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第66話

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『ヒートオーバードライブ!!』
 天球に浮かぶ北斗七星を見上げすとも、須田丸は骨の1つも残らない。
 それを確信した囚われのリーダー・探はせめて共に囚われの身となったマヨイガガールズだけでも助けようと鳥籠の格子を掴んで火神紋を発動。
『ケイコク! ケイコク! ヒトジチニツグ、タダチニムダナテイコウヲヤメヨ! タダチニムダナテイコウヲヤメヨ!』
 けたたましく響くアラートを完全無視して鉄格子を溶解させながら無理矢理広げていく。

「探! 五武神の様子が変だぞ!」
 そんな中、茜の言葉に下を見た探。
 それは遠目に見ても隠せない程の戸惑いと困惑のの表情のまま乱打を打ち込み続けるナルカミノミヤと無傷のままニュートラル状態を維持する須田丸だ。
「須田丸君!」
「無事なのか!?」
 英里子と美香、茜は今、この瞬間に眼下で起こっている異常事態に探が押し広げた格子の穴から頭を突き出して観察開始する。

(くそっ、うっとうしい女共め……見世物じゃないんだぞ!!)
 上から4人に観察されている事に気づいていたナルカミノミヤ。
 何故か謎の力ではじき返され、全く効いていない事はわかりつつも、武神の権威とプライドを賭けた大技であるそれを中断する事が出来なくなってしまった少年武神はひたすらに打ち込んでいたが、ゆらりと右腕を動かした須田丸にすぐにバックジャンプでリングの端に逃げて距離を取る。

「もうやめとけよ、今のアンタかっこわりぃぞ?」
 ナルカミノミヤに対し、大きな右手を広げて見せる須田丸は穏やかに止める。
「うっ、五月蠅い! 人の分際で…… !?」
 次の瞬間、謎の力で宙に浮いたナルカミノミヤ。テレフォンパンチに構えた須田丸に猛スピードで引き寄せられていく。
『ハイパワードライト!!』
 顔面にサポートスキル強化済みマッスル巨漢の右フックを叩きこまれ、マットに沈むナルカミノミヤ。
「これは御鐵院に殴られた姉ちゃんの分だ」
 須田丸は大ダメージを受けてもなお気合と根性で立ち上がろうとするナルカミノミヤの両足を掴みつつ宣告する。
「なっ……なにずるぎだァーッ!」
『スダマルパワードスイング!』
「うぎゃあああああああ!!」
 ナルカミノミヤの足を掴んだままハイパワード&ヴォルトアクセラート状態でジャイアントスイングを始めた須田丸。最初は悲鳴を上げられる程度だったそれは徐々に強力になり、そのものすごいパワーと遠心力で上下前後左右に揺さぶられるナルカミノミヤは声も出なくなってしまう。
「これが……主にアニキと華咲さんを危険な弾幕にさらした分だあああ!」
「ぎゃぼぁっ!」
 雄叫びと共に放り投げられたナルカミノミヤはロープに激突する。

「雲隠に華咲、そうなのか?」
 戦いを見守りつつこの口上を聞いていた茜は思わず探リーダーと美香に聞いてしまう。
「いや、ウチが言うのもどうやけどソレはちゃうやろ。この大技の下準備に必要だったとは言えただの八つ当たり&とばっちりやね」
 茜の違和感に英里子はぐうの音も出ないド正論で答える。

「さあ……まだお仕置きは終わってないぜ、神さんよぉ」
「まっ、参った……私のま……。おい、何をするつもりだ」
「まだ2人分も残ってるんだ……せっかくマヨイガ技名も思いついたんだから派手に決めねぇと俺もアンタも不完全燃焼だろ」
 ナルカミノミヤの言葉を遮った須田丸はぐったりしたナルカミノミヤを担ぎ上げ、マフラーを巻くような感覚で首にかけながら肩の上に乗せる。
『アンチマグネティックハイジャンプ!!』
 腰をかがめた須田丸は肉体強化とか云々ではない速度で飛び上がり、遥か遠くの見果てぬ空ヘー直線にスカイロケットアタックしていく。

「なっ、なんだあの人間離れした跳躍力は……!?」
 仲間として雷マヨイガエレメントを活かした原理は聞いていたものの、『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』を体現したような超常現象そのものな動きに格子の隙間から顔を突き出す茜は驚きの叫びをあげる。
「フレミングの法則とかで電磁石については習っとったけど……須田丸君が『電磁力』をこんなに操れるようになるなんて、姉ちゃん感激やで!!」

 地乃宮のごぉれむ相撲の最中に起こったポルターガイストに超硬度のストーンゴーレム……ゼド村長も指摘していたとおりその正体は全て須田丸のマヨイガエレメント『雷』の新技だったのである。
 戦闘中、エレメントプラス・サンダーを自身や仲間に多用してきた須田丸は偶然にもその基礎技で対象に電磁石のように磁力を帯びさせられる可能性に気づき、意識的に磁石のプラスやマイナスの極調整が出来るように練習。
……かくして生み出された技が対象にプラスの磁力を付与する『マグネットプラス・ポジ』とマイナスの磁力を付与する『マグネットプラス・ネガ』だったのだ。
 こっそり土俵全体を強力なプラス磁カフィールドにしていた須田丸は2体のゴーレムにマイナス磁力を付与する事で疑似無重力状態にし、英里子とストーンゴーレムコアに相乗りした時ははコアユニットに強力なプラス磁力、その他の岩にマイナス磁力を付与する事で引きあってがっちり結合させたのである。
「信じがたいがあの大ジャンプは須田丸君はリングと鳴神乃間全体に付与したのとは逆の磁力を自らに付与したのか……」
 須田丸がマグネットプラス強化済みの機銃掃射で電磁石弾を物理的に埋め込み、同強化済みの鎧の破片をまき散らすことで少ない魔力で部屋全体を自らの磁界に仕立て上げた事に気づいた探はうなずく。
「流石は先輩、解説もお上手ですね! つまりあれはすごい豪快で科学的な戦法なんですね! と言うより……このままじゃ2人共落ちてきたら死んじゃいません?」
「あっ」「あかん」「えっ」
 美香に指摘されるまで忘れていた当たり前の事実に3人はようやく思い至る。

【第67話に続く】
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