ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください!

千両文士

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第37話

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 数日後、壇条学院オカルト研究会部室。
 オカルト研究会の廃部を決める出来レース『壇条学院生徒会緊急審議』の結果通達を待つ室内は異様な空気に包まれていた。

「猫ふんじゃった♪ 猫ふんじゃった♪ 猫ふんじゃったぁら鳴いちゃった♪」
 あまり気持ちがいいとは言えない歌を歌いながらスマホゲーに興じる上機嫌な英里子。
 そしていざとなれば部長のスマホを奪って破壊する事も辞さない探と美香。
 一触即発の張りつめた空気の中、施設棟の階段を昇る足音が聞こえだす。
「歴史研究会の皆さん、生徒会の者です」
「はぁぃ、どぅぞ」
 英里子はスマホを持ったまま立ち上がって扉を開ける。

 緊急審議会結果通告と共に険しい表情でオカルト研究会部室に入室した御鐵院生徒会長と足尾(あしお)副生徒会長、そして堂山(どうやま)書記官と言う壇条学院生徒会の3トップ。
「壇条学院生徒会による緊急審議の結果、全委員会満場一致で歴史研究会は強制廃部となる事が決まった!」
 部員として後ろから見守る探と美香の予想に反して英里子は副生徒会長の通告を無表情で聞いているが、目の前の3人に物理的反撃もしくは手元のスマホでサイバーテロを決行する可能性を捨てきれない2人はすぐに動けるように身構えたまま固唾をのんで見守る。
「歴史研究会は数日以内に不当占拠中の施設棟501号室を退去し、高等部1年B組・呉井英里子を部長とする新部活動・オカルト研究会に明け渡す事を命じる!」
「えっ?」「なんやて?」「どういう意味ですか?」
 この予期せぬ展開に3人は思わず聞き返す。
「順を追って説明しますとぉ……あなた方3人が所属している歴史研究会はもう存在しませんから3人共ここから出て行きやがれ。そしてこの部屋は今後オカルト研究会と言う新設部活動の部室となりますって事ですよ」
 通告を終え、一歩下がった副生徒会長に代わって前に出た堂山(どうやま)書記官は茶封筒を英里子に手渡しつつ抑揚のない声で解説し始める。
「はい」
「そして文化部管理委員会の厳正な審査により、高等部1年生の呉井英里子さんがその新文化部『オカルト研究会』の部長に任命されましたって事です」
「うん」
「この封筒には呉井さんに署名していただく部活動長就任承諾書と、五武神先生署名済みの顧問就任承諾書が入っています。そして2人分の入部届は必要があれば使ってください。
 ちなみに部活動内容は適当で構いませんけど、とりあえずUFOを呼んで学院生をキャトルミューテーションするとか黒魔術で悪魔召喚するみたいな生徒会に迷惑をかけるような事はしないでくださいね?」
「……ありがとな、生徒会さん」
 黙して語らずに徹してはいるが、茜の大岡裁きに英里子は感謝の気持ちを示す。
「どういたしまして、では来週月曜日までに書類を揃えて生徒会に提出してくださいね!」
 生徒会三人衆は一礼し、オカルト研究会部室を出て行った。

 その日の夜、迷処駅前ロイヤルガスト。
「ではご注文を確認いたします。ロイヤルBLTサンドが1つ、ロイヤルスペシャル和風パフェが1つ、ガーリックトースト&フライドチキンバスケットが1つ、目玉焼きハンバーグ&ライスセットが1つ、ロイヤルビーフシチュー&フランスパンセットが1つ。そして本格インドドライカリーが1つ、以上でよろしいでしようか?」
 6人の常連大所帯グループの注文を取ったウェイトレスは長いメニュー名を息継ぎ無しで一気に復唱する。
「はい、大丈夫です」
「問題ありませんぞ、よろしくお願いいたします」
「ではお待ちくださいませ!」
 それに答えたイケボなイケメンとスーツを着こなすオールバックなダンディ老紳士にウェイトレスはにこやかに答える。
「まずは……御鐵院さんに感謝や!」
 保護者兼お目付け役である宮守執事と共にロイヤルガストに来店した御鐵院茜にオカルト研究会メンバーは拍手を送る。
「べっ、別に勘違いしないことね! 私は御鐵院家の先祖代々の使命を果たすためにオカルト研究会が役立つと合理的判断しただけだけよ! お前達の生殺与奪権は私がまだ握っている事を忘れない事ね!」
 ブラウスにスカートな私服姿の茜は顔を真っ赤にして強がる。
「美香ちゃん、このツンデレわかりやすいのう。顔にはっきり書いてあるわ『雲隠君は私のモノよ! 後発のお前になど渡さないわ』って……せっかくGETした玉の輿系彼ピッピ奪われんように気を付けるんやで」
「なっ、何を言うか……とにかくよ、私はお前との約束を果たしたわ。そちらも忘れたとは言わせません事よ?」
 英里子の一方的挑発攻撃を回避し、攻撃の流れを変えた茜は反撃準備に入る。
「ああ、わかっておる……ウチは約束は守る女やから安心してくれや。
 ええと確か……これやね。日付時刻が合っとるか見てくれん?」
「うん、うん……あれっ?」
 英里子が見せて来たスマホ画面に映っていたモノ。それはあの時の一糸まとわぬ茜の裸体ではなく、火乃宮内にある石組みの壁だったのだ!
「位置情報はとにかくとして撮影日時も合っとるし、クラウドに未バックアップ表示ついとるやろ? あの時ウチ言うたよな『ばっちりやで!』って」
「えっ、ええ。もちろんよ。その写真を私の目の前で消してくれればいいわ……」
 怒りや混乱を通り越して全てが色々な意味でどうでも良くなった茜は思考停止したまま答える。
「よし、消去ボタンを押して……完了や!」
 それを聞いた英里子は茜の言う通りに壁写真を消去する。

(私利私欲のためにこの私を編して利用するとは……何てずる賢い女!)
 全員のメニューが揃い、和やかなロイヤルガストでの夕食。
 ロイヤルビーフシチューにフランスパンを浸してしみこませる茜は抹茶アイスやほうじ茶アイス、餡子や白玉に黒蜜をたっぷりかけた和風パフェを堪能する英里子を見つつそんな事を考える。
(あの美香とか言うカマトト女はさておき、私の未来の旦那様をあんな危険なヤツの近くにいさせるなんて考えるだけでもぞっとするわ! 明日にでもオカルト研究会に入部してヤツの動向を徹底監視しなくては……!)
 マヨイガエレメント『風』使いとして探索隊メンバーになった茜は決意も新たにビーフシチューのほろほろ肉にかぶりつくのであった。

【第38話に続く】
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