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第四章:『闇乃宮参ノ闘戯場/地獣キネコ』
【第24話】
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「えりこぉぉぉぉ!!」
ヤミネコを押しのけて縄ばしごもろとも眼下の砂渦アリジゴクに消えて行った英里子に叫ぶ須田丸。
「あの……馬鹿め!!」
須田丸と共に拳を握りしめ、口を噛み締める茜。
『チノミヤ様、ご無事な貴方だけででも早く上がってきてください!!』
黒渦に手を入れ、予備の縄ばしごを取り出したヤミネコは壁につかまって踏ん張るチノミヤノミコト様に叫ぶ。
「しかし、あいつを正気に戻さねば……ならぬ!!」
砂渦が届かない高さにある壁の出っ張りを掴んでぶら下がり、最後の1人となったチノミヤノミコトが引きずり込まれるのを虎視眈々と待つ暴走キネコ。
「チノミヤさん、今すぐ脱出するんだ!! 闇乃宮討伐隊の要にして五武神のリーダーたる貴方までここで失うわけにはいかない!!」
「くっ!!」
「これは総大将命令だ!!」
初めて闇乃宮討伐隊総大将として命を下す探。
マヨイガに住まう者、訪れる者の枠を超えたその圧倒的な言葉に全員が平伏する。
『男前やないの、雲隠さん!! アンタが大将や!!』
そんな中、勝手に開く神紋もののふ3人のステータスエアディスプレイ画面とSOUND ONLYなスピーカー通信。
「英里子さん!?」
「どこに居るんだ!!」
「あそこを見ろ!!」
第二闘戯場内、ゼド村長が指さす先で盛り上がっていく2つの砂山。
「あの形状は……指、いや腕か?」
「ゴーレムアームだわ!!」
エミの喜びの声と共にせり上がって来る英里子のゴーレムアーム達。
壁から生えたそれらはうつ伏せのまま砂まみれになったフウと英里子を乗せたまま慎重に上昇していく。
「呉井!! 無事だったのか!!」
「おうばっちりやで、デカボ院!! ウチの立派な胸像はまだキャンセル間に合うやろなぁ?」
全身の砂を払いつつ小粋なジョークで返す英里子。
「このクソアマ……そんな高くて縁起でもない物注文するか!! とにかく上がってこい!! そいつを放置して皆で第四闘戯場に逃げるんだ」
涙ボロボロで声も出ない須田丸に代わって泣き笑いしつつも叫ぶ茜。
「そうしたいのはヤマヤマなんやけど……これ以上はジョンとマルグリータも上に行けへんようなのや!!
……おそらく何らかのロックがかかつとつて対戦相手指名されたウチらがコイツを倒さへんとここから出れへんし、あんたらも次のボス戦場にも進めんのやろ暗黒武者殿?」
『……』
新しい呼称はとにかくその沈黙は『是』と言う事か。ヤミネコを問い詰めずともそう察する闇乃宮討伐隊メンバー。
だがおそらくそれをしているのは先ほどの女であり、その部下でしかないこいつを殴った所で何の意味もない上に人質になっている美香に危険が及ぶリスクが増すだけだ。
「静かに、動くな」
皆の怒りを察しつつも探は総大将として冷静沈着に振る舞う。
「こいつはウチらが何とかする、あんたらは先に進むんや!!『ゴーレムレッグ、リッタ&スーザン!!』」
壁にしがみついて砂渦に耐えるチノミヤを蹴り上げるように岩壁に生成召喚された英里子の巨大ゴーレムレッグ2本。
突き出した勢いのまま足裏を揃えて突っ込んでくるそれは自分を踏み漬す気だ、わずかに残っていた理性と本能でそう察した暴走キネコは拳で打ち砕くべく身構える。
『ウガッ!?』
だがその予想に反して英里子のゴーレムレッグ2本キネコを避けるようにY字型に衝突し壁にめり込み、キネコは空振りになった剛拳でバランスを崩す。
「でぇい!!」
英里子のゴーレムレッグに乗って高速接近に成功したチノミヤノミコト様は頭上から飛び掛かり、その腕を押さえつつ野太い首にヘッドロックをかける。
「ナイスや、チノミヤさん!!」
あとは自身の作戦通りに動いてくれた五武神がそのまま虎男をぶん投げ、敵が自ら発動させたアリジゴクに叩き落として自滅させるだけ。
砂渦アリジゴク上でもみ合う大丈夫2人を前に勝利を確信した英里子はガッツポーズを取る。
「いや、まだだ……神でもない魔物が五武神長様のお力を上回るなんてアタシは悪い夢でも見てるのか?」
マヨイガエレメント『地』の力のみならず物理的な『力』において最強無比の存在である五武神長が全力を出しても押さえ込むのがやっとと言う存在に直面した式神フウ。
このままでは敵が押さえ込みを破ってチノミヤノミコト様を渦に突き落としてしまう。
そしてそこから一気に闇乃宮討伐隊全滅……最悪の未来が見えてしまったフウは思わず上から不安そうな表情で見守る妹、式神ライを見る。
「チノモノ英里子、やるしかないぞ」
「どうやらそうみたいやね……フウちゃん」
道を作る覚悟を決めた2人は目を合わせて頷く。
【第25話につづく】
ヤミネコを押しのけて縄ばしごもろとも眼下の砂渦アリジゴクに消えて行った英里子に叫ぶ須田丸。
「あの……馬鹿め!!」
須田丸と共に拳を握りしめ、口を噛み締める茜。
『チノミヤ様、ご無事な貴方だけででも早く上がってきてください!!』
黒渦に手を入れ、予備の縄ばしごを取り出したヤミネコは壁につかまって踏ん張るチノミヤノミコト様に叫ぶ。
「しかし、あいつを正気に戻さねば……ならぬ!!」
砂渦が届かない高さにある壁の出っ張りを掴んでぶら下がり、最後の1人となったチノミヤノミコトが引きずり込まれるのを虎視眈々と待つ暴走キネコ。
「チノミヤさん、今すぐ脱出するんだ!! 闇乃宮討伐隊の要にして五武神のリーダーたる貴方までここで失うわけにはいかない!!」
「くっ!!」
「これは総大将命令だ!!」
初めて闇乃宮討伐隊総大将として命を下す探。
マヨイガに住まう者、訪れる者の枠を超えたその圧倒的な言葉に全員が平伏する。
『男前やないの、雲隠さん!! アンタが大将や!!』
そんな中、勝手に開く神紋もののふ3人のステータスエアディスプレイ画面とSOUND ONLYなスピーカー通信。
「英里子さん!?」
「どこに居るんだ!!」
「あそこを見ろ!!」
第二闘戯場内、ゼド村長が指さす先で盛り上がっていく2つの砂山。
「あの形状は……指、いや腕か?」
「ゴーレムアームだわ!!」
エミの喜びの声と共にせり上がって来る英里子のゴーレムアーム達。
壁から生えたそれらはうつ伏せのまま砂まみれになったフウと英里子を乗せたまま慎重に上昇していく。
「呉井!! 無事だったのか!!」
「おうばっちりやで、デカボ院!! ウチの立派な胸像はまだキャンセル間に合うやろなぁ?」
全身の砂を払いつつ小粋なジョークで返す英里子。
「このクソアマ……そんな高くて縁起でもない物注文するか!! とにかく上がってこい!! そいつを放置して皆で第四闘戯場に逃げるんだ」
涙ボロボロで声も出ない須田丸に代わって泣き笑いしつつも叫ぶ茜。
「そうしたいのはヤマヤマなんやけど……これ以上はジョンとマルグリータも上に行けへんようなのや!!
……おそらく何らかのロックがかかつとつて対戦相手指名されたウチらがコイツを倒さへんとここから出れへんし、あんたらも次のボス戦場にも進めんのやろ暗黒武者殿?」
『……』
新しい呼称はとにかくその沈黙は『是』と言う事か。ヤミネコを問い詰めずともそう察する闇乃宮討伐隊メンバー。
だがおそらくそれをしているのは先ほどの女であり、その部下でしかないこいつを殴った所で何の意味もない上に人質になっている美香に危険が及ぶリスクが増すだけだ。
「静かに、動くな」
皆の怒りを察しつつも探は総大将として冷静沈着に振る舞う。
「こいつはウチらが何とかする、あんたらは先に進むんや!!『ゴーレムレッグ、リッタ&スーザン!!』」
壁にしがみついて砂渦に耐えるチノミヤを蹴り上げるように岩壁に生成召喚された英里子の巨大ゴーレムレッグ2本。
突き出した勢いのまま足裏を揃えて突っ込んでくるそれは自分を踏み漬す気だ、わずかに残っていた理性と本能でそう察した暴走キネコは拳で打ち砕くべく身構える。
『ウガッ!?』
だがその予想に反して英里子のゴーレムレッグ2本キネコを避けるようにY字型に衝突し壁にめり込み、キネコは空振りになった剛拳でバランスを崩す。
「でぇい!!」
英里子のゴーレムレッグに乗って高速接近に成功したチノミヤノミコト様は頭上から飛び掛かり、その腕を押さえつつ野太い首にヘッドロックをかける。
「ナイスや、チノミヤさん!!」
あとは自身の作戦通りに動いてくれた五武神がそのまま虎男をぶん投げ、敵が自ら発動させたアリジゴクに叩き落として自滅させるだけ。
砂渦アリジゴク上でもみ合う大丈夫2人を前に勝利を確信した英里子はガッツポーズを取る。
「いや、まだだ……神でもない魔物が五武神長様のお力を上回るなんてアタシは悪い夢でも見てるのか?」
マヨイガエレメント『地』の力のみならず物理的な『力』において最強無比の存在である五武神長が全力を出しても押さえ込むのがやっとと言う存在に直面した式神フウ。
このままでは敵が押さえ込みを破ってチノミヤノミコト様を渦に突き落としてしまう。
そしてそこから一気に闇乃宮討伐隊全滅……最悪の未来が見えてしまったフウは思わず上から不安そうな表情で見守る妹、式神ライを見る。
「チノモノ英里子、やるしかないぞ」
「どうやらそうみたいやね……フウちゃん」
道を作る覚悟を決めた2人は目を合わせて頷く。
【第25話につづく】
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