75 / 94
第75話
しおりを挟む
「さて、皆様……落ち着かれましたか?」
四次元腰巻から白虎模様の敷物を取り出して草の上に敷いてオカルト研究会メンバーと姉を座らせ、続いて取り出したキャンプ用三脚ガスバーナーとケトル、水がなみなみと入った手桶と柄杓、ほうじ茶のティーバッグを用いて温かいほうじ茶を7人分滝れた式神ライはそれをゆっくりと飲む5人に聞く。
「ありがとう、ライさん。美味しいよ」
「まぁ、そんな……ありがとうございます、ヒノモノ様!」
探の爽やかイケメンスマイルにライは思わず顔を赤らめる。
「雲隠さん、あんたも罪作りな男やねぇ…… 2人目はとにかく3人目はやめといた方がええよ」
「?」
じいっと何か言いたげな眼で探を凝視する美香と茜。英里子の言わんとする事が分からない探は真顔で考え込む。
「ええと、ライさん。アンタさっきさ『話せることは無い』って百っていたけど……それってゴブガミに呪術的に口止めされてる的なサムシングなのか?」
そんな空気の中、ほうじ茶を飲み終えた須田丸は式神姉妹に尋ねる。
「ナルカミノモノさん、そうじゃねぇんだ。そもそも論になっちまうけど……主が御自ら真の姿でお相手なさるのはアンタらが最初なんだよ」
「はいっ?」
フウの予期せぬ回答に5人の疑間形構文が重なり合う。
「いや、初めてってどういう事なの? そもそも100チームぐらいがこの宮でゴブガミ先生に挑んで倒し、先に進んだんですよね?」
美香は思考パニックのあまり急きこむように式神姉妹に問う。
「……ええミズノモノ様。試練に挑みし者がタメシヤノミコト様にカミイクサを挑むには通過点としてこの宮の試練を終えねばなりませぬ。しかしながらもののふ様、私はそれらのもののふ様方が戦った相手が主様であると一言でも申し上げましたでしょうか?」
「……ゴブガミじゃない? じゃあ誰と? ってまさか!!」
謎かけのような婉曲的表現で2人が言わんとする事に気が付いた茜は、思わず目の前の式神姉妹を指さしてしまう。
「その通りでございます、カゼノモノ様。
主はかつてチノミヤノミコト様と並ぶ能力を持つ武神として五武神長の座も打診された大いなる存在。その強大すぎる力故に宮主としてもののふと直接対決を禁じられてしまい、代わりに我ら2人が宮主代理として風乃宮の試練運営を任されたのでございます」
宮の最深部を目指すもののふ達が行き詰まらないような浮島ルートの設定や、ほどほどの妨害行為、魔物の戦力配備……それらを全て2人で行っていたと言う情報と全てが繋がった茜は色々な意味で納得する。
「なるほどなぁ……あの戦闘力やべぇチノミヤさんと同等なら色んな意味で納得だわ」
「そう言えばチノミヤさん、人の姿でもノーダメだったんですよね……あの人があんな巨大な真の姿になったら私達どうなっちゃていたんでしょうか?」
「さあ、としか……でもごぉれむ相撲で良かったとしか言えない」
仮にシン・ゴブガミを倒せたとしても最終カミイクサで待ち構えるタメシヤノミコトとはそれよりも強い。突如目の前に降ってわいた超えられそうにない二重の壁に5人の心が折れそうになる。
「まあまあ、そう悲観せずにさぁ……ポジティブに行こうよ、君達!!」
「主様!」「ゴブガミ先生!?」
五武神としての白狩衣&烏帽子姿ではなくYシャツにネクタイ、スーツ上着とズボン姿で書類クリアーファイルを持った壇条学院歴史クラス教師の姿でセーフティルーム浮島に現れたゴブガミに7人は式神ライの大事なホワイトタイガー敷物にお茶をこぼしそうになる。
「君達が連日作戦会議を頑張ってボクに挑んでくれるのは嬉しいんだけどさぁ……『ゴブガミ立ち入り禁止!!』なんて意地悪な張り紙を部室ドアにしているせいで渡さなきゃいけない物も渡せないのよ?……もう時間があんまりないけど2週間後に迫ったこれの件、どうする?」
ゴブガミ顧間はクリアーファイルから取り出したプリントを5人に渡す。
『壇条学院祭部活動出店申請書:部活動出店枠』
「学園祭……そう言えばそんなのもありましたね!!」
オカルト研究会が歴史研究会の部室乗っ取り状態から正式な部活動に昇格したのはつい数か月前。それにより得られた壇条学院学園祭への部活動枠出店権。
「へえ、ウチがこんなもんもらえる日が来るなんてなあ……長生きはしてみるもんやね!」
英里子は(自称)反権威主義者である事も忘れて書類の質感と堅苦しい文言を一字一句愛でる。
「へえ、文化部はこういう申請を行うんすね……俺、運動部だったから初めて見るっすよ」
元壇条学院生とは言え、ラグビー部所属だった須田丸は初めて見る書類を周回読みする。
「学園祭か……。ゴブガミ先生、悪いが私達にはもう時間がないから……」
「新入りヒラ部員の御鐵院くん! キミが資本主義の神だとしても決定権はオカルト研究会部長たるウチにあるんやで?」
「新入リヒラ!?」
もはや矯正しようのない罵詈雑言女だと諦めてはいたが、予期せぬ新罵倒パワーワードに茜は言い返す言葉を失う。
「皆、今日のマヨイガダンジョンは終わりや! 各自お家に帰って明日までに学園祭の企画と出し物を考えてくること! ええな!」
「了解!!」
【第76話に続く】
四次元腰巻から白虎模様の敷物を取り出して草の上に敷いてオカルト研究会メンバーと姉を座らせ、続いて取り出したキャンプ用三脚ガスバーナーとケトル、水がなみなみと入った手桶と柄杓、ほうじ茶のティーバッグを用いて温かいほうじ茶を7人分滝れた式神ライはそれをゆっくりと飲む5人に聞く。
「ありがとう、ライさん。美味しいよ」
「まぁ、そんな……ありがとうございます、ヒノモノ様!」
探の爽やかイケメンスマイルにライは思わず顔を赤らめる。
「雲隠さん、あんたも罪作りな男やねぇ…… 2人目はとにかく3人目はやめといた方がええよ」
「?」
じいっと何か言いたげな眼で探を凝視する美香と茜。英里子の言わんとする事が分からない探は真顔で考え込む。
「ええと、ライさん。アンタさっきさ『話せることは無い』って百っていたけど……それってゴブガミに呪術的に口止めされてる的なサムシングなのか?」
そんな空気の中、ほうじ茶を飲み終えた須田丸は式神姉妹に尋ねる。
「ナルカミノモノさん、そうじゃねぇんだ。そもそも論になっちまうけど……主が御自ら真の姿でお相手なさるのはアンタらが最初なんだよ」
「はいっ?」
フウの予期せぬ回答に5人の疑間形構文が重なり合う。
「いや、初めてってどういう事なの? そもそも100チームぐらいがこの宮でゴブガミ先生に挑んで倒し、先に進んだんですよね?」
美香は思考パニックのあまり急きこむように式神姉妹に問う。
「……ええミズノモノ様。試練に挑みし者がタメシヤノミコト様にカミイクサを挑むには通過点としてこの宮の試練を終えねばなりませぬ。しかしながらもののふ様、私はそれらのもののふ様方が戦った相手が主様であると一言でも申し上げましたでしょうか?」
「……ゴブガミじゃない? じゃあ誰と? ってまさか!!」
謎かけのような婉曲的表現で2人が言わんとする事に気が付いた茜は、思わず目の前の式神姉妹を指さしてしまう。
「その通りでございます、カゼノモノ様。
主はかつてチノミヤノミコト様と並ぶ能力を持つ武神として五武神長の座も打診された大いなる存在。その強大すぎる力故に宮主としてもののふと直接対決を禁じられてしまい、代わりに我ら2人が宮主代理として風乃宮の試練運営を任されたのでございます」
宮の最深部を目指すもののふ達が行き詰まらないような浮島ルートの設定や、ほどほどの妨害行為、魔物の戦力配備……それらを全て2人で行っていたと言う情報と全てが繋がった茜は色々な意味で納得する。
「なるほどなぁ……あの戦闘力やべぇチノミヤさんと同等なら色んな意味で納得だわ」
「そう言えばチノミヤさん、人の姿でもノーダメだったんですよね……あの人があんな巨大な真の姿になったら私達どうなっちゃていたんでしょうか?」
「さあ、としか……でもごぉれむ相撲で良かったとしか言えない」
仮にシン・ゴブガミを倒せたとしても最終カミイクサで待ち構えるタメシヤノミコトとはそれよりも強い。突如目の前に降ってわいた超えられそうにない二重の壁に5人の心が折れそうになる。
「まあまあ、そう悲観せずにさぁ……ポジティブに行こうよ、君達!!」
「主様!」「ゴブガミ先生!?」
五武神としての白狩衣&烏帽子姿ではなくYシャツにネクタイ、スーツ上着とズボン姿で書類クリアーファイルを持った壇条学院歴史クラス教師の姿でセーフティルーム浮島に現れたゴブガミに7人は式神ライの大事なホワイトタイガー敷物にお茶をこぼしそうになる。
「君達が連日作戦会議を頑張ってボクに挑んでくれるのは嬉しいんだけどさぁ……『ゴブガミ立ち入り禁止!!』なんて意地悪な張り紙を部室ドアにしているせいで渡さなきゃいけない物も渡せないのよ?……もう時間があんまりないけど2週間後に迫ったこれの件、どうする?」
ゴブガミ顧間はクリアーファイルから取り出したプリントを5人に渡す。
『壇条学院祭部活動出店申請書:部活動出店枠』
「学園祭……そう言えばそんなのもありましたね!!」
オカルト研究会が歴史研究会の部室乗っ取り状態から正式な部活動に昇格したのはつい数か月前。それにより得られた壇条学院学園祭への部活動枠出店権。
「へえ、ウチがこんなもんもらえる日が来るなんてなあ……長生きはしてみるもんやね!」
英里子は(自称)反権威主義者である事も忘れて書類の質感と堅苦しい文言を一字一句愛でる。
「へえ、文化部はこういう申請を行うんすね……俺、運動部だったから初めて見るっすよ」
元壇条学院生とは言え、ラグビー部所属だった須田丸は初めて見る書類を周回読みする。
「学園祭か……。ゴブガミ先生、悪いが私達にはもう時間がないから……」
「新入りヒラ部員の御鐵院くん! キミが資本主義の神だとしても決定権はオカルト研究会部長たるウチにあるんやで?」
「新入リヒラ!?」
もはや矯正しようのない罵詈雑言女だと諦めてはいたが、予期せぬ新罵倒パワーワードに茜は言い返す言葉を失う。
「皆、今日のマヨイガダンジョンは終わりや! 各自お家に帰って明日までに学園祭の企画と出し物を考えてくること! ええな!」
「了解!!」
【第76話に続く】
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる