ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください!

千両文士

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第62話

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「美味しいですか?」
 汗でビショビショになってしまった探の服を手早く洗濯機に仕掛け、キッチンの冷蔵庫にパック果物とヨーグルトをしまった美香はあえてレトルト食品に手を付けないで持参した米と卵とおかかに醤油で温かいおじやを調理。
 ベッド上でふうふぅしながらそれを食べる探を見守る。
「ああ、美味しいよ。ありがとう、美香さん」
 ほかほかのおじやを用意してくれた美香に探は感謝の気持ちを伝える。
「ありがとうございます! 私、昔からパパもママも仕事で帰らない事が多い鍵っ子だったんで……家事はもちろん 簡単な夕食ぐらいなら作れるようになったんです」
「へえ、そうなんだね」
「先輩は普段どんな物を食べているんですか?」
「僕も節約のため自炊派かな? ご飯は炊飯器のタイマーで仕掛けておいて煮物とか肉野菜炒め、豚肉の生姜焼きとかミニハンバーグ……そんな感じかな?」
「生姜焼きにミニハンバーグ……すごく美味しそうです! 元気になったら作ってください!」
「うん、いいよ。それよりごめんね……鳴神乃宮に挑もうというこのタイミングで風邪を引いてしまって。
 マヨイガ探索隊を率いる立場でありながら申し訳ない」
 温かい食事と風邪薬が効き始めて少し元気になり、部活動や学校の事を思い出せて来た探は美香に尋ねる。
「いえ、とんでもない! 茜さんも英里子ちゃんもすごく心配していたんですよ!
 まあ英里子ちゃんはいつもの英里子ちゃんでしたけど……茜さんや須田丸君もすごく心配してくれて、無理をしないで休んでくれ!との事でして」
「そうだったのか……みんな優しいんだな」
 探はほろりと呟く。
「全てが始まったあの告白の日からを思い返すと……色々ありましたね。
 マヨイガダンジョンに潜って巨大カタツムリ、蜘蛛女、大蝦墓、半魚人、イカのバケモノ、ロボット兵器、マッチョマン。色々な化け物と戦って……」
「美香さんとの出会いを皮切りに英里子部長と須田丸君と言う戦友に出会い、数年ぶりに世界的財閥令嬢の御鐵院さんと再開。そして先生に化けた武神がオカルト研究会の顧間に就任して……」
「あの時はブルマ英里子ちゃんと強制着換えキャットファイトになって……流石に恥ずかしかったですね。ブラとパンツだけならまだしも中途半端に上が制服なのが最悪でしたね……」
 下半身のみキャストオフ状態で廊下に飛び出てしまった悲劇を思い出してしまった美香は恥ずかしさのあまり顔を覆う。
「……今思ったんだけど、マヨイガダンジョン外のトラブルってそれを合めほぼ全て英里子部長が何かをやらかしたからだよね?」
「……親友として否定したいのは山々ですけど、『ほぼ全て』じゃなくて『全て』ですよ。先輩」
「ふふっ……」「うふふふふ……」
 たった二文字の差が笑いのツボに刺さってしまった二人は思わず顔を押さえる。

「あははは、その通りだね! ほぼを付けるなんて僕もまだまだだなぁ!」
「そうですよ、先輩!」
 呵々大笑、抱腹絶倒……二人はアパート内で笑い転げる。
「はははは……ゲホッ、ケホッ!!」
 慣れないハイテンションのあまり風邪引きである事も忘れていた探は咳き込む。
「先輩! お水です!」
 美香が慌てて差し出したスポーツドリンクを探はごくごくと飲む。
「すみません、先輩と2人っきりだからってはじゃいじゃって……冷え冷えシートを変えますね」
 ベッド上のおじや食器お盆を回収した美香はベッドで横になった探の冷却シートを取り換える。
「うん、美香さんのおじやでお腹も一杯になったし少し寝るよ……お休み」
「じゃあ私は洗濯物でも……ってもう寝ているんですか!? 早くないですか?」
 薬の力で熱と寒気が引き、気持ちよさそうに寝息を立てる探を美香はじっと見つめる。
(……マスクを付けてるから大丈夫だよね? ちょっとだけだから、いいよね?)
 美香は制服上着を脱いで、Yシャツの首元リボンを外して緩める。

 それからしばらくして……昼時の壇条学院、校内食堂。
『と、言うわけでバカ共の喧嘩両成敗を終えた俺がアニキの所に着いたらこうなっていたんだが……どうすればいいと思う?』
『華咲だけ鉄拳制裁で殴り起こせ、顔面限定だ。御鐵院の名の下、私が許す。』
『アンタも力づくでねじ入ればええよ、喧嘩でお疲れやろ?』
 2人の様子を見に戻った須田丸から報告を受けた茜と英里子は美香と探が仲良く1つのベッドに入り、手を繋いで幸せそうにぐっすり寝ている写真添付チャットアプリに辛辣なコメントで返す。
『殴るのも押し入るのもだめだろ!』
『とりあえず俺は洗い済みの洗濯物を干して食器を洗っとくわ。
 華咲さんが起きたら自宅に送っとくから姉ちゃんと御鐵院さんは学校頑張ってくれ』
『任せたで!』『頼むぞ、須田丸』
 学生の本分を果たしている最中の英里子と茜は猫がサムズアップするチャットスタンプで須田丸を激励するのであった。

【第63話に続く】
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