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第七章:『闇乃宮五ノ闘戯場/黒雷武神ナルカミノミヤ』
【第52話】
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『うえぇぇぇん、うわぁぁぁん!!』
『みかちゃぁん! ! みかちゃぁん! !』
『えぇん……えぇん……うぇぇぇぇん、うぁぁぁぁん』
生きたままホルマリン漬けにされ、苦痛のあまり目を見開いて喉を掻きむしりながら苦しむ美香の悲惨な最期を前に泣き声しか上げられない人魂達。
『そう騒ぐなサンと眷族のモノらよ……』
何を思ったのか文字通り泣くばかりの虫かごの方を見やりつつホルマリン漬けにされた美香のガラス管に触れるルイ。
『悪夢より開放されよ、水のもののふ』
美しい声で唱えられる詩のような詠唱。
次の瞬間、ヒビが入り始めたガラス管の隙間から青い液体がピュウピュウと漏れ出し始め、内部の水圧に耐えられなくなったそれは徐々に大きくなリバキバキと大きくなっていく。
『うぎゃあああ!! ウチのスイートホームが、スイートホームがぁ!!』
『人魂なのに臭い、マジで臭い!! 鼻が曲がるっす!!』
『なぜワシまでぇぇ!!』
ガシャァァァン!!と言う破壊音と共に内部から一気に粉々に割れ、青くてどろっとしたホルマリン液とガラス片を闇神乃間中にばら撒いた『命ノ宿命(サダメラレシサイゴ)』。
そのドロドロ液を虫篭にもろにくらった英里子とツミレ、ヒノミヤノミコト様は壮絶な匂いに悲鳴を上げる。
『けほっ、けほっ!! はぁ、はぁ、ぜぇぜぇ……わざわぎ、あそこから出すなんて……どういうつもりなの?』
具現化した悪夢から解放され、全身青いドロドロの液体まみれで床に倒れた一糸まとわぬの美香は必死で呼吸をしつつ目の前の死巫女ルイを睨む。
『深い理由は無い、全てはわらわの気まぐれじゃ。ものども、出てまいれ』
『にゃぁ』『にゃぁ』『にゃぁ』
ルイに呼ばれて神乃間の暗闇からわらわらと現れる黒猫達。
『このような粘液と硝子片だらけではわらわもそなたらも不快で危険じゃ。まずは掃除をせよ』
『にゃぁん!!』
どこからともなく大量の雑巾と水の入った手桶、ちりとりとホウキを取り出した黒猫達は器用にヌメヌメ液の拭き掃除とガラス片の回収を始める。
『そなたらは水のもののふ殿の身を清め、替えの衣を着せてやるのじゃ。その後、軽い食事を出してやるがよい』
『みやお!!』
どこからともなくドラム缶とお湯入りやかん、石鹸、シャンプー&リンス持ってきた黒猫軍団は手早く五右衛門風呂を用意。 ドロドロまみれのまま床に倒れた美香下に体を差し入れるように持ち上げてドラム缶まで運んで行く。
「助けて!! 釜茄でにされるぅぅう…… じやない? ああ、いい湯加減だわ」
美香をドラム缶風呂に入れた黒猫達は気持ちよさにほわんとしているその様を見守りつつ適宜やかんのお湯を足していく。
『ルイ、一体どうして…… ?』
死巫女ルイにとって仇敵でしかないタメシヤノミコトの加護で攻撃してきたのを生け捕りで仕留めた敵を解放するのみならず、風呂と着替えと食事まで提供すると言う謎行動。
五右衛門風呂で体を温めた後、ルイの眷族たる黒猫達にシャンプーで髪の毛を泡立てられ、全身を石鹸で綺麗にしてもらう美香をわけもわからぬまま見る事しか出来ない神魂タメシヤノミコト様は思わず問う。
『くどいぞ、サン。何度も言っているがこれはわらわの気まぐれじゃ。それにあちらもも決着がつきそうじゃ……よく見ておけ』
目の前の予期せぬ刃傷沙汰ですっかり忘れていた銅鏡の向こう、第五闘戯場に注ぎつづける黒万雷に7人の目が注がれる。
(よしっ、このままミズノミヤ様の巨像内を進りば安全に近づけるぞ……!!)
最深部で進行中の大事件を知る由もなく、大地に覆いかぶさって皆を守るミズノミヤ様が生成した『清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)』内を上に泳ぎ進む闇乃宮討伐隊リーダー、雲隠探。そんな彼が目指すのは第五闘戯場である仙境を模した箱庭異世界の天球頂に陣取り、瘴封刃サカサを無限エネルギー源として取り込んだ黒雷による無差別攻撃を続ける雷球だ。
(……神紋刀に麒麟、頼むぞ!!)
『清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)』内で回復していたナルカミノミヤが五武神としてその山の如き巨体にエレメントプラス・ヴォルトをかけ続け、巨大な避雷針として言可伐隊メンバーを守っているのはとにかく根本的には天球に座する災厄そのものを止めなければ敵味方問わず全滅は必須。
総大将として皆を守る義務があるとは言え、自分しか出来ない上に100%成功するとは言い難い無茶苦茶な提案をしてしまった探はその要となる腰に差した自身の二刀流愛刀、神紋刀と麒麟をちらりと見る。
【第53話につづく】
『みかちゃぁん! ! みかちゃぁん! !』
『えぇん……えぇん……うぇぇぇぇん、うぁぁぁぁん』
生きたままホルマリン漬けにされ、苦痛のあまり目を見開いて喉を掻きむしりながら苦しむ美香の悲惨な最期を前に泣き声しか上げられない人魂達。
『そう騒ぐなサンと眷族のモノらよ……』
何を思ったのか文字通り泣くばかりの虫かごの方を見やりつつホルマリン漬けにされた美香のガラス管に触れるルイ。
『悪夢より開放されよ、水のもののふ』
美しい声で唱えられる詩のような詠唱。
次の瞬間、ヒビが入り始めたガラス管の隙間から青い液体がピュウピュウと漏れ出し始め、内部の水圧に耐えられなくなったそれは徐々に大きくなリバキバキと大きくなっていく。
『うぎゃあああ!! ウチのスイートホームが、スイートホームがぁ!!』
『人魂なのに臭い、マジで臭い!! 鼻が曲がるっす!!』
『なぜワシまでぇぇ!!』
ガシャァァァン!!と言う破壊音と共に内部から一気に粉々に割れ、青くてどろっとしたホルマリン液とガラス片を闇神乃間中にばら撒いた『命ノ宿命(サダメラレシサイゴ)』。
そのドロドロ液を虫篭にもろにくらった英里子とツミレ、ヒノミヤノミコト様は壮絶な匂いに悲鳴を上げる。
『けほっ、けほっ!! はぁ、はぁ、ぜぇぜぇ……わざわぎ、あそこから出すなんて……どういうつもりなの?』
具現化した悪夢から解放され、全身青いドロドロの液体まみれで床に倒れた一糸まとわぬの美香は必死で呼吸をしつつ目の前の死巫女ルイを睨む。
『深い理由は無い、全てはわらわの気まぐれじゃ。ものども、出てまいれ』
『にゃぁ』『にゃぁ』『にゃぁ』
ルイに呼ばれて神乃間の暗闇からわらわらと現れる黒猫達。
『このような粘液と硝子片だらけではわらわもそなたらも不快で危険じゃ。まずは掃除をせよ』
『にゃぁん!!』
どこからともなく大量の雑巾と水の入った手桶、ちりとりとホウキを取り出した黒猫達は器用にヌメヌメ液の拭き掃除とガラス片の回収を始める。
『そなたらは水のもののふ殿の身を清め、替えの衣を着せてやるのじゃ。その後、軽い食事を出してやるがよい』
『みやお!!』
どこからともなくドラム缶とお湯入りやかん、石鹸、シャンプー&リンス持ってきた黒猫軍団は手早く五右衛門風呂を用意。 ドロドロまみれのまま床に倒れた美香下に体を差し入れるように持ち上げてドラム缶まで運んで行く。
「助けて!! 釜茄でにされるぅぅう…… じやない? ああ、いい湯加減だわ」
美香をドラム缶風呂に入れた黒猫達は気持ちよさにほわんとしているその様を見守りつつ適宜やかんのお湯を足していく。
『ルイ、一体どうして…… ?』
死巫女ルイにとって仇敵でしかないタメシヤノミコトの加護で攻撃してきたのを生け捕りで仕留めた敵を解放するのみならず、風呂と着替えと食事まで提供すると言う謎行動。
五右衛門風呂で体を温めた後、ルイの眷族たる黒猫達にシャンプーで髪の毛を泡立てられ、全身を石鹸で綺麗にしてもらう美香をわけもわからぬまま見る事しか出来ない神魂タメシヤノミコト様は思わず問う。
『くどいぞ、サン。何度も言っているがこれはわらわの気まぐれじゃ。それにあちらもも決着がつきそうじゃ……よく見ておけ』
目の前の予期せぬ刃傷沙汰ですっかり忘れていた銅鏡の向こう、第五闘戯場に注ぎつづける黒万雷に7人の目が注がれる。
(よしっ、このままミズノミヤ様の巨像内を進りば安全に近づけるぞ……!!)
最深部で進行中の大事件を知る由もなく、大地に覆いかぶさって皆を守るミズノミヤ様が生成した『清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)』内を上に泳ぎ進む闇乃宮討伐隊リーダー、雲隠探。そんな彼が目指すのは第五闘戯場である仙境を模した箱庭異世界の天球頂に陣取り、瘴封刃サカサを無限エネルギー源として取り込んだ黒雷による無差別攻撃を続ける雷球だ。
(……神紋刀に麒麟、頼むぞ!!)
『清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)』内で回復していたナルカミノミヤが五武神としてその山の如き巨体にエレメントプラス・ヴォルトをかけ続け、巨大な避雷針として言可伐隊メンバーを守っているのはとにかく根本的には天球に座する災厄そのものを止めなければ敵味方問わず全滅は必須。
総大将として皆を守る義務があるとは言え、自分しか出来ない上に100%成功するとは言い難い無茶苦茶な提案をしてしまった探はその要となる腰に差した自身の二刀流愛刀、神紋刀と麒麟をちらりと見る。
【第53話につづく】
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