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「で、じゃあこれから私はどうなるの? 」
「詳しくは実際に帰ってみないとわかりませんが、恐らく王宮で保護する流れになるかと」

 なら当分は衣食住の心配はいらないか。

「ん? どうしたの? 」

 ツンツンと黎月がつついてきた。今の私は、腕に小さくなった黎月と常夜を抱いて、同じように小さくなった紅羽を肩に留まらせ、隣に金のたてがみの白馬を引き連れるという、まあまあ奇妙な状態になっている。

「なにか来るぞ」
「!?」

 黎月に言われたのと同時に私にも鋭い感覚が走った。

(なに!? )

 一歩遅れて、周りの騎士たちも次々に剣に手をかける。

 ズサ、ズサ、と重いものを引きずるような音が聞こえてくる方に目を向ける。

「なんなのかわかる? 」
「いえ、ですが音からしてかなり大きいかと」
「だよね」

 気づけばクラックさんが移動して一番前に立っていた。

「うわー・・・」


 ゆっくりと、大きな影が私達を覆っていく。見下げると、そこには赤く光る九対の目が。

「・・・ヒュドラです」

 大きくなった時の常夜と同じくらいの赤々とした蛇で、頭が九つに別れている。ボタ、と唾液が垂れた先で地面が溶けた。

 さて面倒なことになった。実は黎月たちの結界、外からの攻撃はもちろん通さないけど、中から外への干渉も不可能なのだ。だから騎士の人たちは結界に守られながら攻撃するというのができない。さらに、一人だけ出そうとしても一旦全員の結界を解除しなければいけないので、難しい。そもそも今この結界の操作権は黎月にあるから、騎士たちと連携をとりながら結界をタイミングに合わせて操るのはほぼ不可能なのだ。当然と言えば当然である。

「アルシュさん、黎月の結界があるからこのまま走って逃げられるけど・・・」

    大きな蛇の胴体に、枝分かれた九つの頭と尻尾。日本の伝説にあるオロチのような見た目だ。


「いえ、討伐します。それが我々の仕事なので」
「そう、わかった。黎月、結界をキャンセル」

 答えると同時に私は指を鳴らした。

 パチン!

 隣のアルシュさんがその音の出所を突き止めこっちを振り向いたその時。

 ガガガガ!

 地面にあった落葉が群れをなしてヒュドラに襲いかかった。何百枚もの枯れ葉が大挙してまるで生物のようになるのは本当に壮観だ。葉が当たったところは血が滲んでいて、当たりどころによってはグロテスクな状態になっている。

「やっぱり爬虫類型は頑丈だね、抉っただけか・・・」
「シエル殿、今のは・・・」
「硬化させた葉による質量攻撃」
「そ、そうですよね。ははは・・・」

 スマートに答えたつもりだったけど、アルシュさんは若干引いている。解せぬ。

「それより攻撃をかけるなら今だよ」
「ええ、わかってますよ」


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