見送られて店を出た。
「何着買ったの? 」
「五着です」
「多! 」
「さあ、次は靴屋ですよ」
連れて行かれたのは素朴な雰囲気のところ。
「どんな靴をお求めですかな? 」
白い髭を撫でながら、モノクルをかけたおじいちゃんが出てきてくれた。
「この子の靴を」
「ほう」
キラーンと、モノクルが光った気がした。
「普段使いですかな? 」
「はい」
「ふむ、そうですな。この大きさだと・・・」
かれこれ試着すること十数足。
「ではこれとこれで」
「1000ベルじゃ」
今回もまた知らぬ間に会計が終わり、
「また何かあれば来るんじゃ」
老人特有の優しい声に見送られて店を出た。
「最後に雑貨を買いに行きましょう」
「まだあるの!? 」
最後に連れて行かれたのはおしゃれな雑貨屋。
「とりあえず一つカバンは持っておきましょうか、どれがいいですか? 」
「じゃあこれ」
「ハンカチやタオルもいりますね、これなんかどうですか? 」
「それがいい」
「あとは水筒と・・・」
なんやなんやといろいろな物を買った。
「合計410ベルです。ありがとうございました」
「アルシュさん、給料大丈夫なの? 」
「全然大丈夫ですよ。これでも副団長ですから」
どうやら懐事情は気にしなくていいみたいだ。
「まだどこか行くの? 」
「回るべきとこは回りましたけど、あとどこか行きたいところが? 」
「じゃあ買い食いしたいです! 」
「買い食いですか? 」
「うん、あの通りの」
ちょっと行った先に縁日みたいになっている通りがある。
「じゃあ行きましょうか」
よし!
「アルシュさん、あれ! 美味しそう! 」
「大きいので半分こして食べましょうか」
まずは定番串焼き。肉汁がジュワ~と溢れるわ溢れるわ。神獣組も一人一本ずつ買ってもらってご満悦だ。
「タレが服に垂れないように、こうやって持つんですよ」
「ありがとう」
次。ロティと呼ばれる、白パンの中に色々詰め込んだものらしい。私は肉ととうもろこしとマイをたっぷり詰め込んでもらった。
でもお米があったのは意外だな~。
「マイが口の端に残ってますよ」
「あ、ホントだ」
「あのお菓子なに? 」
「あれはシューフですね。ああやって焼くと、中が空洞になってサクサクになるんですよ。その中にクリームを入れるんです」
なんかシュークリームみたい! 絶対美味しい!
「シューフ5つください! 」
「おや、5つでいいのかい? 7つ買うと1ベルお得だよ」
「じゃあ7つで! 」
「あいよ! ほら、落とさないようにね」
「ありがとう」
「7つも買ってきたんですか? 」
「うん。黎月たちの分がこっちで・・・はい、これアルシュさん分。と、これはクラックさんの分だから後で渡して欲しい」
「ありがとうございます」
シュークリームよりも外の皮がパリッとしていて美味しかった。
「クリームが口から溢れてますよ」
なんかアルシュさんの行動、既視感あるな。タレがこぼれない持ち方を教えてくれるし、口の端のお米を教えてくれるし、クリームを拭いてくれるし。
「ああ」
・・・おかんだ。納得した。
「どうかしましたか? 」
「いいや、なんでも」
「? 嬉しそうで何よりですが・・・」
衛星都市エウロス。
アルシュさん曰く、有事の時にプロム王国首都プルムーアを防衛するために、首都を囲んで東西南北に計四つ作られた都市の一つ。東の守りを担っているらしい。
「隊を整えたいので、二日ほどここに滞在するつもりです」
「じゃあ自由行動してもいいってこと? 」
「ええ、ある程度の範囲内でしたら構いません。それと、買い物に行きましょう」
「買い物? アルシュさんの? 」
「いえ、シエルさんのです。流石にそのままでは困ると思うので・・・」
「あー、まあ確かに」
改めて自分の格好を見て納得する。
「何店舗か見繕ってあるので、好きに選んでください」
「いいの? 」
「ええ、ヒュドラ討伐の報酬だと思ってください」
じゃあお言葉に甘えちゃえ! というわけで、本日の予定は私服のアルシュさんとのショッピングだ。
「いらっしゃいませ~」
店を入るとにっこにこな店員さんが迎えてくれる。おしゃれな店内だ。
「本日は何をお求めで? 」
「この子の普段着を数着」
まずは服。いつまでもローブを被っているわけにはいかない。
「まあなんて可愛らしいお嬢さん! そうですねぇ、これなんかどうです? これなんかも合いそうですね」
「この色もいいですね・・・」
「この服にはもっと合うのがあるはず! ちょっと待っててください! 」
テンションの高いお姉さんによって、瞬く間に着せ替え人形になってしまい、目が回りそうな速度で次々と着させられた。
「ではこちらで、合計1500ベルになります! 」
知らぬ間に会計が終わり、
「ありがとうございました~! 」
ホクホク顔の店員さんに見送られて店を出た。
「何着買ったの? 」
「五着です」
「多! 」
「さあ、次は靴屋ですよ」
連れて行かれたのは素朴な雰囲気のところ。
「どんな靴をお求めですかな? 」
白い髭を撫でながら、モノクルをかけたおじいちゃんが出てきてくれた。
「この子の靴を」
「ほう」
キラーンと、モノクルが光った気がした。
「普段使いですかな? 」
「はい」
「ふむ、そうですな。この大きさだと・・・」
かれこれ試着すること十数足。
「ではこれとこれで」
「1000ベルじゃ」
今回もまた知らぬ間に会計が終わり、
「また何かあれば来るんじゃ」
老人特有の優しい声に見送られて店を出た。
「最後に雑貨を買いに行きましょう」
「まだあるの!? 」
最後に連れて行かれたのはおしゃれな雑貨屋。
「とりあえず一つカバンは持っておきましょうか、どれがいいですか? 」
「じゃあこれ」
「ハンカチやタオルもいりますね、これなんかどうですか? 」
「それがいい」
「あとは水筒と・・・」
なんやなんやといろいろな物を買った。
「合計410ベルです。ありがとうございました」
「アルシュさん、給料大丈夫なの? 」
「全然大丈夫ですよ。これでも副団長ですから」
どうやら懐事情は気にしなくていいみたいだ。
「まだどこか行くの? 」
「回るべきとこは回りましたけど、あとどこか行きたいところが? 」
「じゃあ買い食いしたいです! 」
「買い食いですか? 」
「うん、あの通りの」
ちょっと行った先に縁日みたいになっている通りがある。
「じゃあ行きましょうか」
よし!
「アルシュさん、あれ! 美味しそう! 」
「大きいので半分こして食べましょうか」
まずは定番串焼き。肉汁がジュワ~と溢れるわ溢れるわ。神獣組も一人一本ずつ買ってもらってご満悦だ。
「タレが服に垂れないように、こうやって持つんですよ」
「ありがとう」
次。ロティと呼ばれる、白パンの中に色々詰め込んだものらしい。私は肉ととうもろこしとマイをたっぷり詰め込んでもらった。
でもお米があったのは意外だな~。
「マイが口の端に残ってますよ」
「あ、ホントだ」
「あのお菓子なに? 」
「あれはシューフですね。ああやって焼くと、中が空洞になってサクサクになるんですよ。その中にクリームを入れるんです」
なんかシュークリームみたい! 絶対美味しい!
「シューフ5つください! 」
「おや、5つでいいのかい? 7つ買うと1ベルお得だよ」
「じゃあ7つで! 」
「あいよ! ほら、落とさないようにね」
「ありがとう」
「7つも買ってきたんですか? 」
「うん。黎月たちの分がこっちで・・・はい、これアルシュさん分。と、これはクラックさんの分だから後で渡して欲しい」
「ありがとうございます」
シュークリームよりも外の皮がパリッとしていて美味しかった。
「クリームが口から溢れてますよ」
なんかアルシュさんの行動、既視感あるな。タレがこぼれない持ち方を教えてくれるし、口の端のお米を教えてくれるし、クリームを拭いてくれるし。
「ああ」
・・・おかんだ。納得した。
「どうかしましたか? 」
「いいや、なんでも」
「? 嬉しそうで何よりですが・・・」
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