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第69話

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「もののふ様に皆様、粗茶でございます」
「おう、悪いな! ありがとなタタラ!」
 タタラの工房の奥にある畳の客間に通された5人のもののふとカゼノミヤの眷族属式神姉妹のフウ・ライ。そしておまけのシルバーデストロイメン。
 鉄瓶で沸かしたお茶の湯飲みと小皿に乗せたようかんと黒文字をもののふ達とシルバーデストロイメン、式神ライの前に置いたタタラはなみなみと注がれたどんぶりの如き茶器と大ぶりなようかん1棹を乗せた大盆を式神フウの前に置く。
「わかってるじゃねえの、タタラ! ありがとな!」
 式神ライは上機嫌でどんぶり茶器のお茶をぐびぐびのみ、大ぶりなようかんを豪快に丸かじりする。
「……で、あんたら何しに来たんや? おやつ食うためだけとか言わせんで?」
「そういやアタシら何しに来たんだっけ、ライ?」
 英里子の言葉にフウは隣で穏やかに茶をたしなむ妹に間う。
「雲隠の若御館様、我らは主たるカゼノミヤ様より言伝をお持ちしました」
「……ゴブガミから伝言?」
 正座の足をずらして、腰巻をめくり白くなまめかしい足の間から達筆な書状を取り出すライを前に壇条学院オカルト研究会、マヨイガ探索隊メンバーは緊張の面持ちで身構える。
「では読み上げますね……おほん」

『4つの試練を乗り越え最後に我が宮に挑まんとする壇条学院オカルト研究会の諸君、我が名はゴブガミこも……とは別人の五武神カゼノミヤである。これまでのそなた等のカミイクサ、実に見事であった。その武勇と覚悟、リア充し……ではなく慈愛の心と友情に応じるべく、この最後のカミイクサは私が真の姿で君たち皆の相手をいたそう。
 我が眷属式神を案内人として送るのでついてくるがよい』
「カゼノミヤ様が御自ら出陣なさるだと……! しかもあの御姿で!?」
「オマエラ、オレ、シンユウ。ホネハ拾ッテヤリテェガ……デキナクテモモンク言ウナヨ!」
 書き損じ斜線だらけの書状を畳んで腰巻の中にしまうライを前に同席していた式神タタラとシルバーデストロイメンは青ざめる。
「タタラ、今の話って……そんなにヤバイ事なのか?」
「ええ、もちろんでございます! 私は中立であらねばならぬので仔細は言えませぬが……とにかくご武運をお祈りします」
「言ッテヤルガ、死ヌンジャネエゾ!!」
「タタラ、デストロイメン。己の立場をわきまえてくれてありがとう。とても嬉しいわ……そういうわけでございます、もののふ様方。カゼノミヤ様が三日三晩かけて考えたと言う変身ポーズを披露したくてうずうずしておりますので我々と共に主がお待ちの『風ノ間』までご一緒願えますでしょうか?」
「ちなみに嫌だってのは無しだからな! アタシらだって遠路はるばる来たし仕事なんだ……わかってくれよな雲隠の若御館さん?」
 2棹目のようかんを平らげつつある式神フウは傍らに置いていた白い大袋の口紐に手を置きつつニヤリと笑う。
(茜さん、どうすればいいんですか、あの2人かなりの手練れですよ!?)
 探から離れて座っていた美香は隣のサブリーダー・茜に小声で聞く。
(それは私も分かっている……とにかく雲隠の判断を待て)
(いざとなれば俺が盾になる)
(ウチも全力で行けるで)
 いざという時は相手が何者だろうと一矢報いる。そう覚悟を決めた4人は探リーダーを信じてその返答を待つ。

「フウさん、ライさん。ご案内よろしくお願いいたします」
「あれえ? ライ、話が違くね? 荒事になるだろうって言うからアタシが来たのに意味なくね? つまんねえから風袋開けていいか?」
 探の穏やかな物言いにものすごく不満そうなフウは口紐を緩めようとする。
「姉さま、今日はようかんを2竿も食べた事ですじ……糖分の取りすぎはよろしくないので夕餉は湯漬け一杯で済ませましょうか」
 飲み終えた湯飲みを置いたライは姉を脅す。
「申し訳ありませんでした! それだけはお許しください!」
「分かればいいのですよ、お姉さま。タタラ、デストロイメンさん……もののふ様方の装備新調は終わっていますね? もう戦場に出ても大丈夫なのですか?」
「はい、大丈夫でございます」「問題ナイ」
「ではもののふ様方、主の下へご案内いたしますので……参りましょう」
「よろしくお願いします」「ありがとな、お2人さん」「頼むぞ」
 立ち上がった式神姉妹の後に続いて探を筆頭に立ち上がった4人のもののふは連れ立って畳の間を出て行く。

「タタラ、オマエドッチニカケル?」
 畳の間に残されたシルバーデストロイメンは客人の食器を片付けるタタラに問う。
「そうですね、確実な勝ち目と言う意味ではカゼノミヤ様一択ですが……私は忠義を果たすべく雲隠の若御館様の勝利に賭けましょう」
「ソウカ……ナラ機械ノ俺様、カゼノミヤニカケル。俺様ダイショウリマチガイナシ!」
 シルバーデストロイメンはようかんとお茶を片付けつつ答えるのであった。

【第70話に続く】
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