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第57話
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ごぉれむ相撲『技』の第二試合。
もののふと五武神が乗り込む二体の巨大ゴーレムが土俵上で対峙する中、ぴちぴち衣装のマーメイドラウンドガール・コンニャは『ROUND TWO READY』のボードを掲げてゆっくりと腰をくねらせながら一周する。
「マヨイガギガンテス様、頑張ってえ!」「次こそ白星をぉ!」
「コンニャちゃんカワイィィ!!」「コンニャちゃん、体幹キレイ!|」
「ゥッホ、ウッホ、ウッホホォィ!」
「ドッチモガンバレ! ドッチモガンバレ!」
『さあはじまりました、第二試合。『技』のごぉれむ相撲! 今回はゴーレムサイズの武具を用いたカミイクサとなります!』
『我々も聞いておりませぬが双方、どのような武器をチョイスしたのでしょうか!? 実に興味深いです』
『うむ、わしの予測じゃがチノミヤ殿は大籠手。もののふは神紋刀であろうな』
『おおっと、ここで実況解説者の大胆予測が出ました!? ヒノミヤ殿、その心は?』
『うむ、チノミヤ殿は体術特化であるが故にそれしか選択肢が無い。
ここで負けたら終わりのもののふ達は手持ちで最強の武器を選ぶであろう。
飛び道具が禁止とあればヒノモノも愛用している刀でしかも最強クラスのモノで来るのが妥当だ……げほぉっ、げほっ、けほぉん! !』
ヒノミヤは慌てて水差しの水を飲む。
『なるほど、それはごもっともでしよう。では双方武器召喚してください|』
『神紋甲!』
『火焔太鼓!』『モーニングスターランス!』
大籠手を両腕に召喚装着したチノミヤゴーレム、左に大盾&右に長柄武器を持ったマヨイガギガンテス。油断なく構えた人と神は試合開始を待つ。
『開始!』
『うぉぉぉぉぉ!』
マヨイガギガンテスは瞬時に間を詰めて来たチノミヤゴーレムの正拳突きを大盾・火焔太鼓で受け流し、すぐにモーニングスターランスの握り部分を前にずらす。
『トゲコンボー!!』
ふざけた奇声とは裏腹に強烈な打撃を頭部に叩きこまれたチノミヤはすぐにバックジャンプで距離を取る。
『逃さんで!』『水神紋強化、エレメントプラス・アイス!』
強烈な冷気を帯びたモーニングスターランスによる突き攻撃はチノミヤゴーレムのボディにダメージ蓄積しつつ確実に打ち砕き、一方的ダメージを与え続けて行く。
『あれはチノミヤ英里子殿の愛用武器・モーニングスターランス、そうに違いない!』
『そしてあの盾はもののふ様方がかつてヒノミヤ殿とのカミイクサで用いたそれそのものです! ヒノミヤ殿、なぜ彼らは再びあれを手に取ったと思われますか?』
ガンモとサツマは実況解説席を見るが、座っているのはゼド村長1人だ。
『うむ、チノミヤ殿は腹が痛むと厠に行ってしまったきりなので私が答えよう。
私が以前読んだ人間界の兵法書によると大盾と長柄物を持たせた兵士の隊列は敵を近づかせず、一方的に遠距離攻撃できる無敵戦法として洋の東西問わず多用されて来たらしい。
今回は遠距離武器禁止の巨大ごぉれむ同士の戦いなので勝手が違うのは否めないが……接近戦を好むチノミヤ殿にとっては冷気のせいで掴み止める事も出来ず、距離を詰めるのも難しい相手なのは間違いないだろう』
一度マイクを置いたゼド村長は水差しを手に取り、一口飲む。
『これは私の言葉ではないが、『長柄物に刀で挑むには三倍以上の実力差が必要』とも言われるぐらいだ。先ほどの虎と猫の例えで言えば今回は虎と虎の激闘になる事は間違いない』
『……なるほど、流石はゼド村長殿! 解説ありがとうございました!』
インテリ武人・ゼドの知的解説に切り返せなかったお祭り男達は無理やりそれっぼくまとめる。
(くそっ、このような策に出るとは……恐るべき策士よ!)
ヒノミヤと同じ思考に基づき、徒手空拳に勝手が近い得意武器を選んだチノミヤ。
切れ味の日本刀とパワー打撃特化型の大籠手と言う同じマヨイガウエポンでも武器の相性的に圧倒的有利なそれで武器破壊勝利を考えていたチノミヤは敵の想定外の武器チョイスに防戦一方となっていた。
(このままでは押し出されてしまう! だがあれを掴み止めたら……我がゴーレムの手もただではすまぬ!)
もののふ達が先刻の戦法にならい鉄球の棘にエレメントプラス・ウィンドで旋風を纏わせてモーニングスターをミニドリル化し、岩のみで作られたゴーレムを削り壊す戦法を用いないでマヨイガエレメント相性的にダメージ効果が薄い強力な冷気を付与している理由を察していたチノモノは神紋甲でガードしつつも対策を考える。
(かくなる上は!!)
スピード勝負の賭けに出たチノミヤは両手を胸の前に突き出し、大きく開いた合掌の姿勢を取る。
『エイメェェン!!』
背中に大盾を移動させ、槍を両手持ちに切り替えたマヨイガギガンテスは力を込めた突きを食らわせようとする。
『ぬうん!』
それを合掌ポーズで受け止めたチノミヤゴーレム。
両手が冷気で固められていく事を予測していたチノミヤはそれを逆了して一気に投げ飛ばそうと腰に力を入れる。
『エレメントプラス・プラスサンダー!』『エレメントプラス・マイナスサンダー!』
『トルネードブースター!!』
『みっ、皆様……これは何が起こっていると言うのでしようか?』
『ヒノミヤ様、ゼド村長! これはもののふ様の力なのですか!? すぐに解説を!』
支援要員2人が未知のマヨイガエレメント技名を叫んだ瞬間、足が地面を離れて宙に浮いてしまった2体のゴーレム。そしてマヨイガギガンテスの背中で暴風を吐き出した火属性の大盾・火焔太鼓。
モーニングスターランスもろとも土俵外に押し出されて尻もちをついているチノミヤゴーレムが相撲のルール的に負けた事は明らかなのだが、何が起こったのか理解できていない実況解説者達は目を見開いたまま首を横に振って職務放棄宣言する。
『とりあえず……もののふ様方の勝利と言う事でよろしいのでしょうか?』
実況解説者達は目を見開いたまま首を縦に振って是認する。
『カミイクサ第二試合、『技』のゴーレム相撲……押し出しでもののふ様方勝利です!!』
「いぇぇぇぇぇい!!」
オカルト研究会マヨイガ探索隊のサポーター、人魚族席エリアから大歓声が上がる。
(反応データは取れたか?)
デストロイメン軍団席、その最前列に座った白狩衣に烏帽子、仮面姿の五武神・ナルカミノミヤは隣で勝利のロボダンスを踊るデストロイメンに小声で尋ねる。
(モチロンデス、アルジ)
(そうか、では解析しておいてくれ。頼むぞ)
(リョウカイ)
(くくく……面白い奴らだ! 特にあのデカブツ……嬲りがいがありそうだな)
勝者を讃えるロボダンスを続けるデストロイメンの隣で少年五武神・ナルカミノミヤは仮面の下で薄気味悪く笑うのであった。
【第58話に続く】
もののふと五武神が乗り込む二体の巨大ゴーレムが土俵上で対峙する中、ぴちぴち衣装のマーメイドラウンドガール・コンニャは『ROUND TWO READY』のボードを掲げてゆっくりと腰をくねらせながら一周する。
「マヨイガギガンテス様、頑張ってえ!」「次こそ白星をぉ!」
「コンニャちゃんカワイィィ!!」「コンニャちゃん、体幹キレイ!|」
「ゥッホ、ウッホ、ウッホホォィ!」
「ドッチモガンバレ! ドッチモガンバレ!」
『さあはじまりました、第二試合。『技』のごぉれむ相撲! 今回はゴーレムサイズの武具を用いたカミイクサとなります!』
『我々も聞いておりませぬが双方、どのような武器をチョイスしたのでしょうか!? 実に興味深いです』
『うむ、わしの予測じゃがチノミヤ殿は大籠手。もののふは神紋刀であろうな』
『おおっと、ここで実況解説者の大胆予測が出ました!? ヒノミヤ殿、その心は?』
『うむ、チノミヤ殿は体術特化であるが故にそれしか選択肢が無い。
ここで負けたら終わりのもののふ達は手持ちで最強の武器を選ぶであろう。
飛び道具が禁止とあればヒノモノも愛用している刀でしかも最強クラスのモノで来るのが妥当だ……げほぉっ、げほっ、けほぉん! !』
ヒノミヤは慌てて水差しの水を飲む。
『なるほど、それはごもっともでしよう。では双方武器召喚してください|』
『神紋甲!』
『火焔太鼓!』『モーニングスターランス!』
大籠手を両腕に召喚装着したチノミヤゴーレム、左に大盾&右に長柄武器を持ったマヨイガギガンテス。油断なく構えた人と神は試合開始を待つ。
『開始!』
『うぉぉぉぉぉ!』
マヨイガギガンテスは瞬時に間を詰めて来たチノミヤゴーレムの正拳突きを大盾・火焔太鼓で受け流し、すぐにモーニングスターランスの握り部分を前にずらす。
『トゲコンボー!!』
ふざけた奇声とは裏腹に強烈な打撃を頭部に叩きこまれたチノミヤはすぐにバックジャンプで距離を取る。
『逃さんで!』『水神紋強化、エレメントプラス・アイス!』
強烈な冷気を帯びたモーニングスターランスによる突き攻撃はチノミヤゴーレムのボディにダメージ蓄積しつつ確実に打ち砕き、一方的ダメージを与え続けて行く。
『あれはチノミヤ英里子殿の愛用武器・モーニングスターランス、そうに違いない!』
『そしてあの盾はもののふ様方がかつてヒノミヤ殿とのカミイクサで用いたそれそのものです! ヒノミヤ殿、なぜ彼らは再びあれを手に取ったと思われますか?』
ガンモとサツマは実況解説席を見るが、座っているのはゼド村長1人だ。
『うむ、チノミヤ殿は腹が痛むと厠に行ってしまったきりなので私が答えよう。
私が以前読んだ人間界の兵法書によると大盾と長柄物を持たせた兵士の隊列は敵を近づかせず、一方的に遠距離攻撃できる無敵戦法として洋の東西問わず多用されて来たらしい。
今回は遠距離武器禁止の巨大ごぉれむ同士の戦いなので勝手が違うのは否めないが……接近戦を好むチノミヤ殿にとっては冷気のせいで掴み止める事も出来ず、距離を詰めるのも難しい相手なのは間違いないだろう』
一度マイクを置いたゼド村長は水差しを手に取り、一口飲む。
『これは私の言葉ではないが、『長柄物に刀で挑むには三倍以上の実力差が必要』とも言われるぐらいだ。先ほどの虎と猫の例えで言えば今回は虎と虎の激闘になる事は間違いない』
『……なるほど、流石はゼド村長殿! 解説ありがとうございました!』
インテリ武人・ゼドの知的解説に切り返せなかったお祭り男達は無理やりそれっぼくまとめる。
(くそっ、このような策に出るとは……恐るべき策士よ!)
ヒノミヤと同じ思考に基づき、徒手空拳に勝手が近い得意武器を選んだチノミヤ。
切れ味の日本刀とパワー打撃特化型の大籠手と言う同じマヨイガウエポンでも武器の相性的に圧倒的有利なそれで武器破壊勝利を考えていたチノミヤは敵の想定外の武器チョイスに防戦一方となっていた。
(このままでは押し出されてしまう! だがあれを掴み止めたら……我がゴーレムの手もただではすまぬ!)
もののふ達が先刻の戦法にならい鉄球の棘にエレメントプラス・ウィンドで旋風を纏わせてモーニングスターをミニドリル化し、岩のみで作られたゴーレムを削り壊す戦法を用いないでマヨイガエレメント相性的にダメージ効果が薄い強力な冷気を付与している理由を察していたチノモノは神紋甲でガードしつつも対策を考える。
(かくなる上は!!)
スピード勝負の賭けに出たチノミヤは両手を胸の前に突き出し、大きく開いた合掌の姿勢を取る。
『エイメェェン!!』
背中に大盾を移動させ、槍を両手持ちに切り替えたマヨイガギガンテスは力を込めた突きを食らわせようとする。
『ぬうん!』
それを合掌ポーズで受け止めたチノミヤゴーレム。
両手が冷気で固められていく事を予測していたチノミヤはそれを逆了して一気に投げ飛ばそうと腰に力を入れる。
『エレメントプラス・プラスサンダー!』『エレメントプラス・マイナスサンダー!』
『トルネードブースター!!』
『みっ、皆様……これは何が起こっていると言うのでしようか?』
『ヒノミヤ様、ゼド村長! これはもののふ様の力なのですか!? すぐに解説を!』
支援要員2人が未知のマヨイガエレメント技名を叫んだ瞬間、足が地面を離れて宙に浮いてしまった2体のゴーレム。そしてマヨイガギガンテスの背中で暴風を吐き出した火属性の大盾・火焔太鼓。
モーニングスターランスもろとも土俵外に押し出されて尻もちをついているチノミヤゴーレムが相撲のルール的に負けた事は明らかなのだが、何が起こったのか理解できていない実況解説者達は目を見開いたまま首を横に振って職務放棄宣言する。
『とりあえず……もののふ様方の勝利と言う事でよろしいのでしょうか?』
実況解説者達は目を見開いたまま首を縦に振って是認する。
『カミイクサ第二試合、『技』のゴーレム相撲……押し出しでもののふ様方勝利です!!』
「いぇぇぇぇぇい!!」
オカルト研究会マヨイガ探索隊のサポーター、人魚族席エリアから大歓声が上がる。
(反応データは取れたか?)
デストロイメン軍団席、その最前列に座った白狩衣に烏帽子、仮面姿の五武神・ナルカミノミヤは隣で勝利のロボダンスを踊るデストロイメンに小声で尋ねる。
(モチロンデス、アルジ)
(そうか、では解析しておいてくれ。頼むぞ)
(リョウカイ)
(くくく……面白い奴らだ! 特にあのデカブツ……嬲りがいがありそうだな)
勝者を讃えるロボダンスを続けるデストロイメンの隣で少年五武神・ナルカミノミヤは仮面の下で薄気味悪く笑うのであった。
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