MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

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【第四章:エデン第三区画/旧総合医療技術研究施設棟】

【第52話】

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『ひぎゃああああ!! 熱い、熱い!! だずけてぐれえええ!!』
「先生!!」
 なんの前兆もなく一瞬で全身を火に包まれ、生きたまま焼け死ぬ恐怖と激痛のあまり地面を転げ回って叫ぶプロフェッサー・チンゲン。
 科学的説明はなされていないものの、これは人体発火そのものでコウガイジの未知の戦闘能力によるものだ。
 軍人科学者のカンでそう察したサン博士とマツモトは恐怖のあまり思わずあとずさる。
『うおおおおお!!』
『きえええい!!』
『ブウ!!』
 ピッグマンに女性2人を守らせつつ、プロフェッサーを助けるために切り込むモンキーマ ンとカッパマン。
『ふんっ!!』
 2対1と言う戦況に動じる様も見せないコウガイジはカッパマンの放った影撃ちカッパワイヤーを見切って左手指挟みで受け止め、そのまま手に巻き付けるように掴んで一気に引く。
『うおっ……』
 戦闘用人工知能が見せる走馬燈スローモーション世界。
 自身、カッパマンが細身とは言え決して軽くない戦闘アンドロイド用特殊合金のボディを一瞬で釣り上げ、落ちて来る地点と高度を瞬時に計算して脚部に一気にパワーを集中させるコウガイジ。
 
 目の前の上位管理者アンドロイドはコンマ数秒クラスの永遠とも思える短い時間の中でこれだけの複雑な戦闘行動処理を完了させて、実行に移せる超高性能戦闘用人工知能を有し、細身にデザインされつつも高出力アンドロイドエネルギー炉を心臓部として搭載していると言う事実を察したカッパマンは色々な意味で諦める。
『チェストォ!!』
『カッパマン!!』
 腹にノーガードでミドルキックを蹴り込まれたカッパマン。
 そのまま天井にぶつかり、床に叩きつけられたカッパマンは与えられた物理エネルギーのままに何度もバウンド。
 全身を四方八方に叩きつけながらゴソウカン最上階の窓をぶち破って転落していく。
『この野郎お!!』
 仲間の弔い合戦とばかりにモンキーロッドを構えて殴り掛かるモンキーマン。
『戦闘システム起動……サンマイカ』
 システムボイスと共に火炎を帯びる右腕。
 そのまま右拳を固く握りしめたコウガイジを前にロッドを投げ捨てたモンキーマンは自身も右拳を握りしめる。
『モンキーメタルナックル!!』
『サンマイカ!!』
 正面激突するモンキーマンの剛鉄拳とコウガイジの火炎拳。
 戦闘用人型アンドロイド二体の金属と金属が力のままにぶつかり合う衝撃と轟音がゴソウカン最上階に響く。

『ほお、流石はSYK-000……キンコジュで抑えられてもなお俺の一撃に耐えるとは。
 流石に俺と同じモノを持っているだけはあるな』
(まっ、まずいブウ……次はオイラだ!!)
 コウガイジの火炎拳の一撃で強制機能停止し、拳を突き出したポーズのまま動かなくなったモンキーマン。

 アンドロイド用特殊制御デバイスキンコジュによりサン・フトウ博士の配下となった以上、彼女をお護りしなくてはならないが、敵はかつての主にしてミクラ・ブレインの造り出した最強の戦闘用人型アンドロイド。

 その桁違いの戦闘能力を知りすぎているピッグマンは新たな主であるサン博士をお護りする使命感とこの場から逃げ出したい衝動の間でわけもわからぬまま立ち尽くすばかりだ。
『ピッグマン、安心しろ……今の俺はキンコジュを嵌められて裏切った元部下のお前をぶっ壊してサン博士を捕えるために来たんじゃねえよ。
 もちろん出来るっちゃあ出来るが、母ちゃん達やギュウさんを差し置いて若輩者の俺がそんな無粋な事をするのは美学に反する』
『……』
 片足立ちでぶらぶらしながら頭の後ろをぼりぼりするコウガイジ。
 紙めプとかではなく、今の自身と3体の戦闘用アンドロイド達では本当に手も足も出ないのは事実だとわかっていたサン博士はある意味で敵の美学的嗜好に感謝する。
『……次はエデン第五区画、特殊物理学研究ラボに行け。そこで二躰一体の上位管理者キンカク・ギンカク姉妹を倒しその特殊技術機構を奪って来い。それが終わるまでコイツは俺が預かるぜ』

【MMS 第53話につづく】
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