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第五章:『闇乃宮肆ノ闘戯場/雷獣シネコ』

【第28話】

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 第四闘戯場内、魔力防壁で閉ざされたライブステージ上。
「わかったわ、お兄ちゃん……それでどうすればいいの?」
 火炎放射ハラキリ構えのままノリノリのシャウトを続けるシネコと対峙するエミはタケルお兄ちゃんからのアイテムスキャナー結果転送とエアディスプレイ通話に冷静に返す。
『とにかくあれがエレキギターなのは間違いないから、技を出せないようにぶっ壊すしかない!!』
「ジュニア、ムチャイウナ!! ハンキカイノオレハトニカク……ナマミノフタリデキシュウナンテ、イッシュンデクロコゲパン太郎ダゼ!!」
 成り行き上火炎放射を受け止めるタンクとなったとは言え、限界気味なシルバーデストロイメンはタケルからの通信に叫ぶ。
「その論理だと私は焼き魚だが……やるしかない!!」
 背中の盾を正面に構え、それと全身にエレメントプラス・アクアをかけた状態で特攻する覚悟を決めたゼド村長は槍を持ち直す。
「ゼドさん、私が行くわ……!!」
 そう言いつつ愛用の大戦扇・風翔(カゼカケ)を抜いて開くエミ。

(ひっひっひ、お前らバカすぎ!! 丸聞こえだぜ!!)
 第四闘戯場内で繰り広げれる情報戦の一部始終を鍛え抜かれた聴覚で把握していたシネコ。
(この展開的におそらく人魚男とロックンロールガールが左右から挟撃。
 そして俺の愛機を奪うなり壊すなりするつもりだろう……だがそうはいかねえ。
 俺にはあの技があるからな!!)
『ウインドジャンプンプ!!』
「来やがったぁ!!」
 シルバーデストロイメンの盾を目隠しにしてエレメントプラス・ウインドを付与した大戦扇に乗り、頭上高くに飛び上がったエミ。
『ヒャッハァァそう来るかぁ、 ロックガールゥゥゥ!!』
 まさかの展開に驚きつつも火炎放射の構えを維持したままエレキギターのボディをリズミカルに叩くシネコ。
『特殊防壁・魔返ノ防陣(まかえしのぼうじん)、起動イタシマス』
 システムボイスと共にシネコを覆うのは光の半円形ドームだ。
『やれるもんならやってみな!! お嬢ちゃん!!』
 空を舞う風を自在に操って蝶のように舞い、攻め時には蜂のような強襲をしかけるマヨイガエレメント『風』……マヨイガ紋・風使いとして大戦扇にエレメントプラスして飛翔し、敵の頭上を取ったと言う事で次に来るのは風エレメント塊生成による落下物or投椰攻撃だ。
 マヨイガ兵法的にそう読んだシネコはすぐに全方位エレメント反射防壁を生成してカウンター体制に入る。
『雲隠流大戦扇技……』
 (来たニャ!!)
 まずは1人!! と腹の中でほくそ笑んだシネコの前でエミは風をはらんで宙を舞う全開な扇上に立ち、足力で細めて自由落下し始める。
『にゃにゃっ!?』
 そのまま落ちつつも壁に取りついた大戦扇上でエミは垂直姿勢を維持しつつ腰を低くして下半身に力を入れつつ風マヨイガエレメントを追加付与。
『マヨイガウォールトリック!!』
 そのまま爆発的推進力を与えられた大戦扇は火花を散らしながらライブステージ壁を縦横無尽に滑走。
 E=mcの二乗ではないが、あんな超高速飛翔体の直撃を喰らったら魔獣とは言えただでは済まない。
 しかしここで強敵シルバーデストロイメンとゼド村長の動きを封じた火炎放射体勢を解除したら槍と機関銃でレンコンorハチの巣……どちらを選んでも詰み状況に追い込まれたシネコは大ダメージ前提で最善手を模索する。

「あれは……シルバーデストロイメンのマグネットプラスなのか?」
 第四闘戯場観客席で見守る闇乃宮討伐隊メンバー。
 重力法則ガン無視で壁を垂直に疾走する大戦扇使いにして風マヨイガエレメント使いのエミを見ていた大先輩・カゼノモノ茜はナルカミノミヤノミコトと須田丸に問う。
「いや……あやつはそれを使えなかったはずだぞ? まさか須田丸、お前が……」
「おれも何かのタイミングで教えてみたんだが、シルバーの奴は人工知能とか内部機構を動かす魔力の都合でダメだったんだぜ? ライちゃんじゃないのか?」
「私はそもそもカゼノミヤノミコト様の谷属式神ですので……お二方様のようなエレメントプラスは使えないのです」
「じゃあ誰が……」
「簑田おじさん、あれはマグネットプラスとか抜きでエミにしか出来ない風エレメントオリジナル技ですよ」
 黙っていたタケルの言葉に耳を傾ける大人達。
「ご存知だと思いますけど、エミは学校でスケートボード部に入っています。
 元々母に似てキックボードとかそう言うのが好きな妹だったんですけど……今では上級生や中学生に混じってジュニア大会に出るぐらいの実力派ボーダーなんです」
「おいおい、スケートボード部の話は聞いていたがいつのまにかそこまで上達していたとは……4エレメント使いのタケルも十分すごいがエミちゃんも負けず劣らずにすごいな!!」
 兄妹それぞれの良い所をあげて配慮しつつ、素直な感嘆の声で応える須田丸。
「それであの技はエミがスケートボード部の経験と技術を活かしてマヨイガで編み出したモノなんですけど……あの超加速能力性能的に使いどころが難しくて実質お蔵入りしかけていたんです」
「だろうな、私は大戦扇は専門外だが……同じ風エレメント使いとしてあのバランス感覚と加速制御能力を問われる技は使えるとは思えない。
 あれは身軽さと高い身体感覚能力を兼ね備えたエミにしか出来ないだろう」
「……うむ、皆の者。そろそろ『じゃっじめんとたいむ』のようであるぞ」
 ミズノミヤノミコト様のお言葉に全員が舞台の方向を刮目する。

【第29話につづく】
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