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第77話

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 2週間後、10月中盤の私立壇条学院。
 ……迷処町と近隣市区町村にとって年に一回の一大ローカルイベント、壇条学院際が始まった。3日間の開催期間中1日目の関係者向け公開を終えて一般公開日となった開催3日目の校舎内は多くの人々で賑わっていた。
(あの人……ヤクザ?)(学院生の父兄とかなのかしら?)
 そんな中、黒髪を短く刈り上げ、アジアンデザインのYシャツに黒い上着とズボン、サングラス姿で案内マップを見ながらキヨロキョロしている巨漢に出し物を楽しむ壇条学院生及び遊びに来た一般の皆さんはざわつく。
(ええと、姉ちゃんが喫茶店をやっている文化部棟はどっちだっけ……)
 数年ぶりに訪れた懐かしの学び舎の賑やかさに戸惑うのは元・壇条学院生、蓑田 須田丸。
 隣町の県立工業高校1年生にしてヤンキーとの喧嘩と殴り合いの日々を経て名実ともにヘッドとなった漢だ。
(……流石に同期生とかにバレないように変装しつつもきちんとした身なりで来たんだが、何故か周囲の視線が不審者に向けるモノでしかないぜ)
 誰かにオカルト研究会喫茶店の場所を聞こうとしてもすう-っと避けられるばかりの須田丸は4人に電話かチャットアプリで連絡しようとスマホを取り出す。
「おお、そこにおわすはナルカミモノではないか!」
「えっ!?」
 須田丸はその呼称に思わず振り向く。
 スーツ上下の赤銅肌マッスルマン、和装の白カイゼル髭に白あごひげのお爺さん、ワンピース姿で腰まである黒髪ロングヘアに細目で雪のように白い肌の若い麗人、Yシャッに赤蝶ネクタイ、紺色の上着とサスペンダー半ズボンの眼つきの鋭い少年……見覚えのあるような無いような4人組に須田丸は一瞬考え込む。
「俺のもののふネームを知ってるって事はもしかして……ゴブガミの仲間か?」
「うむ、そうである。久しぶりだなナルカミノモノ殿」
 スーツ姿のチノミヤノミコトは須田丸に手を出す。
「久しぶりだな、おっさん!! あの時は楽しかったぜ。蝶ネクタイのおめえはナルカミノミヤだろうけど……この爺さんとアジアンビューティーなお姉さんも神様なのか?」
「そなたとは初対面であったな、ナルカミノモノ殿。儂は火乃宮の主、ヒノミヤノミコトだ」
「私は水乃宮の主、ミズノミヤノミコトです。初めまして、ナルカミノモノ様」
 初対面のもののふと五武神は握手と共に自己紹介する。
「神様……?」「何とかのミコト? 何言ってるのこの人達?」「演劇部の出し物?」「実行委員会に通報する?」「むしろ警備員さんはまだ?」
「あっ、ああ、ええと……俺達は怪しいもんじゃない。ほら、ちゃんと招待状もある! オカルト研究会の喫茶店に行きたいんだけどだれか教えてくんねぇかな?」
 ヤクザと謎のコスプレ集団にぎわつく壇条学院生達にようやく気が付いた須田丸は雲隠リーダーから届いた招待状を慌てて見せつつ周囲に事情を説明する。
「招待状は本物のようね」「オカルト研究会……ああ、なるほどね!!」「そういう設定だったのか!」「誰か実行委員会の案内の人呼んできてあげて!」
(ナルカミノモノ殿、かたじけない……我らも慣れぬ人間界の建築物に戸惑っておりまして。共にもののふ様方の茶店に参ってもよろしいでしょうか?)
(ああ、構わねぇよ。一緒に行こうぜ!)
 須田丸の機転により周囲を安心させて全員警備員室強制連行を回避した五武神は小声で感謝する。

「いらっしゃいませ! オカルト研究会の喫茶店へようこ……!」
 壇条学院祭実行委員会の案内係と別れ、施設棟のオカルト研究会カフェにたどり着いた5人。
 入り口受付で彼・彼女らを出迎えたロング黒髪の長身メイドさんは須田丸と一行を見た瞬間ビクッとする。
「ええと俺達……英里子部長の知り合いなんだけど。君とははじめまして、なのかな?」
「須田丸君! 来てくれたんやね!!」
「英里子姉ちゃん! メイドカワイイ…… トウトイ……エンジェル……エンジェル」
 いつもは(主に英里子の集めた物で)ごみ溜めなのが嘘のような昭和レトロ純喫茶に様変わりしたオカルト研究会部室。御鐵院家から提供された黒いフレアスカートワンピース上に白いエプロン、美しいレースで作られた純自のメイドキャップと言う使用人制服姿でてちてちと小走りに駆け寄ってくる小柄な英里子に須田丸は鼻血ブーを通り越して立っているのもやっとなドキドキハートビーティングだ。
「須田丸君! そして……まさか五武神の皆さんまで来て下さったんですね!」
「これは何とも雅な衣だ……わらわが替属たる人魚族侍女正装に採用せねばならぬ!」
 美香のメイド服に大興奮のミズノミヤノミコト。
「丁度良く客が切れたところだ! いらっしゃいませご主人さま! お席へご案内いたしますわ!」
 御鐵院本家では絶対に許されないであろう使用人の制服を着用すると言う非日常体験にご機嫌な茜はメニュー片手にサービススマイルで5人を席にご案内する。

【第78話に続く】

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