MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

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【第五章:エデン第五区画/特殊物理学研究ラボ】

【第58話】

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「……エデン第五区画、旧特殊物理学技術研究施設。
 エデン創設当初、世界最高峰の物理学者達が求める設備や特殊機材をヒアリングしたところ国家予算どころか天文学的予算が必要と言う事が判明。他の研究施設との兼ね合いで計画縮小も余儀なくされた」
 エデン第二区画、レジスタンス軍第35部隊拠点となっている中央管理施設。
 そのメインコンピューターからエデンネットワーク内のデータベースにアクセスしたコマンダー・ジャンヌはサン博士と修理&改造を終えた3体の戦闘用人型アンドロイドの前でその歴史的経緯と情報を読み上げる。
「だが、プロジェクトエデンの協力者である世界的資産家にして投資家アウル・グリッタリング及び日本の御鋼院財閥、その他諸々の支援者からの金銭的支援により当初のプラン通りの計画遂行に成功。
 その後、世界各地から優秀な物理学者が招致され……何だこりゃ?」
 突如文脈内に現れる謎の漢字の羅列。
 おそらくその手の研究ジャンルや色々な専門用語の類なのであろうが物理学は専門外の一介の軍人でしかないコマンダージャンヌは思わず首をかしげる。
『コマンダー、博士ならわかるはずだブウ!! さあ、おねげえしますだ!!』
 ヨイショのポーズでサン博士に解説を繋ぐピッグマン。
「ピッグマン、気持ちは嬉しいけど……私も説明できそうにないから遠慮させてもらうわ」
『ええっ!? 博士殿が!?』
『ピッグマン、博士に無礼だぞ!!』
 大げさに驚いて見せるピッグマンを人型戦闘用アンドロイド三人衆リーダーとして一喝するモンキーマン。
「ありがとうね、モンキーマン。
 言い訳するわけじゃないけど……今、私は27歳でこの戦争が始まった時は17歳だったの。
 だから中学生や高校生クラスの物理学なら無問題なんだけど……ここの研究職の人達はそんな知識レベルでは太刀打ちすらできない物理学の世界的名門大学や大学院を卒業し、超高度専門知識のバケモノみたいな人達。
 父ですらこの研究分野においては必要があれば逆に教えを乞う事も多々あったぐらいだし……もうここまで言えばわかるでしょ?」
 レジスタンス軍の科学者として多くの功績を上げて来たエージェント・サンがそこまで言うのは多分二度とないであろう、アンドロイド三人衆&コマンダー・ジャンヌは返す言葉を失いただ黙り込む。
「コマンダー、来歴はもう十分。
 それよりかつては人間の物であった設備をミクラ・ブレインがどのように利用し、いかなる研究が行われているのかと言う情報はあるかしら?」
「はい、その情報は……ありました。
 ミクラ・ブレインが現在この施設で進めている研究は重力と言う概念に関わる物理学全般であり、ここのエリアを管轄する上位管理者アンドロイドはSYK-032-01・キンカクとSYK-032-02・ギンカクと言う2体のアンドロイドだそうです」
『キンカクにギンカク? それはかつてニホンのキョウトにあったと言う寝殿造りの邸宅ですかね?』
『カッパマン、オイラ的にはそいつは無いブウ。
 コウガイジ様の部下として何回かお会いした事があるけどキンカク様とギンカク様はチャイナドレス姿の双子姉妹型アンドロイドだブウ。
 金色のチャイナドレスの御方がキンカク様、銀色のチャイナドレスの御方がギンカク様だったはずだブウ』
「ピッグマン、その他の情報は?」
 ピッグマンの発言をすぐに脳内メモに記録し、さらに尋ねるサン博士。
『ええと、オイラはコウガイジ様のお供で大型荷物の運搬をしただけだから……それ以上はわからんブウ』
 申し訳なさそうにピッグマンは謝る。
「いいのよ、気にしないで。おそらくだけど、その2人の元ネタはあのひょうたんで有名な西遊記の金角と銀角ね……それが重力に関わる物理学研究施設の管理者と言う事は? そしてチンゲン先生のラストメッセージ内にあったあの図面内のアレはつまり……』
 何かに気が付いたサン博士は椅子に腰を下ろして考え始める。

【MMS 第59話に続く】
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