ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください!

千両文士

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第29話

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「……どうやら本当にいなくなったようだな」
 薄暗いドームから脱出できた4人は魔物がどこか近くに隠れていないか周囲を警戒する。
「そういえば先生は?」
 美香の一言に3人は顔を見合わせる。
「あれ? そう言えば……そうだぞ。ゴブガミ先生は?」
「先生ってあの平安時代コスプレ男だよな?」
「まさか自分だけ逃げたとか……」
「いや、流石にそれはないでしょ? ゴブガミ先生! どこですかあ!」
「ゴブガミ先生!」
「ゴブガミぃ! どこにおるんやぁ?」
「先生……ではないな、ミスターおじゃるGUY! どこにいるんだぁ!」
「フゴゴーッ! ンホーッ!?(その名前は何なんだ!?)」
「先生! ごぶじ……で?」
 少し離れた床にギャグボールを加えて逆エビ固め縛りで転がっていた五武神ゴブガミに気づいた4人の眼は瞬時に蔑みのモノに切り替わる。
「パシャッとな……ほな、帰ろか。須田丸君も一緒に緊急脱出するから身を寄せてくれんか?」
「あっ、ああ。わかった」
 スマホで変態教師のコスプレ束縛プレイ証拠写真を撮った英里子はステータス画面を開きつつ3人に言う。
「ンンーッ! ウウウーッ! (この人でなし! お前のテスト書き換えて0点にしてやるからな!)」
「いやいや、いくら神どころか人間の風上にすら置けない変態でもこんな場所に放り出すわけにはいかないよ! 
 先生、お怪我はありませんか?」
 ゴブガミに駆け寄った探はギャグボールを外し、麻縄を切りほどく。
「親切な雲隠君、本当にありがとう!お礼に次の定期テストで君の答案をこっそり直して100点にしてあげるよ!」
「……それは結構です。むしろ絶対にやらないでくださいね? それはさておき…… 5人でここを出ましょう!」

 それからしばらくして、ロィャルガスト迷処駅前店
「つまり俺は姉ちゃんや雲隠さん、華咲さんのように雷のマヨイガエレメントを使えるようになった。
 そしてマヨイガ探索者たる武士として認められた……そういう事なのか?」
「ああ、五武神の一角を担うボクの見立てだ。間違いないだろう」
 迷処山頂に残された火乃宮社経由で人間世界に帰って来たオカルト研究会メンバーとゴブガミに須田丸の5人は状況整理と早めの夕食を兼ねてロイヤルガストに入っており、フライドチキン&厚切リフライドポテトバスケットを注文した須田丸はゴブガミ教師の言う事に目を丸くする。
「そして須田丸君を誘拐してウチらをあそこに誘い込んだのはあの宮の主、ナルカミノミヤって奴なんやな?」
 新メニュー・ロイヤルトロピカルパフェを堪能する英里子はゴブガミに再確認する。
「ああ、間違いない」
「……とりあえず英里子ちゃんも軽傷で済んだし、全員無事だっただけでも良かったですね、先輩」
「ああ、そうだな美香さん。ひとまずは良かったと思う」
 コーヒーと紅茶をゆっくり啜りつつ2人は一息入れる
「この草食系バカップル共は何言うとるんや? ファミレスで昼間っから乳繰りあいよって……売られた喧嘩は百倍返ししてナンボや。そうやろ? 須田丸君。」
「あっ、ああ。そうっすね! 失礼ながら雲隠さんと華咲さんって……お付き合いなすってるんですか?」
「はい! そうなんです」
 美香はここぞとばかりに先輩の腕にしがみつく。
「お2人とも、おめでとうございます! こんなものしかありませんが……俺からの気持ちっす!」
 須田丸は小皿に分けたフライドポテトを2本のフォークと共に2人に差し出す。
「で、本題にもどるけどな……さっきも聞いたやろけどウチらメンバーが2人も足りんのや。須田丸君、今後もオカルト研究会の外部協力者としてマヨイガ探索に協力してくれんか?ゴブガミも許してくれるやろ?」
 ラージサイズロイヤルトロピカルパフェを食べる英里子は向かいに座るゴブガミ顧間と須田丸に問う。
「ボクは構わないよ。須田丸君はどうしたい?」
「もちろんOKっす!! 英里子姉ちゃん、ふつつか者ですが……これから摩詞不思議ダンジョン冒険頑張ります!!」
「おう、そう来んとな! 流石はウチの一番弟子や!」
 英里子はオカルト研究会マヨイガ探索隊新メンバーにして雷のマヨイガエレメント使い、須田丸の大きな手と自身の小さな手を重ねるのであった。

「まさかナルカミノモノが現れるとは……儂もかような剛の者と手合わせしてみたかったのう!」
 和ろうそくが灯る薄暗い板張りの間、大きな銅鏡を囲んですわる4人の自狩衣に烏帽子、白仮面の男女。
 その中の1人、熱湯胃洗浄の治療を終えて退院したばかりの老五武神・ヒノミヤは銅鏡を覗き込みつつほくそ笑む。
「カゼノミヤが居ないようだが……どうしたんだ?」
 黒いロングヘアの若い女性五武神は上座に坐するマッチョ五武神に尋ねる。
「うむ、ミズノミヤよ。カゼノミヤはとある別件で『さぼたあじゅ』だそうだが……その方が静かでよかろう。今日集まってもらった件は、我らが主タメシヤノミコト様より賜った詔の知らせだ」
 上座に座る五武神のリーダー、チノミヤが袖から取り出して開く8つ折りの紙に下座の3人は背筋を伸ばし、足を正す。

『五武神らよ、この度の儀の件大儀である。もののふらを必要あらば助け、万事とどこおりなく進めわらわの最終神戦に必ず挑ませよ』

 リーダーが読み上げた主からの詔に3人は深々と頭を下げる。
「……しかしながら4人のもののふらでは5つの神紋を揃えることは不可能でございます。チノミヤ殿、どうなさるつもりですか?」
「うむ、その件だが……我はこの者に賭けて見ようと思う」
 チノミヤが指を鳴らすと銅鏡が映し出すロイヤルガストの5人が消え、日本の空港でトランクを引いて歩く黒いセーラー服姿のロングポニーテール姿の若い女性が映し出される。
「この者はまさか……御鐵院の血筋ではないか?」
「ふむ……わらわの子で間違いない!」
「……ふふふ、これほどのもののふがまだ残っていたとは」
 3人の五武神は銅鏡が映し出す凛々しい女子高生をしげしげと眺める。
「異がある者はこの場で申すがよい」
 下座の3人は肯定の沈黙でそれに答えた。

【第30話に続く】
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