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第三章:『闇乃宮弐ノ闘戯場/水獣アオネコ』

【第11話】

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 須田丸の号令詠唱に合わせ、斜め上に構えたデストロイガトリングアームに一斉に飛びかかるシルバーデストロイメイル片の液体金属スライム達。
「すっ、すごい……!!」
『なっ、何が起こっているにや!?』
 簑田おじさんの武器が白銀スライム軍団に覆われて一体化し、巨大な武器に合体変形して行く様に目を奪われてしまうタケルと風牢内のアオネコ。
「タケル君!!」
「はっ、 はいっ! !」
 ゴブガミの声で攻撃の手が止まっていた事に気が付いたタケルはすぐに上段突き攻撃による牽制を再開する。
『デストロイギガントブラスター!!』
「うぉぉう!! でかあっ!!」
 少し前のウィークエンドシネマで見た古い宇宙戦争SF映画のクライマックスで出て来た最終兵器にしてエンパイアステートビルを想起させる巨大ビーム砲塔。
 それを簑田おじさんが雷神紋の力で作り出してしまったと言う事実に驚くばかりのタケル。
『チャージ開始!!』
 須田丸の雷神紋経由で流し込まれた雷マヨイガエレメントを射出する前にその破壊力を爆発的に引き上げるべく増幅圧縮チャージ開始したデストロイギガントブラスター。
 その吼えるような機械駆動音と振動で第二闘戯場の氷柱は粉々に折れ砕け、氷壁には内部からヒビが入り始める。
『やっ、やばい……にゃ!! アクアチェ……いてっ!! アク……ぎゃん!! アクアチェン……みゃおん!!』
 ゴブガミの風牢内で中空拘束され、須田丸の超兵器にロックオンされてもなお悪あがきをするアオネコ。
 実力面においてはゴブガミと簑田おじさんのサポート要員である自分がこの場でやるべきことはそれを完結させない事だと理解ったタケルは長槍で頭上の敵をチクチク攻撃牽制し、ひたすらに詠唱妨害し続ける。

「シルバーデストロイメン、ナルカミノモノとの協力、実に大義であったぞ」
 観客席から眼下の激闘を見守りつつ、眷族魔物・シルバーデストロイメンを褒める鳴神乃宮の主、少年五武神ナルカミノミヤ。
「オホメニアズカリコウエイデス、アルジサマ!!」
 須田丸愛用のデストロイ装備シリーズー式のメンテナンスと改良を担うメカニックアドバイザーとして自身の魔物素材や半機械魔物デストロイメンの魔物素材を提供してきたシルバーデストロイメンは主に敬礼する。
「ナルカミノミヤ? お前、熱でもあるんか……?」
 五武神のなかでも一番のつむじ曲がりで嫌味ったらしく、皮肉屋な五武神ナルカミノミヤらしくないストレートな誉め言葉に思わず突っ込んでしまう英里子。
「大丈夫だ、チノモノ殿」
「!?」
「雲隠様!?」
 五武神ナルカミノミヤに対する英里子のちょっかいから売り言葉に買い言葉の大喧嘩になり、最後は茜と美香に喧嘩両成敗で2人ともお仕置きされるいつもの展開とならない事に茜と探は思わず温かいお茶をこぼしそうになる。
「フウさん、ありがとう。大丈夫だよ……ナルカミノミヤ、真面目な話だが本当に大丈夫なのか?」
「大将殿、ご安心ください。ご指名の際には必ずや……ご活躍いたしますので」
 これは土足で踏み入ってはいけない何かだ。
 それを察したスタンバイ中の面子はナルカミノミヤをそっとしておく。

『エネルギー充填完了。 発射カウントダウン開始……5……4』
「タケルにゴブガミ!! あと少しだ!!」
「はいっ! !」
『アウッ! ! イチッ! ! ヘルプミーィィィ! !』
「まかせてくれ、須田丸君!!」
 執拗なチクチク攻撃で詠唱を諦めてもなお続けて来る粘着質なボウヤに残りあと数秒と言う状況で風圧拘束を強める風の五武神。
 あの巨砲門からチラ見えするエレメントエネルギー圧縮状況から考えるに直撃したら雷エレメントダメージとオーバーロードで蒸発消滅は不可避。
 回避すべき最悪の事態を乗り切るべくアオネコは必死で考える。
『デストロイギガントブラスター!!』
「ぎにゃああああ!! ヤミノミヤ様ぁぁぁぁ!!」
 それもむなしく須田丸が射出した雷球塊の直撃で消滅していく肉体のスローモーション走馬灯。
 最期の瞬間、アオネコがこの力を与えて下さった主様の名を叫んでいたその時だった。
『七魂(セブンソウル):弐乃魂』
(あるじ……さま?)
 聞き覚えのある声と共に全身に魔力が充満していき……。

「ふひょーっ!! すごい威力だったねぇ? タケル君、助かったよ!!」
「ナイスアシストだぜ、タケル!!」
 とにかく敵を拘束して一撃で消滅させる事に注力するあまり超破壊奥義の反動から身を守る事を忘れていたゴブガミと須田丸。
 それを見て自分達&タケル自身に合計3つの風防壁結界を張って爆発の衝撃から身を守ったタケルにサムズアップする。
「雷マヨイガエレメントってすごいパワーなんですね……簑田おじさん」
 ビーム砲の直撃を喰らったアオネコを蒸発消滅させるのみならず、その破壊力で氷洞天丼に巨大な風穴をぶち抜いた須田丸のデストロイギガントブラスターの火力にただ驚くばかりのタケル。
「まぁな、俺も初撃ちだから加減できなかったが……恐ろしい威力だぜ」
 大穴の向こうに見える真っ暗な空間を見上げる須田丸はこの第二闘戯場がタメシヤノミコト様戦場と同じ時空の狭間に造られし異空であると再認識する。
「管理者たる五武神として思うに……この技は封じ手不可避だろうねぇ、申し訳ない須田丸君」
「わかっているよ、ゴブガミ……さて、そこのダースベイダーさん!! あんたの仲間はもういねえぜ?ジャッジをさっさと終えて第三闘戯場に案内してくれねぇか?」
 デストロイアームと合体したシルバーデストロイメイルを一度水銀スライム片に戻し、ヘヴィアーマーとして再装着していくスダマルは観客席でこちらをじっと見ている黒甲冑のヤミネコに叫ぶ。
『私はヤミノミヤ様にお仕えするヤミネコである、ダースベイダー等と言うものは知らぬ。それに……』
「蓑田おじさん!! 俺が岩の足場を作って……」
『にゃっにゃっにゃ……そうは行かないにゃ』
「!!」
 タケルが足場の縁に向かってマヨイガエレメント技を使おうとしたその時、足場下の池から響くように聞こえるアオネコの声。
『お前達全員、冷たい水の底に沈んでもらうニャ!!』
 その言葉と第一闘戯場の記憶から下から巨大化突き上げアッパーが来ると察した3人はすぐに腰を低くし、衝撃に耐える姿勢を取る。

【第12話に続く】
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