上 下
15 / 79
第三章:『闇乃宮弐ノ闘戯場/水獣アオネコ』

【第15話】

しおりを挟む
「フレンドリーファイアって大事なんやね、リーダー」
『大槍滞空旋回乱爆撃』とでも称すべきタケルの新技で黒焦げた大岩で埋め崩され、氷洞の痕跡も残っていない第二闘戯場を見下ろす英里子。
「ああ、僕もそう思う」
「私も同感だ、しかし……」
「なんや、デカボ院?」
 あんな無差別デイザスター級攻撃の渦中にあって無傷で済んだタケルと須田丸、ゴブガミの無事を確認しつつも歯切れの悪い茜に問う英里子。
「倒すべき敵とはいえ……あんな倒され方をしたとあっては少し可愛そうになってきたな」
「このバカボ院!! それは立てちゃああかんフラグってもんや!! ダースベイダー、早う判定頼むで!!」
『うむ……魔力・生体反応共にアオネコ消滅確認完了、闇乃宮第二闘戯……勝者、タメシヤノミコトチーム!!』
 ヤミネコが指を鳴らすと第二闘戯場の壁に観客席まで登れる梯子が出現する。
「ナイスやベイダー!! 須田丸君に皆、早う上がってく……」
 次の瞬間、第二闘戯場の空間そのものを揺さぶるような震度5強クラスの地震。
 闇乃宮討伐隊は地面に押し付けられるようにうつぶせに倒れてしまう。
「だからウチ言うたんや、このクソバカボ院!!」
「ヤミネコ、お前のしわざか!?」
『違う、これは私の力ではない!! 我が主が時空の狭間に造られし空間が耐久値想定以上の魔カダメージで崩壊消滅しかけている!! 早く第三闘戯場へ避難するのだ!!』
 闇乃宮討伐隊この激震の中どうにか立ち膝で耐えているヤミネコはすぐに闇渦を生成し『第三闘戯場』の黒鳥居を召喚する。
「サンキューやけど……どないしてそこ行けっちゅうねん!?」
『帯磁:正(たいじ:せい)』
『帯磁:負(たいじ:ふ)』
 詠唱と共に反重力化したかのようにふわりと浮き上がる13人。
「これなら水を泳ぐようなイメージで進める!! 急げ!!」
 同じ雷マヨイガエレメント使いとして須田丸の特殊エレメントプラス技『マグネットプラス・ポジ&ネガ』と同じ技をこっそり使えるようになっていた少年五武神・ナルカミノミヤノミコト。
 地面に『正』、仲間&ヤミネコに『負』の磁力を付与したナルカミノミヤは皆に叫ぶ。
「いやここはムカデ人間作戦や!! 全員だれでもええから近いもんの足掴んで繋がるんじゃ!! リーダーはブクウジュツで飛んでそれを引っ張るんや!!」
 英里子の追加指示を受けた反重力浮遊状態のヤミネコ含む12人はすぐに近くの仲間の足を掴んで総連結。
 たまたま先頭になったシルバーデストロイメンの腕を掴んだ探は十八番のフアイアージェットで黒鳥居まで誘導し、鳥居をしっかりと掴ませる。
「よしっ、あとは任せたぞナルカミノミヤ!! 僕はタケル達を!!」
 ところてん式に第二闘戯場から避難していく仲間をナルカミノミヤノミコトに任せた探は第二闘戯場の3人の元へ向かう。

「父さん!!」
「タケル、よくやったぞ!! ゴブガミ先生に須田丸君も早く」
 フアイアージェットで浮遊したまま槍を回収したタケルを背負い、火塊を消した両手を2人に差し出す探。
「雲隠のアニキ、気持ちは嬉しいんだけどさ……タケルを背負ったままデカい俺とゴブガミを持ち上げて飛ぶのは無茶だぜ!!」
「ははっ、悪いね探君。ボクみたいな神様でも限界ってもんがあってねえ……マジで一歩も動けないんだよ」
 いつものようにニヤニヤしながらも全身から大汗をかき、呼吸を荒くするゴブガミが嘘をついていないのは明らか……雲隠父子は言葉を失う。
「これを師匠の要領で使えば…… とにかくやってみてください!!」
 ウェストポーチからマヨイガ探索アイテム『シノビマント』2枚を取り出すタケル。
「ありがとな、タケル。簑田おじさんの最期は立派だったって呉井姉さんに伝えてくれ……」
 気持ちは嬉しいが無理だ……と敢えてストレートに言わず、歯を見せて笑いマッスルポーズ&サムズアップする須田丸。
「あとお前の爪の垢を煎じて飲ませるのも忘れるなよ!! おじさんとの約束だからな!!」
『バインドパペット』
「えっ、ええっ? うわぁぁぁぁ!?」
「んっ、んんっ? えっ?」
 全身がビリっとした次の瞬間、自分の意志に関係なく体が動き出した探と金縛りにあったかのように父の背中にがっちりとしがみついてしまうタケル。
 そのままバランスをくずしかけたきりもみファイアージェット飛行し始めた探は黒鳥居ヘー直線に向かい、だしそのままくぐり抜けて第三闘技戯場に消えてしまう。
「ゴブガミ、てめぇ!! なっ……おい、やめろ馬鹿!!」
 相手の動きを魔力で束縛しつつ、操り人形のようの操作するサポートスキル『バインドパペット』をゴブガミにかけられたと気づいた時にはすでに遅し。
 須田丸も自分の意志に関係なくタケルが落としたシノビマントを拾って頭上で両端をパラシュート持ちしてしまう。
「悪いね、須田丸君……これがボクなりの嘘のつきおさめって事だよ!! 当事者のボクが言うのも変だけどマヨイガ五武神の加護があらん事を!!」
『ラージドウエポン!!』『帯風!!』
「てめええ、許さねえからなあ!!……この大馬鹿やろおおおお!!」
 大型パラシュートに変化して風をはらんだシノビマントは須田丸の巨躯を難なく浮遊させ、そのまま同時発生した風圧は黒鳥居まで一気に押し流してしまう。

「ふふっ、オオバカヤロウか……ボクにとっては最高の誉め言葉だよ」
 壁にボコボコと穴が開き始め、その向こうにある黒い何もない空間に取り込まれて消え始めた第二闘戯場。
「ありが…… とう、須田……丸……君にみ……ん……な……ばいばいきぃん」
 膨大な魔力を最後の一滴まで絞り切って勝利するのみならず仲間も助けたゴブガミは達成感と安堵感と共に意識を失って闇の中に倒れるのであった。

【第16話に続く】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

格闘系女子しののめ果央

弱キック
大衆娯楽
東雲果央(しののめらお)は家業の空手道場で師範代を務める女子高生。 ジョギング中にたまたま出会った少女科学者エレーナを守るため、 彼女が開発したパワードスーツ「アクセラレーション・ギア」をまとい、 悪(?)の改造人間と死闘を繰り広げるのだった。 一子相伝の暗殺拳(自称)「救世七星流」の奥義が唸る! ……一子相伝で七星だとか、果央の読み方変更だとかで分かる通り、 ノリと勢いで作った格闘アクション。

処理中です...