ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください!

千両文士

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第25話

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 午後、穏やかな光が差し込む壇条学院高等部校舎の廊下。
「五武神先生! さようなら!」
「はい、さようなら。気を付けて帰るんだよ」
「はいっ! あの、先生……」
 授業が面白くて分かりやすく、しかも細目系イケメンとして大人気の歴史教師・五武神 鳳一に挨拶を返してもらえた女子生徒達は朗らかな声で答える。
「ん? 何だい?」
「私達、料理部なんですけど……この前クッキーを焼きすぎちゃって。少しいかがですか?」
 五武神の正体と本性を知らない女の子たちはこのアピールチャンスを逃すまじとクッキーの入ったビニール袋を差し出す。
「へえ、美味しそうだね! 本当にいいのかい?」
「はい、食べてください五武神せんせ……」
「ゴブガミィィィィイェェェ!」
 女子生徒とイケメン教師。ありがちな禁断の展開になりかけたその時……咆哮の如き奇声を上げつつ般若も顔負けの鬼相で廊下を走って来たのは高等部1年生、オカルト研究会部長にしてトンデモ災厄女の呉井 英里子だ。
「呉井さん!?」
「今日と言う今日は……弥勒菩薩の英里子チャンもブチ切れやで! 部室に来いや!」
 弥勒菩薩どころか荒ぶる不動明王と化した英里子に恐れおののく3人に構うことなく五武神顧間の腕を掴んだ英里子は引きずるように施設棟に向かっていく

「ゴブカミ先生!」
「華咲さんに雲隠君! 助けて! 殺される!」
 美香と探はすぐにゴブカミ顧間の首根っこを掴んで部室まで引きずって来た英里子部長を引きはがして取り押さえる。
「こらぁ、放さんか雲隠ぇ!! オマェもただじゃすませんぞぉ!」
「部長! 事が事とは言え、流石にこれはやりすぎですよ! まずは事情を聞かないと!」
 小柄で華奢な女の子とは思えぬ程の1000万パワー級の抵抗をする英里子部長を持ち上げ羽交い締めにする探は必死で落ち着かせる。
「事が事? 何の事だがボクにはさっばり何だけど……あっ、どうも」
 ゴブガミは美香が手早く滝れてくれた冷茶をくいっと飲み干す。
「ゴブカミ先生、これを送ったのは……あなたですよね?」
 美香が付きつけたスマホの画面をゴブガミは三度見してしまう。

『ゴブガミ先生のマヨイガ探索tip vol.08
 スダマルハアズカッタ ナルカミノミヤニコイ』
「……いや、こんなものボクは送っていない。そもそもスダマルって誰?」
「本当に知らないんですか?……先輩、返答次第では英里子ちゃんを解放していいですよ?」
 凶暴野良猫の如く瞳孔全開にし、爪と牙をむき出しにした戦闘態勢でゴブガミに襲い掛かる気MAXの英里子を取り押さえている探は黙ってうなずく。
「いや、待ってよ! 本当にボクは知らないんだってば! この眼が嘘をついているように見えるかい? 探君も冗談抜きでその凶暴猛獣をしっかり押さえていてくれよ! とにかくだ、この件が事実ならタメシヤ様にお仕えする者として放置はしておけない。ボクも同行させてもらおう、変身!」
 ゴブガミ顧間は目にもとまらぬ九字切りで白狩衣に烏帽子の武神に戻り、部室のマヨイガポータル神棚に向かう。
「オカルト研究会の諸君、どうしたんだい? スダマルとやらを助けに行くんだろ」
「はっ、 はい!」
 ゴブガミと共に神棚の前に並んだ3人は一礼、二拍手、一礼する。

……マヨイガポータルの世界、光の間。
「ゴブガミ先生、これは……」
「ああ、おそらくあの脅迫メールは嘘ではないようだな」
「ゴブガミ様、申し訳ございません……」
「きにするな、タタラ。お前が無事なだけで十分だからな」
 女の子2人がフィッテイングルームで探索装備に着替えている間、赤いフード付きマント&二刀流装備の探と大弓と矢筒を背負った武神ゴブガミは鍛冶屋内で倒れていた住み込み門番でもある小鬼タタラから事情を聞いていた。
 だがタタラ自身もオカルト研究会の3人やゴブガミが来ないはずの時間に何者かがこの世界にやって来た直後に意識を失ってしまい、詳細は不明。
 そして3人の目の前にある鳴神乃宮への鳥居は完全に封を解かれて開放されており、ご丁寧な事に須田丸の大きな学ラン上着が笠木(鳥居の上、反った部分)にかけられている。
「まあ、探君と華咲さんの話で須田丸君の事はわかったけど……そもそも彼はあの狂暴猫チャンとはどういう関係なのさ?」
 女の子のお着換え中に探からコンビニでの一件を聞いただけのゴブガミは呟く。
「さあ……僕もよく……」
「須田丸はウチの幼馴染や」
 それに答えるのはメカニックゴーグル付きヘルメットに黒タンクトップ、半ズボンにブーツ。そして武器をバトルハンマーからより強力な棘鉄球を先端に取り付けた大型モーニングスターに切り替えた英里子。
 そして美香は先のすばまったズボンとシャツ上に胸当てと籠手を装着して青いフード付きマントを羽織り、ゼド村長からもらった水の魔導杖・マーメイドハートを装備している。
「お前ら、行くで……歩きながらゆっくり話ちゃる」
「イッ、イエッサー……」
(もののふ様、五武神様……ご武運をお祈り申し上げます!)
 英里子を先頭に鳴神乃宮に向かう3人を見送りつつタタラは心の中で呟く。

「ここが鳴神乃宮……?」
 これまでの石作りの地下道、氷室とは全く違う空間。
 謎のメーターやLED液晶上でモニタリング数値がせわしなく動き続け、時折上部のコイルが放電する謎機械の壁。ただ動き続けるベルトコンベアに煙で覆われた天丼のどこかから下がって来て何かを運んでいる大きなアームで構成された灰色の迷宮。
「宮って言うかディストピアSFの世界やないの……」
 英里子は思わず呟く。
「ああ、すごいな」「そうね……」
 退廃芸術的な美しささえ感じる幻想的な空間に3人が言葉を失っていたその時、ステータス画面が勝手にポップアップする。
『新着メッセージ1件あり:ゴブガミより』
「誘拐犯か!?」
『ゴブガミ先生のマヨイガ探索tip vol.09
 スダマルハココダ 』
 3人が誘拐犯からのメッセージを読み終えると同時に、真っ黒なマヨイガマップが勝手に開き光の点が現れる。
「ここから……北西、 かなり近いで!」
 現在地からの大体の方向を確かめた英里子はそちらの方に駆け出す。

【第26話に続く】
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