チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ

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 積まれた山のてっぺんから十匹とって、近くに落ちていた長めの枝に刺し通していく。ちょっと可哀想だけど左右の目を貫通させる、所謂目刺しというやり方だ。

 刺し終わったら、川から何個か大きめの石を取ってきて、円を作るように並べる。そして円の中を黎月に掘ってもらう。

「五十センチぐらいの深さまで行ける? 」
「そのごじゅっせんちとは、どれくらいなのだ? 」
「えーとね、大体これぐらい? 」
「ふむ、ならば五ロージほどか」

 世界が変わると単位も変わるのか。ふと、穴堀り中に尻尾がパタパタしているのを見てしまった。
 狼なのに・・・。
 本人のツンデレ属性を刺激しないよう、黙っておいてあげることにした。

「できたぞ」
「じゃあ・・・」

 次は穴の底に枯れ枝を入れて、目刺しにした魚を穴の上に掛ける。

「こんな感じか」

 あとは火種だけど・・・。

「火ならあたしがつけるわよ? どこにつけるの? 」

 紅羽が名乗り出てくれた。

「この枯れ枝に」
「この中の枯れ枝ね」

 そう言って、紅羽が中を覗き込んだ瞬間、ボッと明るい炎が立った。

 おお、さすが神獣。視線ひとつで・・・。

「これでいいかしら? 」
「うん、充分。ありがとう」

 最後に、川の真ん中にある大きな岩を持ってきて、穴に被せる。

「運んでやろうか? 」
「ううん、全然大丈夫」

 子供の体のはずなのに、全く重さを感じない。正確には、重さは感じるけど、全く力をいれなくても持ち上げられるのだ。たぶん、ティリアネが言っていた身体能力の限界値化の影響だと思うけど。
 怪力幼女、ここに爆誕。・・・うん、全然面白くないな。

 蓋をした隙間からもくもくと煙が上がっているのを確認したら、後は待つだけ。


 その間に少し状況整理といこう。


 思い思いにくつろいでいるところ悪いけど、一度みんなにも集まってもらう。

「何個か聞きたいことがあるんだけどさ」
「なんだ? 愛し子よ」

「みんながさっきから呼んでいる、その『愛し子』っていうのはなに? 」

 答えてくれたのは白氷だ。

「そなたはティリアネ様が祝福し、我らが世界へ来させた。謂わばこの世界から祝福されている存在である。故に、『ティリアネ様の愛し子』であると同時に、『世界の愛し子』でもあるのだ」

 すごい大層な肩書きだな・・・。

「じゃあこれからはシエルって呼んでくれない? 」

「ほう、なぜじゃ? 」
「せっかくティリアネが付けてくれた名前だから。それに、いつまでも愛し子愛し子呼ばれるのは、あんまり好きじゃないんだよね」
「ふむ。ではこれからはシエルと呼ばせてもらおう」
「シエルね? いい名前ね! 」

「じゃあシエル。他になにか聞きたいことはあるか? 」

「えーと、みんなはどこまで私を助けてくれるの? 」
「どこまで、とは? 」


「たとえ私が世界を滅ぼそうとしても、着いてきてくれるの? 」


「ああ。ティリアネ様から御命をもらったその時から、我らはそなたのためだけにある存在となった。そなたが何をしようとも、それを支えるのが我らの使命なのだ」


「・・・そっか。ありがとう」


 本来なら自由気ままに生きる彼らが、私のためにいきる存在になってくれたというのだ。そんな彼らに報いる方法が、今はまだわからない。


 よっぽど複雑な表情をしていたのか、常夜が語りかけてきた。

「のう、シエルよ」
「なに? 」


「そなたが国を滅ぼすというのなら、我らはいかなる町をも廃墟にして見せよう」


 常夜の一言に絶句した私を置いて、黎月、紅羽、白氷がその後を紡いだ。


「国を興すというのなら、我らがその土台となる」


「この星を滅ぼすというのなら、いかなる国々も焼き尽くすわ」


「この世界を滅ぼすというのなら、どんな星でも壊し尽くしてやろう」


 ッ、・・・。

 川の流れだけが静かに響く空間で、なにを言えばいいかわからず、俯いてしまう。


「・・・ありがとう」


 彼らは私のために全てを捨てるというのだ。一のために百をも千をも捨てるその決意の重さを、私は知っている。


 こんな私に対して、彼らはどこまでも、慈しみと忠誠を抱いてくれている。ならば私もこの命を賭けよう。

 これからなにがあっても、彼らを守るためなら、私はどれだけの殺戮も構わないだろう。どれだけの犠牲でも払おう。


 この手がいくら血塗られようとも、この命を賭して彼らを守り通そう。









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