MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

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【第五章:エデン第五区画/特殊物理学研究ラボ】

【第88話】

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『ぴぎゃああああん!!』
『おひり、壊れる、壊れるう!!』
 交互にリズミカルに、時には片方を休ませつつ片方を集中連撃と言う緩急を付けた尻叩きを何十発もキンカク&ギンカク姉妹に食らわせ続けるサン博士。
「真っ赤に腫れるなんて よく出来た人造皮膚なのねえ?」
 叩かれると赤くなる人間の皮膚の炎症状態をもほぼ完全再現してしまうミクラ・ブレイン謹製のアンドロイド用人工皮膚に関心を抱きつつも手を休めないサン博士に対し、痛覚センサーアラートで人工知能が処理落ち寸前の姉妹は赦しを乞いながら泣き叫ぶばかりだ。

『なあ、これどうすればいいんだブウ?』
 討伐対象である上位管理者アンドロイドであるキンカク&ギンカク姉妹の無力化と拘東に成功したのはとにかく、サン博士の逆鱗に触れてしまったが故に泣いて謝っても許されない無限スパンキングに処されると言う展開に戸惑うばかりのピッグマン。
『私に問われても……モンキーマン殿はなにかご存じで?』
 右のピッグマンから来た質問をそのまま左のモンキーマンへと流すカッパマン。
『まあ確かに俺と博士はこの人類VSミクラ・ブレインの戦争において開戦直後から幾多の死地を乗り越えてきた唯一無二のパートナーだ。
 だが、俺でもやらん挑発行為をやってのけたあいつらはもう……』
 要するに貴方でも無理なんですね。
 ピッグマンとカッパマンはモンキーマンの婉曲な言い回しにいろいろな意味で納得する。

『うむ、それはその通りだモンキーマンよ。だが我としても愛娘達がそっちの性癖に目覚められても困る。無理を承知でどうにかするしかあるまい……』
『だからしつこ……ミクラ博士!?』
 いつの間にかモンキーマンのすぐ隣に出現じていたこざっぱりした黒髪に眼鏡、ズボンとYシャツ上に白衣を羽織った若い男。
 10年前の人工知能暴走の際にエデンからの脱出確認がとれず、事実上の死亡とされていたプロジェクト・エデン総合責任者にして世紀を代表した天才科学者ミクラ・フトウが在りし日の姿で現れると言う事態に3体の戦闘用アンドロイド達は思わずバックジャンプし、博士を守る態勢を取る。
『SYK―000、そう騒ぐな。
 この姿は在りし日のミクラ・フトウを我が開発した立体ホログラム機器で再現した代物。
 かつての人類に愛されたCGアイドルやヴォイチューバー技術とかの発展形でありそなたらに危害を加えることが可能な代物ではない』
 ミクラ・フトウの姿と口を借りてチーム・サンに語り掛けるミクラ・ブレインは直角に曲げた右腕をわざと部分的に砂嵐にして立体ホログラムである事を見せる。
「それで何かしら? お仕置きも済んだし今からコイツ等をぶっ壊すことに異議あり!! とでも言うのかしら?」
 サン博士に引っぱたかれまくった結果、アンドロイドボディなのに何故か真っ赤に腫れあがった臀部。
 恐怖と激痛、そして認めてはいけないであろう何かを感じてしまうわけの分からなさ故の涙と鼻水でぐじゃぐじゃの顔のまま息も荒く全身を震わせる上位管理者アンドロイド姉妹、キンカク&ギンカクは涙目で命乞いする。
『うむ、それはやむを得ぬと言いたいところなのだが……そなた等に知らせねばならない事がある。まずはこれを見るがよい』
 そう言いつつ指を鳴らし、特殊物理学ラボ内中空に巨大エアモニターを映し出すホログラム・ミクラ。
『こっ、これは!?』
『まずいですぞ、博士!!』
「急いで戻らないと!!」
 そこに映し出されたエデン第二区画の光景を前に立ち上がるサン博士。
『先刻そなたらが奪ったベニヒサゴとジョウビョウを使うがよい。
 先ほどの特殊物理兵器対応アップデート済みのそなたらアンドロイドならマップ情報と座標を利用して瞬間移動できるはずだ』
「モンキーマン!!」
『おうっ!!』
 ホログラム・ミクラの説明を受けたモンキーマンはすぐにベニヒサゴとジョウビョウを取り出し、仲間の救援に向かうべくその引き金に手をかける。

【MMS 第89話につづく】
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