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第76話
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翌日……壇条学院施設棟3階、オカルト研究会部室。
「ほな、今日のオカルト研究会活動開始やで!」
「お一っ!」「楽しみだな!」
2週間の間、ゴブガミ顧間を締め出して負け戦となる事をわかりながらもカゼノミヤ戦対策ばかり議論してきた5人。一瞬とは言えそんな話題から離れて楽しい壇条学院学園祭の出し物について話し合えると言う事実に入室許可を得たゴブガミ顧間と5人は自然とハイテンション気味になる。
「さてまずは…… リーダーのアイディアから聞くで?」
「うん、僕はこれまでのマヨイガ研究で分かった事をまとめた展示をするべきだと思う」
「ふむふむ、マヨイガ研究の展示と……次は美香ちゃんやで?」
「私はお化け屋敷みたいなのをやりたいです! 出来れば番町皿屋敷みたいな幽霊役で」
「お化け屋敷、番町皿屋敷っと……御鐵院はどうや?」
「私はベタだが……メイド喫茶とかはどうだろうか? もちろん全員メイドで」
「御鐵院はメイド喫茶希望っと、ウチは赤提灯なお店を出してみたいっと……最後は須田丸君やね!」
『……英里子姉ちゃん、気持ちは嬉しいんだけどさ。今の俺は隣町の工業高校生だから壇条学院の学園祭には関われないんだ。ごめん』
「ああ、すまん……そうやったな。つい忘れてもうたわ」
『いいんすよ、俺も元そっちの人間として関われるだけで十分っすから。
ちなみに俺は皆との冒険を題材にした冒険活劇作品を販売して欲しいっす! 絶対面白いからコミカライズにアニメ化はもちろんスマホゲームでコラボキャラ化も固いですよ!』
「同人作品販売っと……これでメンバー全員の要望は揃ったわね?
で、ここから1つに絞るわけやけど。まず顧問のゴブガミと御鐵院の生徒会関係者として問題なさそうなのはどれや?」
「茜さん、まさか呉井さんが教師と生徒会長であるボク達に意見を求めるなんて……幻聴とかの類じゃないよね?」
「ああ、ゴブガミ先生……私も聞こえたから貴方1人の幻聴ではないな」
ゴブガミ顧間と茜は予期せぬ展開に思わず確認しあう。
「英里子ちゃん、偉いねぇ!! いい子だねぇ!! お利口さんだねぇ!!」
「美香ちゃん、いきなりどうしたんや? ウチ、美香ちゃんとそう言う関係を望んでおらんのやけど……お友達のままでええんよ?」
『英里子姉ちゃんと華咲さん……百合尊い、百合尊い、ありがたやありがたや……アーメン、ラーメン、塩ラーメェン……』
傲慢不遜で傍若無人、マキャベリスト・オブ・マキャベリストな親友が自分の意見より前に他人の意見を最初に聞くといういう精神的成長っぷり。
それに感動した美香はスマホの向こうで須田丸が鼻血ブーで失血死しかけているのにも構うことなく歓喜のままに胸でぎゅっと抱きしめる。
「さて、まだ感動のフィナーレと言うわけには行かないから会議を続けるけどいいかな?」
美香の抱擁でどきどきハートビート仮死状態の英里子をパイプ椅子に座らせたゴブガミ顧間はホワイトボード前に立つ。
「お願いします」
「この5つの案が出たわけだが……探君にはすまないけど①のマヨイガ研究発表はやめて諦めてもらえないかな?
ほら、学園祭とはいえボク達の存在やマヨイガの儀を公表すると言うのはあまりよろしい事じゃないんだ。
この現代社会だから何かでネットで広まったりして君のように何故か入れちゃった人が出たり、都市伝説になっても困るわけだし……」
「そうですよね、申し訳ありません」
「いいんだよ、わかってくれれば。
まあ②のお化け屋敷と③のメイド喫茶はとにかくとして……④の赤ちょうちんってのはお酒を出すお店だよね? 生徒会長としてそれは看過出来るのかな、御鐵院さん?」
「もちろんダメだ。コンセプトはとにかく呉井がそれを望むならNGに決まっている」
「よしっ、じゃあ④は仮バツで保留っと……⑤の同人作品ってボクは詳しくないけど作るのにどれくらいの予算や時間がかかるのかな?」
「スマホで今調べてみたんですけど……作るのは小説か漫画に関係なく1カ月ぐらいかかるらしいですね。予算もピンキリで数万円からぐらいで出来るとかウンタラで」
「予算はまあ数万なら何とかだけど……須田丸君は書き上げた原稿とかあるの?」
『全く無いっすね……』
「じゃあ今からじゃあ無理……だね、済まない」
『いや、いいっすよ。俺だって思いつきで言ったんですから。むしろ発言権があっただけで大満足っすよ!!』
「そうなるとメイド喫茶かお化け屋敷……どちらなら間に合うと思う?」
英里子除く4人はしばらく考え込む。
「美香さんには申し訳ないけど……お化け屋敷だとセッティングとか大工作業が必要だろうし、お札や血糊みたいな恐怖小道具とかも必要になる。茜さんも学園祭に関する生徒会の仕事でしばらく部活動どころじゃなくなるだろうし、そう言う意味ではメイド喫茶なら今からでも何とかなるかもしれない。僕はメイド喫茶に1票かな?」
「まあ先輩が私に可愛いメイドさん姿でご奉仕しろと言うなら喜んで……ですけど、衣装はどこで売っているんですか?」
「ああ、その件だが……昨日宮守経由で本家のメイド頭をやっているばあやに使用人制服を貸してもらえないか連絡したところ、決まればすぐにでも飛んでまいります! と大喜びだったからな。金はかからないはずだ」
「それは助かります!」「お願い出来ますか、茜さん!」
「ああ、もちろんだ。ただし『お嬢様の御学友様方のスリーサイズ計測を事前にお願いいたします!』との事だからな……須田丸以外全員分測らせてもらうぞ」
用意していたヒモメジャーとメモ用紙を取り出した茜は5人を見渡しつつ意味深にニヤリと笑う。
【第77話に続く】
「ほな、今日のオカルト研究会活動開始やで!」
「お一っ!」「楽しみだな!」
2週間の間、ゴブガミ顧間を締め出して負け戦となる事をわかりながらもカゼノミヤ戦対策ばかり議論してきた5人。一瞬とは言えそんな話題から離れて楽しい壇条学院学園祭の出し物について話し合えると言う事実に入室許可を得たゴブガミ顧間と5人は自然とハイテンション気味になる。
「さてまずは…… リーダーのアイディアから聞くで?」
「うん、僕はこれまでのマヨイガ研究で分かった事をまとめた展示をするべきだと思う」
「ふむふむ、マヨイガ研究の展示と……次は美香ちゃんやで?」
「私はお化け屋敷みたいなのをやりたいです! 出来れば番町皿屋敷みたいな幽霊役で」
「お化け屋敷、番町皿屋敷っと……御鐵院はどうや?」
「私はベタだが……メイド喫茶とかはどうだろうか? もちろん全員メイドで」
「御鐵院はメイド喫茶希望っと、ウチは赤提灯なお店を出してみたいっと……最後は須田丸君やね!」
『……英里子姉ちゃん、気持ちは嬉しいんだけどさ。今の俺は隣町の工業高校生だから壇条学院の学園祭には関われないんだ。ごめん』
「ああ、すまん……そうやったな。つい忘れてもうたわ」
『いいんすよ、俺も元そっちの人間として関われるだけで十分っすから。
ちなみに俺は皆との冒険を題材にした冒険活劇作品を販売して欲しいっす! 絶対面白いからコミカライズにアニメ化はもちろんスマホゲームでコラボキャラ化も固いですよ!』
「同人作品販売っと……これでメンバー全員の要望は揃ったわね?
で、ここから1つに絞るわけやけど。まず顧問のゴブガミと御鐵院の生徒会関係者として問題なさそうなのはどれや?」
「茜さん、まさか呉井さんが教師と生徒会長であるボク達に意見を求めるなんて……幻聴とかの類じゃないよね?」
「ああ、ゴブガミ先生……私も聞こえたから貴方1人の幻聴ではないな」
ゴブガミ顧間と茜は予期せぬ展開に思わず確認しあう。
「英里子ちゃん、偉いねぇ!! いい子だねぇ!! お利口さんだねぇ!!」
「美香ちゃん、いきなりどうしたんや? ウチ、美香ちゃんとそう言う関係を望んでおらんのやけど……お友達のままでええんよ?」
『英里子姉ちゃんと華咲さん……百合尊い、百合尊い、ありがたやありがたや……アーメン、ラーメン、塩ラーメェン……』
傲慢不遜で傍若無人、マキャベリスト・オブ・マキャベリストな親友が自分の意見より前に他人の意見を最初に聞くといういう精神的成長っぷり。
それに感動した美香はスマホの向こうで須田丸が鼻血ブーで失血死しかけているのにも構うことなく歓喜のままに胸でぎゅっと抱きしめる。
「さて、まだ感動のフィナーレと言うわけには行かないから会議を続けるけどいいかな?」
美香の抱擁でどきどきハートビート仮死状態の英里子をパイプ椅子に座らせたゴブガミ顧間はホワイトボード前に立つ。
「お願いします」
「この5つの案が出たわけだが……探君にはすまないけど①のマヨイガ研究発表はやめて諦めてもらえないかな?
ほら、学園祭とはいえボク達の存在やマヨイガの儀を公表すると言うのはあまりよろしい事じゃないんだ。
この現代社会だから何かでネットで広まったりして君のように何故か入れちゃった人が出たり、都市伝説になっても困るわけだし……」
「そうですよね、申し訳ありません」
「いいんだよ、わかってくれれば。
まあ②のお化け屋敷と③のメイド喫茶はとにかくとして……④の赤ちょうちんってのはお酒を出すお店だよね? 生徒会長としてそれは看過出来るのかな、御鐵院さん?」
「もちろんダメだ。コンセプトはとにかく呉井がそれを望むならNGに決まっている」
「よしっ、じゃあ④は仮バツで保留っと……⑤の同人作品ってボクは詳しくないけど作るのにどれくらいの予算や時間がかかるのかな?」
「スマホで今調べてみたんですけど……作るのは小説か漫画に関係なく1カ月ぐらいかかるらしいですね。予算もピンキリで数万円からぐらいで出来るとかウンタラで」
「予算はまあ数万なら何とかだけど……須田丸君は書き上げた原稿とかあるの?」
『全く無いっすね……』
「じゃあ今からじゃあ無理……だね、済まない」
『いや、いいっすよ。俺だって思いつきで言ったんですから。むしろ発言権があっただけで大満足っすよ!!』
「そうなるとメイド喫茶かお化け屋敷……どちらなら間に合うと思う?」
英里子除く4人はしばらく考え込む。
「美香さんには申し訳ないけど……お化け屋敷だとセッティングとか大工作業が必要だろうし、お札や血糊みたいな恐怖小道具とかも必要になる。茜さんも学園祭に関する生徒会の仕事でしばらく部活動どころじゃなくなるだろうし、そう言う意味ではメイド喫茶なら今からでも何とかなるかもしれない。僕はメイド喫茶に1票かな?」
「まあ先輩が私に可愛いメイドさん姿でご奉仕しろと言うなら喜んで……ですけど、衣装はどこで売っているんですか?」
「ああ、その件だが……昨日宮守経由で本家のメイド頭をやっているばあやに使用人制服を貸してもらえないか連絡したところ、決まればすぐにでも飛んでまいります! と大喜びだったからな。金はかからないはずだ」
「それは助かります!」「お願い出来ますか、茜さん!」
「ああ、もちろんだ。ただし『お嬢様の御学友様方のスリーサイズ計測を事前にお願いいたします!』との事だからな……須田丸以外全員分測らせてもらうぞ」
用意していたヒモメジャーとメモ用紙を取り出した茜は5人を見渡しつつ意味深にニヤリと笑う。
【第77話に続く】
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