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第六章:『闇乃宮五ノ闘戯場/風獣カゼネコ』
【第36話】
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『ふむ、実に懐かしいモノを見せてもらえた……のう、 ミズノモノ殿』
闇乃宮のどこか、黒い和ろうそくが灯る板張りの間。畳上の御簾内から響く声。
「ええ、そうね。 あの時はハラクイナマコだったけど……今思うと若気の至りだったわ」
かつて夫と一緒に探索した水乃宮で水神紋(仮)の力を与えられ、その特性を生かした激闘を思い出したミズノモノ美香は銅鏡の向こうで第五闘戯場に向かう仲間達を見守りつつ答える。
「いまさらだけど、貴女と初めて会ったのはあの幻影の壇条学院だったわよね? それより前も知っていると言う事は……まさか最初から見ていたとでも言うの?」
『……』
瘴気帯で水神紋を封じられた右手に力を入れ、激痛に耐える態勢に入った美香。
だが御簾の中の人物は先刻のおしおき詠唱をせず沈黙するばかりだ。
『うむ、それは答えられぬ。だが安心せよ、そなたの仲間がわらわの下までたどり着くことは無い……なぜならあの者らは第五闘戯場で全滅する運命にあるからだ』
「あらまぁ……ずいぶんな物言いね、黒巫女さん。私達5人がかつて何度もそんな危機を乗り越えて来た事をご存知ないのかしら? 探さんは必ずここまで来るのよ、必ずね」
かつてマヨイガの儀を達成したもののふとしての強い決意表明に御簾の中の人物は黙らせられる。
(※ あらすじネタ ◎個人的名言:無理を通して道理を引っ込ませる、それが俺達のやり方だ!!)
「へえ、ここが第五闘戯場……」
ミラーボールにロックンロールなライブハウスを離れ、小さな花差しと猫の人形が置かれた右回転N字型の違い棚に猫をモチーフにしたであろう風流な水墨画の掛け軸が飾られたわびさびな茶室内に出た12人。
「そもそも俺は具足だが……靴とか脱がなくていいのか?」
「気を抜くな、須田丸!!」
「ミズノモノよ、神紋弓はやめるのじや!!」
本来ならばこの空間は刀を持たず身分に関係なく対等で平等な茶を楽しむ場所……だがここは何が起こるかわからない未知のマヨイガダンジョンたる闇乃宮内で敵が待ち構えている第五闘戯場である。
大小様々な闇乃宮討伐隊メンバーが座ればもう満員なこの狭い空間でありながら茜は愛用の神紋弓を構える。
『ふぉふぉふぉ、血の気がおおい娘さんですな……』
「どこだ!!」
「パパ、刀は危ないわ!!」
『雲隠総大将殿、こちらじゃ。こちらをご覧くだされ』
違い棚の猫人形下に置かれた水墨画などで見る中国山奥の岩柱が立ち並ぶ仙境を三次元立体モデルで再現したジオラマ箱庭。
ひょうひょうとした声が聞こえるのがその中からである事に気が付いた全員は目を皿にしてじっと観察する。
「パパ、この辺りで何か小っちやいのが動いているわ!!」
箱庭の中央辺りの岩上を指さすエミ。
大人達はそこに立つ2センチ程度の自髪白髭でゆったりとした着物姿、木のこぶ付き杖を持った二足歩行猫の存在を指摘されてようやく気づく。
「本当だ…… しかもこの箱庭そのものもただの模型じゃないぞ。ものすごい魔力を帯びている上にアイテムスキャナーでも解析不能な代物のようだ。この小さいヤツの何かなのか……?」
謎の箱庭を『ヒートセンス』で目視観察していたタケルは、ERRORの5文字が表示されるばかりのアイテムスキャナー結果画面を見つつ驚きの声を上げる。
『ふおふおふお、雲隠の御子息殿ありがとうございますぞ……初めてですな、ワシは第五闘戯場の主のカゼネコ。またの名を猫仙人(ねこせんにん)とも言いますのじゃ、以後よろしく』
気づけてもらえたのが嬉しかったのか、満足気に自髭をなでるカゼネコ。
『さて、これより第五闘戯場の主として皆様方とお手合わせいたしますが……このサイズ差では何かと不便ですのでワシのお相手をなさる方をこちらにお招きいたしましょう。 御鐵院殿、こちらに来なされ』
「えっ?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した茜。
『風の眷族たる式神殿、こちらに来なされ』
「きゃあっ!!」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した式神ライ。
『雷の五武神殿、こちらに来なされ』
「んっ!?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅したナルカミノミヤ。
「おいおいおいおい、御鐵院にライちゃん……どこだ?」
あまりにも一瞬の出来事で何が起こったのか分からず、冷や汗をかきながら周囲を見回してしまう須田丸。
「ナルカミ!! どこにおるのじや!?」
この場にいる五武神としてラスト1人になってしまったミズノミヤ様。
「みんな見て!! 小人な茜おばさん達が……箱庭内にいるわ!!」
「マジかよ。『のらえもん』の不思議アイテムじゃあるまいし、一体どうやって…… ?」
驚きと恐怖の表情を浮かべるエミとタケルの眼下で箱庭内に小っちゃくなって閉じ込められた3人はカゼネコに対峙する。
【第37話につづく】
闇乃宮のどこか、黒い和ろうそくが灯る板張りの間。畳上の御簾内から響く声。
「ええ、そうね。 あの時はハラクイナマコだったけど……今思うと若気の至りだったわ」
かつて夫と一緒に探索した水乃宮で水神紋(仮)の力を与えられ、その特性を生かした激闘を思い出したミズノモノ美香は銅鏡の向こうで第五闘戯場に向かう仲間達を見守りつつ答える。
「いまさらだけど、貴女と初めて会ったのはあの幻影の壇条学院だったわよね? それより前も知っていると言う事は……まさか最初から見ていたとでも言うの?」
『……』
瘴気帯で水神紋を封じられた右手に力を入れ、激痛に耐える態勢に入った美香。
だが御簾の中の人物は先刻のおしおき詠唱をせず沈黙するばかりだ。
『うむ、それは答えられぬ。だが安心せよ、そなたの仲間がわらわの下までたどり着くことは無い……なぜならあの者らは第五闘戯場で全滅する運命にあるからだ』
「あらまぁ……ずいぶんな物言いね、黒巫女さん。私達5人がかつて何度もそんな危機を乗り越えて来た事をご存知ないのかしら? 探さんは必ずここまで来るのよ、必ずね」
かつてマヨイガの儀を達成したもののふとしての強い決意表明に御簾の中の人物は黙らせられる。
(※ あらすじネタ ◎個人的名言:無理を通して道理を引っ込ませる、それが俺達のやり方だ!!)
「へえ、ここが第五闘戯場……」
ミラーボールにロックンロールなライブハウスを離れ、小さな花差しと猫の人形が置かれた右回転N字型の違い棚に猫をモチーフにしたであろう風流な水墨画の掛け軸が飾られたわびさびな茶室内に出た12人。
「そもそも俺は具足だが……靴とか脱がなくていいのか?」
「気を抜くな、須田丸!!」
「ミズノモノよ、神紋弓はやめるのじや!!」
本来ならばこの空間は刀を持たず身分に関係なく対等で平等な茶を楽しむ場所……だがここは何が起こるかわからない未知のマヨイガダンジョンたる闇乃宮内で敵が待ち構えている第五闘戯場である。
大小様々な闇乃宮討伐隊メンバーが座ればもう満員なこの狭い空間でありながら茜は愛用の神紋弓を構える。
『ふぉふぉふぉ、血の気がおおい娘さんですな……』
「どこだ!!」
「パパ、刀は危ないわ!!」
『雲隠総大将殿、こちらじゃ。こちらをご覧くだされ』
違い棚の猫人形下に置かれた水墨画などで見る中国山奥の岩柱が立ち並ぶ仙境を三次元立体モデルで再現したジオラマ箱庭。
ひょうひょうとした声が聞こえるのがその中からである事に気が付いた全員は目を皿にしてじっと観察する。
「パパ、この辺りで何か小っちやいのが動いているわ!!」
箱庭の中央辺りの岩上を指さすエミ。
大人達はそこに立つ2センチ程度の自髪白髭でゆったりとした着物姿、木のこぶ付き杖を持った二足歩行猫の存在を指摘されてようやく気づく。
「本当だ…… しかもこの箱庭そのものもただの模型じゃないぞ。ものすごい魔力を帯びている上にアイテムスキャナーでも解析不能な代物のようだ。この小さいヤツの何かなのか……?」
謎の箱庭を『ヒートセンス』で目視観察していたタケルは、ERRORの5文字が表示されるばかりのアイテムスキャナー結果画面を見つつ驚きの声を上げる。
『ふおふおふお、雲隠の御子息殿ありがとうございますぞ……初めてですな、ワシは第五闘戯場の主のカゼネコ。またの名を猫仙人(ねこせんにん)とも言いますのじゃ、以後よろしく』
気づけてもらえたのが嬉しかったのか、満足気に自髭をなでるカゼネコ。
『さて、これより第五闘戯場の主として皆様方とお手合わせいたしますが……このサイズ差では何かと不便ですのでワシのお相手をなさる方をこちらにお招きいたしましょう。 御鐵院殿、こちらに来なされ』
「えっ?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した茜。
『風の眷族たる式神殿、こちらに来なされ』
「きゃあっ!!」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した式神ライ。
『雷の五武神殿、こちらに来なされ』
「んっ!?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅したナルカミノミヤ。
「おいおいおいおい、御鐵院にライちゃん……どこだ?」
あまりにも一瞬の出来事で何が起こったのか分からず、冷や汗をかきながら周囲を見回してしまう須田丸。
「ナルカミ!! どこにおるのじや!?」
この場にいる五武神としてラスト1人になってしまったミズノミヤ様。
「みんな見て!! 小人な茜おばさん達が……箱庭内にいるわ!!」
「マジかよ。『のらえもん』の不思議アイテムじゃあるまいし、一体どうやって…… ?」
驚きと恐怖の表情を浮かべるエミとタケルの眼下で箱庭内に小っちゃくなって閉じ込められた3人はカゼネコに対峙する。
【第37話につづく】
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