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第七章:『闇乃宮五ノ闘戯場/黒雷武神ナルカミノミヤ』

【第48話】

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『グッ、グゥゥゥゥゥ……』
 第五闘戯場上空で繰り広げられた空中戦。
 魔力で生成された霧が晴れ、自身の周囲を旋回するかのように姿を現した3体の敵を視認しつつも甚大な蓄積ダ
 メージを自己回復中で身動きのとれない暴走ナルカミノミヤは真っ赤な眼で呪む。
「ねえカゼネコ、あれだけ食らってもなお立っていられるって…… もはやどういう存在なのよ?」
 御鐵院流弓術奥義、神討:乱旋ノ型で何発も全身を貫かれ、シネコのロックンロールエレメントアタックで身も心も焼き焦がされ、後から合流した須田丸のデストロイバズーカーとギガントデストロイミサイル、デストロイガトリングでハチの巣にされてもなお闘る気MAXな暴走ナルカミノミヤを前に相棒のカゼネコに問う茜。
『ほほほ、あれが本来の闇乃宮の替属のあるべき姿。 あなた達が成し遂げたマヨイガの儀などちゅぅとりあるにして児戯にすぎなかった……そういう事でございますよ』
「…… どうやらそのようね、カゼネコ」
 かつてマヨイガの儀を取り仕切っていた御鐵院一族の末裔として斬り捨て御免クラスの看過できぬ言葉だとは言え、これまで対峙した敵の桁違いな強さを見せつけられてきて反論できない茜は冷静に風エレメント矢をつがえた弓を構えたまま狙いを維持する。
『おい、ウドノタイボク!! あいつの回復状態はどうなんだ!?』
 仮回復したデストロイメンがトランスフォームしたエレキギターを前に下げたまま通信に割り込むシネコ。
『おそらくあいつは全ての魔力を自己修復に回している……おそらくあと数分もすれば全快は無理でも再戦可能になるだろう。総大将殿、 ミズノミヤのアレは間に合いそうか?』
『皆の者、いざとなればワシがこの世界を操作して隠形霧を再生成する。すぐに隠れられるように身構えるのじや』
 五武神ナルカミノミヤの存在消滅を回避しつつ魔力暴走だけを止めるためにはその桁違いさ故に相当量、だが必要以上にならないように肉体ダメージを与えつつ、武神として内包する膨大な魔力をギリギリまで消耗させなくてはいけない。
 そして敵のマヨイガエレメント技・物理攻撃関係なく一撃でも食らえばリアル即死でノーコンティニュー。
 マヨイガの試練を乗り越えし人のもののふのみならず武神の眷族達にとっても無茶ゲーな状況下での魔力通信にも緊張が走る。

『皆の者、待たせたな!!』
『ミズノミヤ様!!』
『ウガッ!?』
 天地に響く五武神ミズノミヤ様の声と箱庭異世界全体を襲う地揺れと隆起する大地。

 魔力暴走により研ぎ澄まされた野性のカンで迫りくる危険を察知したナルカミノミヤは安全であろう場所を探してしまうが、下手に動けば自身を取り囲む飛び道具を構えた敵の格好の標的となるのみならずそもそもそんな場所は無いであろう事を察してしまう。
『水神招来、清水ノ淑女(しみずのしゅくじょ)』
 箱庭世界の地表全体、樹上を完全に覆うように出現した東京ドームもすっぼり収まりそうな超巨大な魔法陣。
 そこから轟音と共に瀑布にも劣らぬ勢いで噴き出した大水は一瞬で暴走ナルカミノミヤを押し流し、一瞬で呑み込む。
『グツ……クツ…… ぐああああ!! イキが……息がぁぁぁ!!』
 大水による突き上げらからの自然落下入水コンボで魔力で生成された水に拘束された暴走ナルカミノミヤ。
 ミズノミヤ様の神力で生成された粘性の高いそれから逃れようと生存本能のままにどうにか泳ごうとするものの、失われていく筋肉力とその心地よさで動きは徐々に鈍り始め、脱出するための抵抗を諦める事を心身ともに受け入れはじめる。

「皆の者、無事で何よりであったぞ」
 自身の超大型マヨイガ神技発動までの時間稼ぎと成功率を上げるためのヒット&アウェイ戦法での体力減らし、魔力感知をさせないための陽動と言う三大重大任務を終え、地上にヤミネコのブラックホールワープで生還した6人をねぎらう五武神ミズノミヤ様。
 東京ドームが丸ごと収まるような超大型魔法陣上の巨大な乙女の水像内で闇魔力を吸い出されだし、巨ゴリラ暴走態から本来の少年サイズまでじわじわと縮小し始めて行くナルカミノミヤを見守る闇乃宮討伐隊&ヤミノミヤノミコトの眷族達はひとまず安堵の息を吐く。

【第49話につづく】
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