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第53話

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「あの、君達いいかな……ってもう手遅れかぁ……」
「なんや、ゴブガミ」
「いや、ボクが口出しするのはどうかと思うけどさ……多分、あの真面目の塊な人の事だから全力でデカイのを創生して挑んで来るよ? ボクは風の五武神だから出来ないけど彼の内蔵魔力から推測するに20は無理でも10数メートル級のサイズにはなるんじゃないかな」
 ゴブガミの言葉に4人は固まる。
「ごぉれむ相撲と言うカミイクサ自体はいいと思うけどさ、せめてゴーレムの最大サイズとかを交渉指定してからOKするべきじゃなかったかなぁ……」
 オカルト研究会部室がお通夜ムードになる中、英里子スマホの着信通知が鳴る。
「……みんな、ごめんな」
 そのチャット画面に表示されていたのはチノミヤからの返信で憤怒の炎を背に纏って腕組みする三面六青な阿修羅の『上等だ』メッセージスタンプだった。
「英里子ちゃん! 今からでも遅くないから失礼ごめんないメッセージして!!」
 神をも恐れぬトンデモ災厄女とは言え、そのやりすぎな挑発が招いた事態に英里子の首元を掴んだ美香は締め上げつつブンブン揺さぶる。
「今回ばかりは……英里子ちゃんが泣いて謝っても揺さぶるのをやめないから! 許さないから!」
「美香ちゃん、スマン! 本当にすまんかった! 許してくださあい!」
 半泣きの英里子と美香を3人は必死で引きはがす。

「落ち着いたか2人とも?」
「はい……すみません」「ああ、ウチもやりすぎたわ……すまん」
 オカルト研究会部室。友情決裂した美香と英里子をゴブガミと茜が取り押さえている間に探が購買自販機ダッシュで買ってきた紙パックヨーグルトドリンクをちうちう吸って落ち着いた2人は素直に謝る。
「まあ気にするな……我々も10数メートル級のゴーレムを創生搭乗して挑めばいいだけの話だ。むしろ敵の手の内を知れてラッキーだったな」
 茜は醜態をさらした2人を責める事無く冷静に会議を進める。
「その話やけど……ウチ単体の人型搭乗タイプだと5、6メートルが限界やで?
 ジョンやマルゲリータでも7メートルが最高サイズやし」
「美香さんはミズノミヤ様が創生していたアイスゴーレム的な物は作れるのか?」
「ううん……私は小粒なスライムちゃんとかは良く作るんですけど。ゴーレムは上手く出来ないですね。あれは英里子ちゃんの芸術センスあってこその技ですから」
「雲隠さんの火のマヨイガは……火球は固形物ではないから何も出来ないわね」
「固形物……雲隠さん、あんた溶岩とか作れる?」
「溶岩……ってあの火山とかのアレ?」
「この前周回読みしとった少年アクション漫画で主人公の仲間の炎使いと敵の溶岩使いの熱っつい激突シーンがあったんや。ここから数ページ読んでみてくれや」
 英里子がスマホ電子書籍で見せて来た漫画を探と美香は読んでみる。

「ああなるほどね……この炎使い、右腕をマグマに喰い溶かされてもなお『俺にはまだ左がある!』って突っ込むなよ。ここでやめとけばよかったのに」
「戦いを見守る主人公達が無駄死にするなあ! って叫んでるのに……この人バカですか?」
 探と美香は英里子にスマホを返しつつ感想を述べる。
「うん、それはネットのファン界隈でもよく言われとるんや。ウチも何故作者がコイツを殺したかわからん。それはさておきや……雲隠さんはマグマとか出せるんか?」
「ううん、僕個人で試したことは無いけど……英里子部長の大地のマヨイガエレメントと組み合わせれば出来るかもしれない。でも急に何で?」
「いや、じつはこの溶岩使いがウチと同じような事をやっとる展開があるんや。
 だから雲隠さんも協力してくれんかなと思うて……」
「協力?」
 ホワイトボードに向かった英里子は一番太い黒マーカーを手に取る。
「ああ、今の流れの中で何となくやけど思いついたん搭乗型ゴーレム強化プランや。
 その名も……これや!! ドオォォン!!」
 ホワイトボードマーカーとは思えぬ程荒々しい筆致で書かれた『五人合体・ギガントゴーレム!』に4人は息を呑む。
「五人合体…… と言う事は全員のマヨイガエレメントを使うと言う事? でもどうやって? どういう風に?」
「今からそれを言うんや。それより早う写真撮っとかんとこれ消してまうで?」
 ホワイトボードイレーサーを手に取って横にずれた英里子を前にスマホを慌てて取り出した4人はカメラで奇跡の達筆を撮影記録する。

【第54話に続く】
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