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第79話
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壇条学院学園祭、屋外出店エリア。
「これが人の世の祭りと言うものか……!!」
「若さと活気にあふれておるのう、実に素晴らしき事じゃ!」
オカルト研究会喫茶店での賑やかなティータイムを終えた後、帰る前に数百年ぶりに人の世の祭を見に行くと言う4人の五武神。英里子部長命令で須田丸と共にその案内を任された壇条学院制服姿の探と美香が案内したのは学園祭でも一番賑わう屋外出店エリアだ。
射的、ビンゴグーム、くじ引き、ヨーヨーすくい、占い、チョコバナナ、カルメ焼き、焼きとうもろこしに焼きそば、わたあめ、たこ焼き、ホットドッグ……ヒトから神に昇格した存在とは言え、元弥生人である五武神4人は数多の娯楽と魅惑的な美食の数々に目を輝かせる。
「これだけあると全て回るには時間がかかるな……いっそのこと別行動にしたらどうだろうか?」
「うむ、私も同じことを考えていたぞチノミヤ殿。もののふ方……我らの御案内を頼めるだろうか?」
ミズノミヤは3人のもののふに頼む。
「もちろんです! 美香さんはミズノミヤ様のご案内を頼む。須田丸君と僕は……」
「我はナルカミノモノ君と『こみゅにけぃしょん』をしてみたいのう」
「じやあ僕とチノミヤ殿は雲隠リーダーとご一緒しようかな?」
「このようなくじ引きがあったとは……驚きじゃ!」
使用済みのビンゴカードを眺めつつ呟くヒノミヤノミコト。
「筒の先端に詰めるだけで飛ばせる火縄銃があるなんて…… !」
「威力は無いが、狙いどころが良ければ隙を作るのは十分可能だな」
射的の参加賞でもらったサイコロキャラメルを観察するナルカミノミヤノミコトとチノミヤノミコト。
「あのような札占いが発明されていたとは、驚きじゃ!」
占いの館でタロットカードを初めて見たミズノミヤノミコト。
もののふ達の案内で学園祭ゲームを楽しんだ後、フードエリアに集合した五武神は夢見心地のまま記憶を反易する。
「いやぁ、ここまで楽しんでいただけて何よりっすよ!」
「うむ、まさか人間界の娯楽がここまで進化していたとは……実に驚きであった。我らの案内をしてくれたそなた達には是非とも礼をせねばならぬのだが……何か望みはあるか?」
「望みですか? ええと……どうしよう、雲隠?」
美香と英里子のお土産を含め9人分の焼きそばとたこ焼きを探と共に買ってきた茜は傍らの探に聞く。
「そうだな……ゴブガミ先生に勝てる方法なんてのは聞いちゃいけないでしょうし、助太刀してくれなんてのはNGでしょうから。五武神様が出せる物なら何でもいいですよ」
探は熱々の船入りたこ焼きと紙パック入り焼きそばを皆に配りつつ答える。
「うむ、実に素晴らしき解である。まだ時期尚早ではあるがそなた達ならこれを渡しても……良いであろう」
チノミヤノミコトがスーツの胸ポケットから取り出したのは四角柱が幾重にも重なって結合した形状の全長10センチ程の透き通った鉱石だ。
「これは……?」
「うむ、これは武心玉(ぶしんぎょく)。マヨイガ内でもめったに見つからない極めて貴重な神の力を内包する玉である。そなたらがカゼノミヤの強大な力を乗り越え、主に挑むのであれば必要となるであろう。受け取ってくれ」
5つの武心玉を取り出し、探に手渡したチノミヤノミコトは割りばしを手に取り、ソース焼きそばを食べ始める。
「ありがとうございます、チノミヤ殿! 探に須田丸、私達も食べよう!!」
「ああ!」「いただきます!」
手を合わせた7人は熱々の焼きそばとたこ焼きを食べ始める。
「へぇ、そんな事があったんやね……神さんの接待ありがとな御鐵院!」
五武神達と須田丸が帰ってから数時間後。
3日間の壇条学院祭のフィナーレを飾る体育館での学園祭総括を終え、部室に戻って来て喫茶店の片づけに着手していた体育ジャージ姿の茜とブルマ体操服英里子。
「ああ、私も楽しかった……わざわぎありがとうな、呉井」「ありがとって何の事や?」
言われる筋のないお礼をもらった片づけ中の英里子は残ったテイーバッグやスイーツを段ボールにしまいつつ首をかしげる。
「ほら、お前と華咲は来年もあるが私と探にとっては最初で最後の学園祭参加……楽しんで来いって言うメッセージだったんだろ?」
「……そういやそうだったわ!! まあそこまで考えとらんかったけど、楽しめたなら良かったな! 流石は文殊菩薩の英里子ちゃんやで!!」
「お前はそういう所が無ければなぁ……あれ、華咲のメイド服は?」
御鐵院本家のばあやから借りて来たメイド服と執事服を畳んで段ボールに入れていた茜は枚数が足りない事に気づく。
「ああ、美香ちゃんならおトイレに駆けて行ったで」
「そうかまだ時間はあるからこの箱は空けて置いてっと……」
茜は他の片づけに着手する。
3日間に及ぶ賑やかな祭りが終わって静寂な夜の帳に包まれた壇条学院、屋上
「先輩……どうしたんですか?」
メイド服のままお手洗いに行った後、部室に戻ろうとした所で荷運び帰りの探とばったり会ってしまった美香。そのまま手を引かれて夜の屋上にやってきた美香はドキドキする気持ちを押さえつつそっと聞く。
「大した物じゃないんだけど……これ、射的で取れたから美香さんにあげようと思って」
探はビニール袋に入ったウサギのぬいぐるみを美香に差し出す。
「わぁ、ありがとうございます!」
探がくれた初めてのプレゼントを美香は抱きじめる。
「本当はもうちよっと早く渡したかったんだけど…… 2人っきりになれるチャンスが無くて。強引だったけど今しか無いと思ったんだ」
「……ありがとうございます、先輩。私、嬉しいです! とっても嬉しい!!」
学園祭の思い出と甘酸っぱい恋の記憶がたっぷり詰まったぬいぐるみに美香は涙が出て来る。
「先輩、私達マヨイガの儀が終わってオカルト研究会の繋がりが無くなっても……一緒にいられますよね?」
「ああ、もちろん……僕もそのつもりでいる。だからこれからもよろしく」
「はいっ!!」
来年は部活動引退が決まっている大好きな先輩との最初で最後になる学園祭……美香は涙を拭いつつこの幸せを心に刻み込むのであった
【第80話に続く】
「これが人の世の祭りと言うものか……!!」
「若さと活気にあふれておるのう、実に素晴らしき事じゃ!」
オカルト研究会喫茶店での賑やかなティータイムを終えた後、帰る前に数百年ぶりに人の世の祭を見に行くと言う4人の五武神。英里子部長命令で須田丸と共にその案内を任された壇条学院制服姿の探と美香が案内したのは学園祭でも一番賑わう屋外出店エリアだ。
射的、ビンゴグーム、くじ引き、ヨーヨーすくい、占い、チョコバナナ、カルメ焼き、焼きとうもろこしに焼きそば、わたあめ、たこ焼き、ホットドッグ……ヒトから神に昇格した存在とは言え、元弥生人である五武神4人は数多の娯楽と魅惑的な美食の数々に目を輝かせる。
「これだけあると全て回るには時間がかかるな……いっそのこと別行動にしたらどうだろうか?」
「うむ、私も同じことを考えていたぞチノミヤ殿。もののふ方……我らの御案内を頼めるだろうか?」
ミズノミヤは3人のもののふに頼む。
「もちろんです! 美香さんはミズノミヤ様のご案内を頼む。須田丸君と僕は……」
「我はナルカミノモノ君と『こみゅにけぃしょん』をしてみたいのう」
「じやあ僕とチノミヤ殿は雲隠リーダーとご一緒しようかな?」
「このようなくじ引きがあったとは……驚きじゃ!」
使用済みのビンゴカードを眺めつつ呟くヒノミヤノミコト。
「筒の先端に詰めるだけで飛ばせる火縄銃があるなんて…… !」
「威力は無いが、狙いどころが良ければ隙を作るのは十分可能だな」
射的の参加賞でもらったサイコロキャラメルを観察するナルカミノミヤノミコトとチノミヤノミコト。
「あのような札占いが発明されていたとは、驚きじゃ!」
占いの館でタロットカードを初めて見たミズノミヤノミコト。
もののふ達の案内で学園祭ゲームを楽しんだ後、フードエリアに集合した五武神は夢見心地のまま記憶を反易する。
「いやぁ、ここまで楽しんでいただけて何よりっすよ!」
「うむ、まさか人間界の娯楽がここまで進化していたとは……実に驚きであった。我らの案内をしてくれたそなた達には是非とも礼をせねばならぬのだが……何か望みはあるか?」
「望みですか? ええと……どうしよう、雲隠?」
美香と英里子のお土産を含め9人分の焼きそばとたこ焼きを探と共に買ってきた茜は傍らの探に聞く。
「そうだな……ゴブガミ先生に勝てる方法なんてのは聞いちゃいけないでしょうし、助太刀してくれなんてのはNGでしょうから。五武神様が出せる物なら何でもいいですよ」
探は熱々の船入りたこ焼きと紙パック入り焼きそばを皆に配りつつ答える。
「うむ、実に素晴らしき解である。まだ時期尚早ではあるがそなた達ならこれを渡しても……良いであろう」
チノミヤノミコトがスーツの胸ポケットから取り出したのは四角柱が幾重にも重なって結合した形状の全長10センチ程の透き通った鉱石だ。
「これは……?」
「うむ、これは武心玉(ぶしんぎょく)。マヨイガ内でもめったに見つからない極めて貴重な神の力を内包する玉である。そなたらがカゼノミヤの強大な力を乗り越え、主に挑むのであれば必要となるであろう。受け取ってくれ」
5つの武心玉を取り出し、探に手渡したチノミヤノミコトは割りばしを手に取り、ソース焼きそばを食べ始める。
「ありがとうございます、チノミヤ殿! 探に須田丸、私達も食べよう!!」
「ああ!」「いただきます!」
手を合わせた7人は熱々の焼きそばとたこ焼きを食べ始める。
「へぇ、そんな事があったんやね……神さんの接待ありがとな御鐵院!」
五武神達と須田丸が帰ってから数時間後。
3日間の壇条学院祭のフィナーレを飾る体育館での学園祭総括を終え、部室に戻って来て喫茶店の片づけに着手していた体育ジャージ姿の茜とブルマ体操服英里子。
「ああ、私も楽しかった……わざわぎありがとうな、呉井」「ありがとって何の事や?」
言われる筋のないお礼をもらった片づけ中の英里子は残ったテイーバッグやスイーツを段ボールにしまいつつ首をかしげる。
「ほら、お前と華咲は来年もあるが私と探にとっては最初で最後の学園祭参加……楽しんで来いって言うメッセージだったんだろ?」
「……そういやそうだったわ!! まあそこまで考えとらんかったけど、楽しめたなら良かったな! 流石は文殊菩薩の英里子ちゃんやで!!」
「お前はそういう所が無ければなぁ……あれ、華咲のメイド服は?」
御鐵院本家のばあやから借りて来たメイド服と執事服を畳んで段ボールに入れていた茜は枚数が足りない事に気づく。
「ああ、美香ちゃんならおトイレに駆けて行ったで」
「そうかまだ時間はあるからこの箱は空けて置いてっと……」
茜は他の片づけに着手する。
3日間に及ぶ賑やかな祭りが終わって静寂な夜の帳に包まれた壇条学院、屋上
「先輩……どうしたんですか?」
メイド服のままお手洗いに行った後、部室に戻ろうとした所で荷運び帰りの探とばったり会ってしまった美香。そのまま手を引かれて夜の屋上にやってきた美香はドキドキする気持ちを押さえつつそっと聞く。
「大した物じゃないんだけど……これ、射的で取れたから美香さんにあげようと思って」
探はビニール袋に入ったウサギのぬいぐるみを美香に差し出す。
「わぁ、ありがとうございます!」
探がくれた初めてのプレゼントを美香は抱きじめる。
「本当はもうちよっと早く渡したかったんだけど…… 2人っきりになれるチャンスが無くて。強引だったけど今しか無いと思ったんだ」
「……ありがとうございます、先輩。私、嬉しいです! とっても嬉しい!!」
学園祭の思い出と甘酸っぱい恋の記憶がたっぷり詰まったぬいぐるみに美香は涙が出て来る。
「先輩、私達マヨイガの儀が終わってオカルト研究会の繋がりが無くなっても……一緒にいられますよね?」
「ああ、もちろん……僕もそのつもりでいる。だからこれからもよろしく」
「はいっ!!」
来年は部活動引退が決まっている大好きな先輩との最初で最後になる学園祭……美香は涙を拭いつつこの幸せを心に刻み込むのであった
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