MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

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【第五章:エデン第五区画/特殊物理学研究ラボ】

【第82話】

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『博士!!』
『022!!』
 地面に倒れた仲間を助け起こそうと駆け寄るモンキーマンとピッグマン。
『これは!!』
 サン博士の足元とカッパマンの背後に白いペンキをぶちまけたような染みがある事にほぼ同時で気が付いた2体。
『まちげえねえブウ!! ここを出るど、モンキーマン!!』
『おう!!』
 2体の戦闘用人型アンドロイドは仲間と共にコウキンジョウシェルターを脱出する。

「なるほど……」
『こいつはやられたな……』
 床も壁も白黒斑点の染みだらけになった円筒形の特殊物理学ラボシークレットルーム。
 あの旋回弾幕攻撃の意図を察したものの、時すでに敵の策に完全に巌められていたチーム・サンは周囲を見回すがキンカク&ギンカク姉妹は影も形もない。
「くっ!!」
 何を思ったのか電撃銃を抜き、近場の黒穴や白穴に電撃弾を撃ち込んでみるサン博士。
 だがその射出物が先刻のようにその中に吸い込まれることはなく金属の床に当たってジュッと消滅する。
「モンキーマン!!」
『おうっ!!』
 サン博士に命じられてモンキーロッドを抜き伸ばし、地面に突き立ててみるモンキーマン。
 だがそれも同じく斑点下(?)の金属床に当たってカツカツと鳴るばかりだ。
『ぐぷぷぷぷ!! そんな事をやっても無駄よ!! この特殊重力操作空間に入れるのはベニヒサゴとジョウビョウを持つアタシたちのみよ!!』
『博士にアンドロイド3体!! いますぐ全武装解除して地面に仰向けになりなさい!! そうすれば五体満足で捕らえてあげるわ!!』
 ミクラ・ブレインのどこからともなく聞こえてくるあの機会音声とは異質な姉妹アンドロイドの声は円筒内に反響し、チーム・サンに投降するように警告する。
「もし従わなかった場合は?」
 右手に電撃銃、左手にグラビディブレイドのガンソード構えで応戦の意思を示すサン博士。
『……やるわよ、キンちゃん!!』
『おうよ、ギンちゃん!!』
「やるわよ、みんな!!」
『おうっ!!』
『御意っ!!』
『ブォォオォンン!!』
 サン博士の捕縛連行かミクラ・ブレインの完全破壊 目的がなんにせよ共存不可能で相容れないならば敵対するのみ。
 開戦を告げるゴングの中、1人と5体は各々覚悟の鬨の声を上げる。

『……面白い』
 エデン中央管理塔内某室内。
 チーム・サンVSエデン第五区画管理者アンドロイド・キンカク&ギンカク姉妹の様子をモニターで見ていた巨大な角が付いた牡牛頭と頑強なプロテクターで覆われた人型超巨躯を持つアンドロイドは低い声で呟く。
『あんたがそんな事を言うなんて珍しいな……ギュウマオウのオヤジ、何か思う所でもあったのか?』
 同室内で向かい合うように床に座り、同じモニターを見守っていた上位管理者アンドロイド・コウガイジはエデン第四区画・総合エネルギー管理施設管理主任にして上位管理者アンドロイド・ギュウマオウに尋ねる。
『……お前はどう思う、コウガイジ?』
『どう、っすか? そうっすねえ……』
 ミクラ・ブレイン様により重要拠点施設の管理を任された6体の上位管理者アンドロイド内の製造順序列で言えば最年少なコクフウカイに次いで二番目の若輩者であるコウガイジ。
 何を話しかけても返答する事自体がほとんど無く、寡黙で何を考えているのか分からない最長老上位管理者アンドロイドであるギュウマオウに意見を求められると言う予期せぬ事態にコウガイジは返答に窮する。
『済まぬなコウガイジ、我も喋りすぎた。
 だがキンカク&ギンカクを除き、主様をお守りする上位管理者アンドロイドも残すところ我と其方のみ。
 我は主様の目的のために成すべきことを成す、其方は若き心のままに……悔いなきように行動せよ』
『承知した、ギュウマオウ殿……』
 これは漢の遺言だ。
 ミクラ・ブレイン様が何故サン博士をこのエデンに招き入れ、自分達上位管理者アンドロイドと戦わせているのかは全くわからないが、キンカク&ギンカク母ちゃん達がどうなったとしても俺は俺の使命を果たす。
 無言でモニターを見つめるギュウマオウの背中でそう察した若きコウガイジは覚悟を決める。

【MMS 第83話につづく】
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