上 下
10 / 79
第三章:『闇乃宮弐ノ闘戯場/水獣アオネコ』

【第10話】

しおりを挟む
「エミ、どうした……!! タケル!! やめろ、やめるんだ!!」
 眼下の円盤上で雄叫びを上げながら無抵抗の敵に岩頭突きしまくるタケルとそれを遠巻きに見る事しか出来ない須田丸とカゼノミヤ。
 敵が敵だとは言え野獣のような無茶苦茶をするばかりのタケルに父にして偉大なるもののふの声は届かない。

「須田丸君!! どうすればいいんだ?」
「しらねぇよ、ゴブガミ!!」
 タケルが一足飛びで首刈りに来た超スピードタイプの敵の動きを封じたのはさておき、このまま双方共に大ダメージを受ける自滅攻撃を続けさせるわけにはいかない。
 だがマヨイガエレメント使いとしてフレンドリーファイアが適用されるとはいえ、自分達の強力過ぎるエレメント物理攻撃で敵とタケルを引き剥がそうものなら彼も大ダメージを受ける事は明らか。
 須田丸とゴブガミはどうにか平和的に2人を引き剥がす方法が無いか模索する。

『ボウヤ……気は済んだかニャ?』
「なにっ!?」
 力任せな岩頭突きをノーガードで何十発も食らったにもかかわらず、無傷の顔を上げて余裕の笑みを浮かべるアオネコ。
『スプラッシュボム!!』
「うわっ!!」
 敵が口から吹き付けてきたシャボン玉の破裂音にタケルは思わず耳を塞ぐ。
「タケルくん!!」
「しっかりしろ!!」
 何が起こったのかはわからないが、日の前で破裂シャボン玉を食らって敵を逃したタケルに2人は駆け寄る。
『安心するニャ……それはただの音がうるさいシャボン玉。死ぬほどのもじゃないニャ』
 サポートスキルでタケルを回復しようとする須田丸達の背後に距離を取って立つアオネコ。
「なるほど、あれだけの物理攻撃を食らって無傷とは……何かあるね、キミ」
 その間に立ったゴブガミは大戦扇を広げて2人の目隠し兼盾にしつつ対峙する。
『ええまあ色々ありましてニャ……それよリキミの神技は見せてくれんのかニャ?』
「ふぶっ、セクシーグラマーなケモ娘さんのヒミツと交換ならいいよ?」
 あの感触だと神技発動の詠唱に欠かせない九字切りよりも早く敵は斬りかかれる。
 タケルはとっさに発動させたオリジナル感知系マヨイガエレメント技『ヒートセンス』で受け流して反撃に繋げることが出来たが戦況と武器を鑑みて自分は100%ではない事を分かっているゴブガミは敵の挑発を瓢々と受け流す。
『嬉しい事言ってくれる伊達男だにゃ!! ああん、こんな素敵なオトコさんと愛の巣であんなことやこんなことなんて……ゾクゾクしちゃうにゃぁん』
 ゴブガミのイケメンっぷりと付随する妄想のあまり大興奮し、鼻血ブーのまま舌を出してハァハァしながら腰をくねらせるアオネコ。
『マヨイガ神技:昇風牢(しょうふうろう)!!』
『うにゃっ!?』
 突如突き上げるような上昇気流に襲われる第二闘戯場内。
 ゴブガミが既に九字切り含めた神技の発動準備を整えていてタイミングを待っていた事にようやく気が付いたアオネコはそのまま上空に吹き上げられる。

『おっ、降りられないにゃ! !』
 ゴブガミが風の力で作り出した細いコップをひっくり返したような形の下降気流と突き上げる上昇気流の渦巻で密閉された空間に閉じ込められ、中空状態からなすすべもないアオネコ。
「タケル君に須田丸君!!」
「はいっ!!」
 ヘヴィ級タンクもののふの須田丸に大技専門の武神ゴブガミ、そしてその動きを見切れるものの与ダメージ手段に欠ける若きタケル。
 決して3人が弱いというわけでは無いのだが、全員にとって相性最悪のスピード特化型の敵の動きを止め捕えた今がチャンス。
 父や母、3人の大先輩様達が得意とした『相手の動きを止めて大技で仕留める』連携戦法を察して背中の槍を抜いたタケルはすぐさま第二闘戯場に踊り出る。
『パワード!!』『エレメントプラス・クインテット!!』
 タケルのオリジナル技で水以外のマヨイガエレメントプラスを同時付与された槍の穂先は付着した石で尖りつつ大型化し、それを覆うように火と雷を帯びた旋風が巻き付く。
『ロングドウエポン!!』
 頭上高所の敵に向けて構えられたそれが長柄武器専用サポートスキルをかけられた瞬間、タケルの背丈と同じぐらいだったそれは一気に高跳び棒サイズまで伸大化。
『あついたビリビリやめてぇえぇ!!』
 風の中の羽のようにくるくる横回転させられるアオネコは全身をランダムに襲う穂先の熱雷旋風乱れ突きに悲鳴を上げる。
「お兄ちゃんすごい、やるぅ!!」
「須田丸君!! あんたも後輩に負けちゃいかん!! ええとこ見せるんや!!」
「わかってるよ姉ちゃん!! シルバーデストロイメイル、 トランスフォーム!!」
 須田丸の全身を覆う堅牢な愛鎧・シルバーデストロイメイルは詠唱を受けて溶解し、一時的に須田丸の体を離れて水銀液球化。
「合体ぃぃぃ!!」
「ええっ!?」
 男の浪漫そのものな蓑田おじさんの詠唱。
 そう言うのが恥ずかしい男の子なお年頃故に父母や妹にばれないようにニチアサ戦隊モノやロボットアニメをこっそり見ているタケルはその激熱鉄板展開に思わず注視する。

【第11話に続く】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...